1992 年 54 巻 3 号 p. 541-549
1987年から1990年の間に分離した148株のオーエスキー病ウイルス由来DNAを制限酵素BamHIとKpnIで消化し, その切断型をわが国で1981年に最初に分離された山形-S81株, アメリカ合衆国由来のIndiana S株とtsG1株, タイ国由来のNK株と比較した. その結果, 最近分離されたウイルス株のDNAは基本的に同一の切断型を示し, 山形-S81株およびNK株と同様にBamHIの切断型II型に分類された. 一方, アメリカ合衆国由来の2株はI型であった. これらの結果は, 初発生以来わが国で流行しているオーエスキー病ウイルスに顕著な変異の起こっていないことを示唆する. しかし, ゲノムの反復配列, 反復配列とユニーク領域の接合部位および左末端には, 切断点の獲得と消失, あるいは塩基配列の挿入と欠失に起因する変異が認められた. これらの変異は同一地域や農場で同時期に分離されたウイルス, 疫学的に関連のある発生から分離されたウイルスの間で共通して認められる傾向にあった. ウイルスDNAの制限酵素による分析がオーエスキー病の疫学調査に有用であることを示すものであろう.