抄録
牛肝膿瘍, 牛ルーメン液, 未経産牛乳房炎等からの新鮮分離株15株および参照株3株, 合計18株のFusobacterium necrophorum菌株について培養性状, 生化学的性状, DNAの塩基組成比, マウスに対する病原性, ニワトリ血球凝集性等をしらべた. その結果, これらの菌株は極めて均一な生化学的性状をしめし, Fusobacterium necrophorumと同定されたが, 集落形態, 菌形態, 液体培地中の発育性状, 血球凝集価, マウスに対する病原性等において明瞭な差異をしめし, 2群に類別された. 2群の菌株はすべて溶血性をしめし, Fievezのbiovar Aとbiovar Bに, あるいはBeerensらのphase Aとphase Bに, それぞれ相当するものと考えられる. この2群の菌株間のDNAの相同性は53~76%で, この値はJohnsonによって提案されている分類区分の遺伝的定義の見地から亜種のレベルに相当している. したがって, これら2群の菌株は亜種のレベルで類別されるべきであると思われる.