抄録
第四胃変位牛25例を含む71例の乳牛の第一胃内及び第四胃内ガスの分析調査を行った. その結果, 第四胃内のメタンガス(CH4)濃度は炭酸ガス(CO2)濃度よりも高い値を示し第一胃内ガス組成とは逆であった. また, in vitroの培養実験の結果, 新鮮第一胃液を加えた混合液の培養では, CH4よ高濃度で検出された. しかし, 新鮮第四胃液を加えた混合胃液の培養では, 両ガスは痕跡程度に検出されたにすぎず, 第四胃で検出されたガスは第一胃が発生源であり, 第四胃は発生源とはならないことが示唆された. 給与実験の結果では, 粗飼料と配合飼料の併給牛で第一胃CO2:CH4比は高値を示し, 数値間の高い相関関係により, 第四胃内ガス組成の変化は第一胃内ガス組成の顕著な変化と並行することが示唆された. 以上の結果から, 濃厚飼料の多給は前胃を通過する食糜の流出量を増加させることによって, 第三胃内の食糜より第四胃内に分離されるガスの前胃への返送量をも増加させ, 第四胃内の大量のガスの頻繁な貯留を惹き起こす. これは第四胃内の総揮発性脂肪酸(VFA)濃度の変化と相まって, 第四胃アトニーを起し, 第四胃変位の発病要因となるものと推察される.