1992 年 54 巻 5 号 p. 881-889
渇水ストレスが, 視床下部視索上核(SON)及び室傍核(PVN)のバソプレッシン分泌細胞(VP細胞)に与える影響について, スナネズミを用い, 免疫組織化学的, 並びに形態計測学的に検討し, あわせて血漿浸透圧と体重の変動も調べた. 血漿浸透圧は渇水3日で有意に上昇し, その後は比較的緩やかに上昇し, 渇水10日以降はほぼ一定のレベルとなった. 体重は渇水10日までは急速に減少し, その後は比較的緩やかに減少した. VP細胞の面積は, 両神経核ともに, 渇水1日で有意に上昇し, その後渇水3-5日まではほぼ一定の値を示したが, 7日に再び上昇し, 15日をピークとしてその後はほぼ一定となった. これらの変化は, 渇水による体液量の減少及び血漿浸透圧の上昇刺激がVP細胞のホルモン合成を活性化したことによるものであると考えられる. 電子顕微鏡的観察により, VP細胞の面積の増大は, 渇水初期においてはゴルジ野の拡大により, また, その後の渇水期間においては粗面小胞体の発達とその腔の拡張により, もたらされたものであると思われる.