抄録
細胞表層物質の抽出に有効な溶液とされている尿素(1M)・EDTA(5mM)を含むトリス緩衝液(10 mM)でブタの顆粒膜細胞(層状の顆粒膜細胞集団を含む)を培養し, 経時的な形態変化と顆粒膜細胞からの物質の分離の様相を調べた. 培養30分以内では顆粒膜細胞はトリパンブルーに染色されなかったが, 培養時間が長くなると染色される細胞数が増加した. 電顕的に観察すると核の形態や細胞の大きさに変化がみられたものの, 細胞膜は培養開始後30分までは正常であったが, さらに培養を続けると細胞膜の崩壊や細胞融解などの退行像が観察されるようになった. 分離されるタンパク質や51Cr結合物質の量は培養開始後15分間で顕著であり, 15~30分の間では少なく, 30分以後再び急増する傾向を示した. 以上のことから尿素・ EDTAで顆粒膜細胞を30分間培養した場合に分離されてくる物質の大部分は細胞表層物質や細胞間物質である可能性の高いことが示唆された.