抄録
乳牛を用いて,硫酸キニジンの薬物動態学的ならびに,血漿中キニジン濃度の中毒域について検討した.薬物動態学的解析は,2区画モデルで行った.その結果,半減期(T1/2β)は1.28±0.492時間と短時間で,個体差が大であった.また,体クリアランスは,58.7±24.49mμmin/kgであったが,腎臓に於けるキニジンのクリアランスは0.76±0.44ml/min/kgであった.以上のことから,経口投与ないしは単回静脈内投与では,血漿中キニジン濃度を有効濃度内に保つことが困難であると推察された.また,キニジンの排泄臓器としては,腎臓以外の臓器が深く関与しているものと考えられた.心房細動ないしは心室性期外収縮のウシに対しキニジンを経口投与したところ,除細動時の血漿中キニジン濃度は2.3±1.59mg/l(n=3)であった.