Journal of Veterinary Medical Science
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コブハクチョウの銅中毒症の発生
古林 与志安島田 章則梅村 孝司長井 武雄
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1992 年 54 巻 2 号 p. 229-233

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抄録

鳥取市街の川に放されていたコブハクチョウ9羽中8羽が1989年夏の約1力月の間に相次いで死亡し, 8羽中7羽について病理学的に検索した. 全例の肝細胞の細胞質内に黄褐色ないし緑褐色の多数の微細顆粒状色素が沈着していた. 顆粒は銅染色, リポフスチン染色および鉄染色に対し強陽性を示した. これら顆粒は超微形態学的には, 高い電子密度を有する腫大したライソゾームに一致していた. 他の場所で死亡し, 対照として用いられたハクチョウにも褐色顆粒は認められたが, 銅染色陽性顆粒は罹患例と比べ著しく少なかった. X線定性分析により対照例を含む全例の肝臓に銅, 亜鉛およびナトリウムのピークが出現した. 肝臓内のこれらの元素を定量分析したところ, 罹患例の銅の値が著しく上昇していた(p<0.01). 以上の所見より, 7例全例を銅中毒症と診断した.

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