抄録
成熟した雌雄のSlc:SDおよびJla:Wistarラットの消化管における炭酸脱水酵素アイソザイムの組織局在を免疫組織化学的手法を用いて検討した. 胃粘膜では腺胃部の壁細胞および被蓋上皮細胞にCA-IIが認められた. 小腸は陰性であった. 大腸では盲腸および結腸の内腔側の表面および腸腺上部の吸収円柱上皮細胞にCA-I, CA-II, CA-IIIの3つのアイソザイムが認められた. しかし, 腸腺下部の吸収円柱上皮細胞および杯細胞は陰性であった. 染色の状態は盲腸および結腸近位部が最も強く染まり, 結腸遠位部で弱くなり, 直腸ではさらに弱くなった. 以上の結果から, ラット消化管においては炭酸脱水酵素の各アイソザイムのうちCA-IIが最も広く分布していることが明らかとなった. また, 大腸では炭酸脱水酵素の3つのアイソザイムが協調して水分の吸収, イオン交換および腸管腔内の酸-塩基平衡に関与し, 特に盲腸および結腸近位部でこれらの活性が強いことが示唆された.