抄録
遺伝性嚢肥腎マウス(DBA/2FG-pcy)は, 生後5ヵ月で進行性嚢胞形成を伴う慢性腎不全に陥った. これらの腎は, 両側性に肥大し, 体重の15%を占め, 正常マウスの約9倍の大きさに達していた. また血中尿素態窒素(BUN)やクレアチニンの上昇も認められた. 赤血球数, ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値はそれぞれ746×104/mm3, 8.8g/dlおよび31.1%と低値を示した. 血清中エリスロポエチン濃度の上昇や網状赤血球の増加は認められなかった. この貧血状態は, 外的なエリスロポエチンの適用により用量に依存した改善を示した. 以上のことから, DBA/2FG-pcyマウスで認められる貧血の主な原因は, 進行性嚢胞形成に伴う腎のエリスロポエチン産生障害であることが示唆され, DBA/2FG-pcyマウスは腎性貧血の自然発症モデルとして有用と考えられた.