Journal of Veterinary Medical Science
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54 巻, 5 号
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  • 竹内 崇, 鈴木 實, 七條 喜一郎, 磯部 玲子, 斎藤 俊之, 梅村 孝司, 島田 章則
    1992 年 54 巻 5 号 p. 813-820
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    成熟雄のモルモット10匹を供試し, 後頭葉切除群及びHexachlorophene投与群におけるVEPの変動について検索した. 後頭葉切除群では, P10, N20, P55, N75, N140及びP200の各ピークがしばしば消失し, N40の振幅は術前のVEPに比べ, 約1/2に減少した. Hexachlorophene投与群では, N20, P30, P55, N75及びP100のピーク潜時は投与開始後7日目以降にわずかに延長するのに対し, N40の潜時は全投与期間を通じてほとんど変化しなかった. また, 振幅はピークによって異なる変動を示した. 組織検索の結果, 大脳, 小脳及び脳幹の白質に広範な海綿状変性が認められた. 上述したように, 重度の脳障害により, 光刺激に対する反応は減弱したが, 反応の残存は認められた.
  • 金城 俊夫, 源 宣之, 杉山 誠, 杉山 芳宏
    1992 年 54 巻 5 号 p. 821-827
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    山岳地域に生息する野生及び捕獲後, 人の居住地周辺で飼育されているニホンカモシカの糞便由来大腸菌を対象に薬剤耐性菌及びRプラスミド保有(R+)菌の検査を行った. 1980年度捕殺した283頭の野生ニホンカモシカから分離した大腸菌874株のうち, 使用した6剤(Ap, Sm, Tc, Cp, Km及びSu)の何れかに耐性を示した株は僅か11株(1.3%)であった. また, 耐性菌排泄個体も7頭(2.5%)のみであった. 耐性菌の検出率を高めるため, 1983年度においては, 予め薬剤を添加した培地に直接糞を培養する方法を採用したが, 耐性菌排泄個体は244頭中12頭(4.9%)だけで, 低率であった. 野生ニホンカモシカから分離した耐性大腸菌87株にはR+菌は全く検出できなかった. 一方, 飼育ニホンカモシカの場合, 耐性菌は飼育1日目の1頭からは検出できなかったが, 5日目の個体を含む32頭すべてから分離され, R+菌も20頭(61.6%)から確認された. また, 161株の耐性菌中50株(31.1%)がR+菌であった. 野生ニホンカモシカは人の生活環境で飼育されると, 抗菌剤との直接接触がなくても, 容易に耐性菌を獲得するようになる. これらの成績をもとに, 野生動物の薬剤耐性大腸菌が, その生息環境の人の生活活動による汚染の微生物指標として利用しうることを考察した.
  • 稲元 民夫, Georgian Maya M., Kagan Elliott, 扇元 敬司
    1992 年 54 巻 5 号 p. 829-836
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    等張Percoll連続密度勾配遠心法(密度範囲1.006-1.123g/ml)により分画した肺胞マクロファージ亜集団の分布と表面Ia抗原表出に及ぼすin vivoでのアスベスト暴露の影響をラットの吸入モデルを用いて調べた. 2群のラットには間欠的に(1日6時間, 週5日, 計4週間) amphibole (クロシドライト)ないしserpentine (クリソタイル)アスベストを, 対照群のラットには清浄空気のみを吸入させた. 3群のラットからの肺胞マクロファージの回収は気管支肺胞洗浄により行った. アスベスト暴露期間中の7日以内に明らかな差異が現れ, クロシドライト暴露群では, これらの変化は暴露終了後, 2ないし5ヶ月まで持続していた. 更に, 比較的多量のIa抗原陽性細胞がアスベスト暴露両群(特にクロシドライト暴露群)のいくつかの画分に検出された. また, 多核肺胞マクロファージがしばしば両タイプのアスベスト暴露群のすべての画分に現れた. これらの画分にみられた多核肺胞マクロファージの大部分は表面Ia抗原陽性を示した. アスベスト暴露ラットの気管支肺胞洗浄細胞の亜集団中に高密度の食細胞が多く見られたことは, 肺胞内のアスベスト沈着部位に新たに動員された未成熟の単球とマクロファージないしはいずれかの存在を反映しているのであろう. そしてIa抗原陽性細胞の増加はそれらの一部が活性化されていることを示している.
  • 中出 哲也, 内田 佳子, 大友 勘十郎, 北澤 馨, 安藤 正彦, 白川 潤
    1992 年 54 巻 5 号 p. 837-843
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    チアノーゼ, 頻脈, 呼吸速迫, 運動不耐性および収縮期雑音を主徴とした38日齢の黒毛和種の子牛について生前には確定診断が出来なかったが, 剖検により, 心室中隔欠損を伴うanatomically corrected malpositionが確認された. 内臓心房位は正位で, 心房心室結合は不一致, 心室大血管関係は一致していた. すなわち, 左右心房は正常の位置に, 心室は逆位を示した. 大動脈弁は肺動脈弁の右側でわずかに後方にあり, 僧帽弁との間に線維性結合を示し, 形態学的左室より起始していた. 形態学的右室は小さく, この心室より漏斗部を介して肺動脈が起始していた. 従って本例の両大血管の関係はわずかに肺動脈が左前方にあって両者が基部で交差する正常心型を示していた. 心室中隔には中等度の漏斗部筋性欠損が認められた. 三尖弁にはエプスタイン奇形を伴った高度の三尖弁狭窄を認めた. 本例は牛における世界で初めての報告であると考えられる.
  • 鈴木 祥子, 大石 弘司, 高橋 敏雄, 田村 豊, 村松 昌武, 中村 政幸, 佐藤 静夫
    1992 年 54 巻 5 号 p. 845-850
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Salmonella choleraesuis subsp. choleraesuis serovar Enteritidisの保有する36メガダルトン・プラスミドの病原性に関する機能について, 親株AL1190, プラスミド脱落株AL1192及びプラスミド再導入株AL1193を用いて検討した. C57BL/6マウスにAL1190株及びAL 1192株を経口接種し, 腸間膜リンパ節, 肝及び脾における菌数及び病理組織学的変化を経時的に検討したところ, AL1190株を接種したマウスでは, 各臓器組織内菌数が急激に増加し高い値で推移するとともに, 比較的重度の病理組織学的変化が認められた. 一方, AL1192株を接種したマウスでは, 各臓器組織内菌数は低い値で推移し, 肝に軽度の病理組織学的変化が認められたにすぎなかった. 各菌株の血清に対する感受性及び鉄欠乏培地における増殖性を比較検討したところ, いずれも株間に差は認められなかった. これらの結果より, S. Enteritidisの36メガダルトン・プラスミドは, 血清抵抗性や鉄の取り込み能には関与しないが, 腸管から侵入した菌が腸間膜リンパ節, 肝あるいは脾へ伝播し, これらの臓器で増殖するのに関与していることが示唆された.
  • 熊澤 教眞, 森本 直樹
    1992 年 54 巻 5 号 p. 851-855
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ヤマトシジミの成貝と稚貝の血液細胞はCherninの塩類溶液中で腸炎ビブリオと大腸菌の生菌浮遊液に対して走化性を示した. この走化性はヤマトシジミ血漿の存在下で亢進した. 成貝と稚貝の血液細胞は人工海水中でもChernin液中と同程度の走化性を示した. 椎貝の血液細胞の走化性は成貝の血液細胞の走化性よりも低かった. 本貝の血漿はこれらの菌に対する血液細胞の認識を容易にしているように見える.
  • 山越 純, 大下 克典, 高橋 令冶
    1992 年 54 巻 5 号 p. 857-863
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    急性期の二腎性Goldblatt型高血圧(2KGH)ラットおよび高血圧自然発症ラット(SHR)の糸球体傍(JG)細胞を免疫組織化学的に検討した. 2KGHラットとSHRのJG細胞は, 抗レニン血清と抗アンジオテンシンII(AII)血清で免疫染色陽性を示した. 2KGHラットの腎動脈狭窄腎のレニンおよびAII陽性細胞数は, 実験期間の経過に伴い上昇した. 一方, 腎動脈非狭窄腎のレニンおよびAII性細胞の反応性は, 実験経過に伴い弱くなり, 反応したJG細胞は小さくなった. これらの変化は, SHRでは認められなかった. 2KGHラットにカプトプリルを投与すると, 腎動脈狭窄腎のレニン陽性細胞数は, 実験期間の経過に伴い顕著な上昇を示したが, 両腎のAII陽性細胞数は低下を示した. SHRにカプトプリルを投与すると, 両腎のレニン陽性細胞数は, 実験期間の経過に伴い上昇を示したが, AII陽性細胞数は低下を示した. 以上のことより, 2KGHラットの高血圧発症に両側腎の糸球体傍細胞が密接に関与する事が示唆されたが, SHRの高血圧発症における糸球体傍細胞の役割を明らかにすることはできなかった. また, カプトプリル投与による2KGHラットとSHRのレニン陽性細胞の増加は, JG細胞でのAIIの低下に伴うnegative feedback機構の欠落によるものと思われた.
  • 増岡 光太, 豊崎 朋子, 遠矢 幸伸, 乗峰 潤三, 甲斐 知恵子, 見上 彪
    1992 年 54 巻 5 号 p. 865-870
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    当教室で樹立したネコTリンパ芽球株化細胞(MYA-1細胞)を抗原としてネコリンパ球に対するマウスモノクローナル抗体2F11, 17B10および15B3を作出し, これらの解析を行った. 2F11は, 分子量220/205/190kdの蛋白質を認識し, MYA-1細胞および, ネコTリンパ腫由来のFL74細胞の多くと反応し, また, 正常ネコの胸腺細胞や肝細胞, 末梢血単核球とも反応が認められた. 17B10も2F11と同様の蛋白質を認識し, FL74に対しての反応性は2F11にくらべ低いものの, 他の細胞との反応性については類似の結果を得た. 15B3は, 分子量220kdの蛋白質を認識し, ネコ胸腺細胞には反応せず, 他の細胞に対しても低い反応性を示し, 2F11と17B10との認識パターンに違いが見られた. また, 2次フローサイトメトリーでは, 2F11によって認識されるMYA-1細胞とFL74細胞の一部を17B10と15B3が認識した. 免疫組織化学では, リンパ節, 脾臓で2F11と17B10はほぼすべての白血球を認識し, 15B3はB細胞領域のほとんどの細胞と, T細胞領域の一部の細胞を認識した. 以上のことから, これらのモノクローナル抗体は, ヒト, マウス, ラットで報告されている白血球共通抗原ファミリーのうちのCD45Rに相当し, 2F11と17B10は, ある一つの抗原特異部位のそれぞれ異なるエピトープを認識し, 15B3は前の2種とは異なる抗原特異部位を認識していると考えられた.
  • 清宮 幸男, 大島 寛一, 伊藤 博, 小笠原 信幸, 奥友 正範, 田中 修一
    1992 年 54 巻 5 号 p. 871-874
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    4から14日齢の新生子牛3例を病理学的および細菌学的に検索した. これらの子牛は沈鬱, 食欲不振, 発熱, 起立異常とともに眼房水あるいは角膜の混濁を示した. 剖検により髄膜の鬱血, 点状出血および混濁がみられた. 組織学的に, 主要な中枢神経系病変は線維素の析出を伴う好中球, マクロファージおよびリンパ球の浸潤よりなる髄膜炎であった. 脈絡膜炎と脳室上衣炎は軽度ないし軽微であった. 内眼球炎が全例に認められた. 線維素性あるいは線維素化膿性病変が腹膜, 心外膜ならびに幾つかの他臓器に観察された. 多数のグラム陽性の球菌が全身の病変部にみられた. 細菌学的検索の結果, Streptococcus bovisが脳, 脳脊髄液, 眼房水ならびに幾つかの他臓器から分離された. これらの結果から, 観察された病変が分離菌の感染と関連し, 検索例が敗血症に陥っていたことが示唆された.
  • 小坂 俊文, 桑原 正人, 小出 英興
    1992 年 54 巻 5 号 p. 875-879
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    子牛末梢血リンパ球(PBL)及びナイロンウール非付着細胞では牛白血病細胞(PC-3cells)に対する自然細胞障害性が認められたが, ナイロンウール付着細胞では認められなかった. これらの結果より自然細胞障害性細胞(NCC)はT細胞分画に含まれることが示唆された. NCCをPC-3細胞と混合培養した場合, NCCからの自然細胞障害性因子(NCF)の放出は早く, またNCFの細胞障害性曲線はほぼ直線的であった. NCCまたはNCFによるPC-3細胞に対する細胞障害性は培養時間と共に増加した. NCFによるK562細胞, CL-1細胞, M1細胞およびEL-4細胞に対する細胞障害性はPC-3を標的とした場合とほぼ同様であったが, これらの細胞に対するNCCの細胞障害性はほとんど認められなかった. NCCとK562またはCL-1細胞との混合培養により遊離されるNCF量はPC-3細胞との混合培養により遊離されるNCF量より少なかった. これらの結果よりNCCの標的細胞に対する特異的自然細胞障害性はNCCが標的細胞を認識した時に遊離されるNCFと関係があるものと考えられる.
  • 比留間 みどり, 小川 和重, 谷口 和之
    1992 年 54 巻 5 号 p. 881-889
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    渇水ストレスが, 視床下部視索上核(SON)及び室傍核(PVN)のバソプレッシン分泌細胞(VP細胞)に与える影響について, スナネズミを用い, 免疫組織化学的, 並びに形態計測学的に検討し, あわせて血漿浸透圧と体重の変動も調べた. 血漿浸透圧は渇水3日で有意に上昇し, その後は比較的緩やかに上昇し, 渇水10日以降はほぼ一定のレベルとなった. 体重は渇水10日までは急速に減少し, その後は比較的緩やかに減少した. VP細胞の面積は, 両神経核ともに, 渇水1日で有意に上昇し, その後渇水3-5日まではほぼ一定の値を示したが, 7日に再び上昇し, 15日をピークとしてその後はほぼ一定となった. これらの変化は, 渇水による体液量の減少及び血漿浸透圧の上昇刺激がVP細胞のホルモン合成を活性化したことによるものであると考えられる. 電子顕微鏡的観察により, VP細胞の面積の増大は, 渇水初期においてはゴルジ野の拡大により, また, その後の渇水期間においては粗面小胞体の発達とその腔の拡張により, もたらされたものであると思われる.
  • 村上 覚史, 小枝 鉄雄, 東 量三, 藤原 弘
    1992 年 54 巻 5 号 p. 891-895
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ラットおよびモルモットの皮内および腹腔内にT. suisを実験感染させ, 経時的に病変を観察した. 皮内接種群では, 肉眼的に接種部に灰白色の小結節が形成された. 腹腔内接種群では, 漿膜に多数の灰白色結節が認められた. 病巣は特徴的な菌塊を含み, 病理組織学的に初期では膿瘍が, さらに進んで膿形成性肉芽腫が観察され, 最後に肉芽腫となった. 菌塊は, 胞子, 葉状体および多室塊茎体で構成されていた. ラットの皮内およびモルモットの腹腔内接種群で塊茎体周囲に棍棒体が形成されていた. 豚のT. suisの特徴的病変はラットおよびモルモットを用いた実験的感染により再現され, その病原性が立証された.
  • 平野 勇二, 北川 均, 佐々木 栄英
    1992 年 54 巻 5 号 p. 897-904
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫の死に伴う肺動脈塞栓病変と肺動脈圧の変化との関連性を検討するため, 死虫体を実験犬の肺動脈内に挿入した. 実験犬は犬糸状虫寄生の有無と虫体挿入後の肺動脈圧および臨床症状の変化により4群に分類した. 非寄生群(4例)では肺動脈圧は虫体挿入1週後に上昇した(10.9mmHgから16.6mmHg)が4週後には低下した. 臨床症状, 右心循環動態, 血液ガスおよび肺血管造影所見は肺動脈圧の変化と平行して変動した. 実験終了直後の剖検所見では, 死虫体周囲の血栓形成は肺後葉に最も多く認められ, 血栓と血管壁は一部で癒着していたが, 大部分は遊離して間隙が認められた. 寄生I群(5例)は非寄生群とほぼ同様の変化を示した. 寄生II群(4例)では, 虫体捜入前から肺動脈圧が高く(25.7mmHg)諸検査の結果も異常値を示していた. 虫体挿入後は4週まで肺動脈圧が上昇し(34.1mmHg), それに伴って臨床症状は悪化し諸検査の結果もさらに異常値を示した. 血栓は肺の各葉に広く形成され, 肺動脈内膜面全体に癒着していた. 寄生III群(2例)では, 虫体捜入1週後に肺動脈圧は上昇し(19.4mmHgから28.2mmHg), 重度の呼吸困難を示して, 9日後と10日後に死亡した. 剖検所見では, 血栓病変の他に肺実質の水腫または空洞形成が認められた. 以上の結果から, 死虫体の栓塞に伴う肺動脈圧の上昇および臨床症状の悪化は, 虫体が死亡する前の肺動脈病変ならびに血栓形成に伴う肺実質病変の程度と比例することが明らかになった.
  • 砂川 紘之, 大山 徹, 渡部 俊弘, 井上 勝弘
    1992 年 54 巻 5 号 p. 905-913
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ボツリヌスD型神経毒素は抗原的に多様性であり, その原因を明らかにする目的でCB16株の産生する神経毒素遺伝子のクローニングと全塩基配列の決定を試みた. ボツリヌスD型菌CB-16株の毒素変換ファージd-16φのDNAからλgt11-Y1090系を用いてD型神経毒素遺伝子のクローニングを行い, 軽鎖のN末端を含むフラグメントとその隣接フラグメントの塩基配列を決定した. その配列には1,275個のアミノ残基に対応する一個のオープンリーディングフレームが含まれていた. この塩基配列から推測されたアミノ酸配列は分子量50,410の軽鎖と96,394の重鎖によって構成されており, この配列は精製毒素の軽鎖と重鎖ならびにそれらを蛋白分解酵素で部分分解して得られた5個のポリペプチドのN末端アミノ酸配列と一致した. 軽鎖と重鎖は軽鎖C末端近傍のCys437と重鎖N末端近傍のCys450の間のジスルフィド結合によって連結された2本鎖構造をとっているものと推測された. D型CB-16株毒素の塩基配列はこれまでに報告されたD型毒素の塩基配列と3個の塩基が異なり, それに対応してアミノ酸配列に3個のアミノ酸残基の置換が認められた. D型神経毒素のアミノ酸配列はボツリヌスC1とA型毒素そして破傷風毒素のアミノ酸配列と比較するとそれぞれ53.1%, 35.9%, 34.9%の同一性を示した. さらにD型毒素の重鎖にはC1毒素と非常に高い同一性を示す疎水性領域の存在が認められた.
  • 古山 富士弥, 熊崎 路子, 西野 仁雄
    1992 年 54 巻 5 号 p. 915-921
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    高温暴露時のラットの体温の反応には, 個体により一相性, ニ相性, 三相性反応がある. この他に少数ながら存在する高いオーバーシュートのある個体と高い平衡相のある個体の反応型を検討した. その結果, オーバーシュートの高さと生存時間との間には負の相関があった. 平衡相の高さと生存時間の間にも負の相関があった. つまり, オーバーシュートや平衡レベルが高いほど, 生存時間が短かかった. 最も低いオーバーシュート及び平衡相は41.0℃及び40.0℃付近にあり, 両型が三相性反応の未熟な型であることを示していた. 他方, ラットを熱死させずに生存時間を求める予測式の改良を試みた. 体温が42.0℃になる時間(X)と生存時間(Y)の一式回帰式は, 雄でY=0.963X+43.85, 雌でY=0.973X+39.10であった. その決定係数は雄で0.978(P<0.0001), 雌で0.989(P>0.0001)であり, 推定式として使用可能であった. 42.0℃以上のオーバーシュートや高い平衡相のある個体のうち一部では, 依然として従来の予測式によるしかない. 従来の方法では体温が42.5℃まで上昇するが, その影響を一年間前方視的に観察した結果, その後の生存数も, 産仔数もともに無処置群との間に差はなかった.
  • 小河 孝, 藤園 昭一郎
    1992 年 54 巻 5 号 p. 923-929
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1988年9月末から11月にかけて鹿児島県下の種子島で, 突然, 牛流行熱(BEF)の発生が認められた. 発生パターンの疫学的特徴は, (1)最初2~3か所の農家で発生したBEFは約1か月間で地域全体にひろがった. (2)農家内におけるBEFは一定の接触感染率で伝播することが示唆された. これら記述疫学の知見を用いて,ポアソン分布とReed-Frostモデルへのあてはめを行って, 理論疫学による解析を試みた. その結果, 農家別の発生頭数の度数分布はポアソン分布によくあてはまった. この分布のような, よれにしか起らない事象が一定の時間あるいは空間においてランダムに生じるのは, BEF発生の場において一切ワクチネーションが行われてなかったことで, 牛群のBEFに対する感受性は均一であることを意味している. 同様に, 農家内で観察された発生頭数分布の推移について, Reed-Frostモデルの流行曲線をあてはめたところ, よくあてはまった. また, その感染伝播率はP=0.226であった. しかも, この農家における牛の飼養頭数, すなわちBEFに対する感受性牛が, もし5頭以下の場合には, 農家内での発生は初期段階で停止し, 発生は拡大しないことがこのモデルから明らかになった.
  • 杉本 千尋, 尾上 貞雄, 荘 文忠, 小沼 操
    1992 年 54 巻 5 号 p. 931-936
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    高温暴露時のラットの体温の反応には, 個体により一相性, ニ相性, 三相性反応がある. この他に少数ながら存在する高いオーバーシュートのある個体と高い平衡相のある個体の反応型を検討した. その結果, オーバーシュートの高さと生存時間との間には負の相関があった. 平衡相の高さと生存時間の間にも負の相関があった. つまり, オーバーシュートや平衡レベルが高いほど, 生存時間が短かかった. 最も低いオーバーシュート及び平衡相は41.0℃及び40.0℃付近にあり, 両型が三相性反応の未熟な型であることを示していた. 他方, ラットを熱死させずに生存時間を求める予測式の改良を試みた. 体温が42.0℃になる時間(X)と生存時間(Y)の一式回帰式は, 雄でY=0.963X+43.85, 雌でY=0.973X+39.10であった. その決定係数は雄で0.978(P<0.0001), 雌で0.989(P>0.0001)であり, 推定式として使用可能であった. 42.0℃以上のオーバーシュートや高い平衡相のある個体のうち一部では, 依然として従来の予測式によるしかない. 従来の方法では体温が42.5℃まで上昇するが, その影響を一年間前方視的に観察した結果, その後の生存数も, 産仔数もともに無処置群との間に差はなかった.
  • 松元 光春, 西中川 駿, 九郎丸 正道, 林 良博, 大塚 閏一
    1992 年 54 巻 5 号 p. 937-943
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    妊娠および泌乳期のマウス乳腺における毛細血管の微細構築の変化を血管鋳型で走査電顕により, また微細構造の変化を透過電顕および形態計測を用いて検索した. 血管鋳型の走査電顕観察では, 妊娠に伴って導管周囲の毛細血管叢から盛んに血管が新生され, 分岐と吻合を繰り返しながら, 導管や腺胞を密に取り囲み, 籠状の構築を形成していた. 泌乳期でもこの血管構築は維持され, しかも毛細血管は蛇行していた. 透過電顕観察と形態計測学的検索から, 内皮細胞内の飲小胞の密度は妊娠18日目から泌乳5日目に処女期の約2倍に, さらに泌乳10~20日目には3倍に増加し, 離乳期に漸減した. 辺縁ヒダや微絨毛様突起の長さは妊娠に伴って漸増し, 泌乳5~15日目に最大となり, その後漸減した. また, 毛細血管は妊娠末期から泌乳期にかけて壁が薄く, しかも腺胞に極めて接近していた. さらに腺胞の上皮細胞では, 泌乳期に基底陥入がよく発達していた. これらの所見から, 乳腺の毛細血管ほ乳汁産生に必要な物質の輸送に重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 宮本 忠, 田浦 保穂, 宇根 智, 吉武 信, 中間 實徳, 渡辺 誠冶
    1992 年 54 巻 5 号 p. 945-950
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬におけるワクチン接種の免疫学的効果を明らかにするために, ワクチン接種後の白血球数・リンパ球数, 抗体価, リンパ球幼若化反応と遅延型過敏反応(DTH)の推移を測定した. 初回に混合ワクチン(犬ジステンパー, 犬アデノウイルス1型, 犬パルボウイルス)を, 21日目に犬パルボウイルス(CPV)ワクチンを再接種した. 白血球数・リンパ球数は, 幼若犬, 成犬ともに7日目に有意な減少が認められた. リンパ球幼若化反応は, 幼若犬では各ワクチン接種後に有意に上昇したが, 成犬では, 高反応性のものと低反応性のものの2群に分かれた. すなわち, ワクチン接種前に高SI値の成犬は初回ワクチンン接種後にSI値が低下し, 低SI値の成犬は逆に上昇した. しかし, ほとんどすべての犬が高い抗体価を得たことから, ワクチン接種は免疫調節的に働くと考えられた. 一方, フィトヘマグルチニン(PHA)とCPVワクチンを用いたDTHを初回ワクチン接種後0, 3, 8週目に行った. PHAとCPVワクチンを接種した部位は強いDTH反応を呈した. 特にCPVワクチンを用いたDTH反応はワクチン接種によって有意に上昇し, これは少なくとも2ヵ月間持続した. PHAとCPVワクチンを用いたDHTはin vivoにおいてそれぞれ非特異的, 特異的免疫能の測定として有用であり, 犬の臨床において簡易かつ迅速な細胞性免疫検査として有用であると考えられた.
  • 河村 美奈, 大橋 文人, 村上 文哉, 高井 信治, 西村 亮平, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1992 年 54 巻 5 号 p. 951-955
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ゲンタマイシン誘発による尿毒症犬の血清を強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析した. 血清のHPLC分析に際して終濃度3%のTCAを用いて除蛋白を行った結果, 良好な分離性および再現性が得られ, この分析系は, 尿毒症血清分析に適していると考えられた. また, 得られたクロマトグラムは血清尿素窒素およびクレアチニン値の増加ならびに尿毒症症状の増悪に伴い, ピーク数およびピーク面積が増加した. 腎外性影響の少ない血清クレアチニン値と高い相関を示した4ピークを犬における尿毒症ピークとして選定した. 以上の結果より, これら4ピークは犬の尿毒症物質を含んでいるものと推定された.
  • 久保田 道雄, 福山 新一, 高村 恵三, 出水田 昭弘, 児玉 和夫
    1992 年 54 巻 5 号 p. 957-962
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    弱毒牛RSウイルス低温順化株, rs-52株を用い, 3ロット(103.5, 104.5, 106.0 TCID50/ml)の牛RS生ワクチンを試作し, これらのワクチンを1mlずつ野外飼養牛275頭の鼻腔内または353頭の筋肉内に接種した. 接種後, ワクチン接種による臨床上の異常は認められなかった. 抗体陰性牛に接種した場合, いずれのワクチンでも良好な抗体応答が認められ, 接種1ヵ月後に鼻腔内および筋肉内接種群でそれぞれ89.7%(26/29)および92.8%(90/97)の牛に抗体産生が認められた. 抗体陽性牛に接種した場合, 接種時の中和抗体価が1~2倍を示した牛では接種後に高率に抗体価の有意上昇が認められたが, 4倍以上を示した牛ではわずかで, 接種時に保有している抗体の影響が認められた. 免疫の持続については, 抗体陰性牛にワクチンを接種した場合, 接種6ヵ月後で鼻腔内および筋肉内接種群でそれぞれ73.7%(14/19)および87.0%(20/23), 抗体陽性牛でも鼻腔内接種群の69.0%(20/29), 筋肉内接種群の93.1(27/29)が抗体を保持していた. 一部の野外試験で, 試験開始5ヵ月後に牛RSウイルスの流行があり, ワクチン非接種対照牛では呼吸器症状が認められたが, ワクチン接種牛は無症状で経過し, ワクチンの有効性が確認された.
  • 望月 雅美, 玉住 剛, 川西 昭人, 東 拓郎, 清水 孜
    1992 年 54 巻 5 号 p. 963-968
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1989年から1990年にかけて148例のネコ糞便(下痢便48例, 正常便100例)をウイルス検査した結果, レオウイルス3株を分離した. 2株(No. 114株とNo. 140株)は下痢便に, 1株(No. 32/41株)は正常便に由来した. 分離株はネコとサル由来の各種培養細胞で典型的な細胞質内封入体形成を伴うCPEを呈して増殖したが, 特にNo. 32/41株とNo. 140株はトリプシン存在下での増殖が著明であった. 分離株の超微構造的特徴とゲノム性状はレオウイルス属の特性を示した. 分離株の血球凝集性はヒトO型血球陽性で, ウシ血球は陰性であった. ヒトレオウイルス標準株との交差血球凝集阻止試験によりNo. 114株は定型の, No. 32/41株とNo. 140株は非定型の2型レオウイルスと同定された. さらにNo. 32/41株とNo. 140株は距離的に離れた, 全く無関係のネコに由来するにもかかわらず性状が極めて類似していたことから, ネコに独特のレオウイルスの可能性が考えられた. 血清疫学的調査では3型レオウイルス感染例が最も多く, 2型レオウイルス感染例が最も少なかった.
  • 宮内 泰, 中山 裕之, 内田 和幸, 上塚 浩司, 長谷川 篤彦, 後藤 直彰
    1992 年 54 巻 5 号 p. 969-975
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    剖検した100例のイヌについて, 腎糸球体IgA沈着と病理変化とを調べた. 検索したイヌのほぼ半数(47%)の腎糸球体メサンギウム域にIgAの顆粒状沈着が認められた. IgA沈着例の多くはIgG, IgM, C3の沈着もともなっていた. IgAの沈着に性差ゃ品種差はなかったが, 年齢とともにその頻度と程度は増加した. IgA沈着のみられた糸球体では組織学的には, メサンギウム細胞の増加, 半月形成, 半球状沈着物, 硬化等の変化がみられた. 竜頭ではメサンギウム域および傍メサンギウム域に電子密度の高い物質の沈着があり, これは免疫電顕法でIgA陽性であった. IgA沈着の程度とメサンギウム細胞の数または全糸球体細胞に対するメサンギウム細胞の割合とを調べたところ, IgA沈着の少ない初期にはメサンギウム細胞が増加し, IgA沈着が重度になるにつれて, メサンギウム細胞以外の細胞(内皮細胞, 上皮細胞)が増加することがわかった. また, 腸炎や肝病変をもつイヌにIgAの糸球体沈着が多くみられた.
  • 秋山 和夫, 杉井 俊二, 廣田 好和
    1992 年 54 巻 5 号 p. 977-981
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    牛血清中のコングルチニン(Kg), マンナン結合性蛋白質(MBP), 血清アミロイドP成分(SAP)の感染防御における役割を検討する目的で, 乳房炎罹患牛から分離した血清中のKg, MBP, SAP濃度をサンドイッチ酵素抗体法で測定した. 健常牛と乳房炎罹患牛を比較すると, 乳房炎罹患牛から分離した血清中のKg濃度は著しく低く, 治癒に伴いKg濃度の増加が認められた. MBP濃度の変化に関してもKg濃度の変化と同様な傾向が認められたが, Kg濃度の変化ほど顕著ではなかった. 一方, SAP濃度に関しては, 感染の有無に関係なくほぼ一定量であることが判った. 以上の成績から, 血清中のKg濃度の推移(変化)は牛乳房炎治療の血清学的指標の一つになりうる可能性が示唆された.
  • 勝田 新一郎, 細見 弘, 塩見 雅志, 渡辺 嘉雄
    1992 年 54 巻 5 号 p. 983-987
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギにおいて, 意識下での圧反射系による血圧調節能を調べた. 圧反射の指標には圧反射系全体の開ループゲイン(G)を用いた. 7匹のWHHLウサギおよび14匹の正常な日本白色種ウサギについて, 麻酔下で左鎖骨下動脈および左総頸動脈より2本のカテーテルを大動脈弓にまで挿入し, 慢性的に留置した. 数日後, 意識下で体重1kg当り2mlの血液を左総頸動脈より急速に注射器に抜き取った. このときの平均血圧(MAP)の応答は, 左鎖骨下動脈よりトランスデューサを介して記録し, さらにコンピュータで8回平均加算した. Gの値はG=ΔAPI/ΔAPs-1より計算した. 但し, ΔAPIは出血直後のMAP下降分, ΔAPsは出血1-2分後にみられる定常偏差である. 意識下での正常およびWHHLウサギのGは, それぞれ7.35±0.24, 1.91±0.29(mean±SE)であり, WHHLウサギの方が有意に低い値を示した(p<0.01). 次に, ペントバルビタール麻酔の圧反射系への影響を調べるために20mg/kg量で再びウサギを麻酔し, 意識下と同様の出血実験を数回おこなった. 麻酔下における正常およびWHHLウサギでのGの値は, それぞれ6.69±0.23, 1.68±0.34(mean±SE)であり, WHHLウサギの方が有意に小さかった(p<0.01). また, いずれのウサギにおいても意識下と麻酔下ではGの値には有意差は認められなかった(p>0.05). 上記の結果より, 圧反射系による血圧調節能の減退は, 粥状硬化の圧受容器領域への進展によるものと考えた. また, ペントバルビタール麻酔は, 圧反射系全体の血圧調節能には影響がないものと解釈した.
  • 佐野 みちる, 局 博一, 菅野 茂
    1992 年 54 巻 5 号 p. 989-998
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    気道収縮時の肺の神経受容器の応答及び呼吸反射との関連を気道収縮薬を投与したモルモットで検討した. 自発呼吸下でヒスタミン(20μg/kg)を投与すると浅速呼吸などの異常呼吸パターンか出現した. この反射は両側迷走神経遮断で消失した. 次に人工呼吸, 開胸下で迷走神経求心性活動を記録した. 気道収縮薬であるヒスタミン(20μg/kg), アセチルコリン(40μg/kg), エンドセリン-1(2μg/kg)の何れかを投与すると気道内圧は上昇し, 神経束活動も顕著に増加した. 単一神経活動の記録により, 肺の伸展受容器は4型に分類される多様な応答パターンを示したが, 刺激受容器はほぼ一様に刺激された. この応答性はイソプロテレノールの前投与で殆ど消失したことから, 刺激受容器活動の増加は薬物の直接刺激によらないと考えられた. また, エンドセリン-1に対し神経受容器は, 気道平滑筋と同様, 特徴的な応答を示した. 以上の成績より, 迷走神経の各種受容器は気道収縮時に強く刺激され, それらの興奮は反射性に呼吸運動の様式を変化させることが示唆された.
  • 加藤 敦子, 橋本 善春, 昆 泰寛, 杉村 誠
    1992 年 54 巻 5 号 p. 999-1006
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ニワトリ盲腸扁桃上皮におけるM cell様細胞の存在を, 一般形態学的ならびに組織化学的に検索した. 更に, 盲腸扁桃への異物投与による実験形態学的検索を試みた. 電顕的に, 盲腸扁桃上皮中に短く不正な微絨毛を持ち, 細胞基底部ではリンパ球やマクロファージと接触するM cell様細胞を確認した. PAS染色及びレクチン組織化学の結果から, 盲腸扁桃上皮はglycocalyxに乏しいことが示されたが, レクチンのうちWGAについてはM cell様胞が特異的に反応した. HRP投与実験では, 盲腸扁桃上皮による取り込みは認められたが, M cell様細胞と周囲の上皮細胞との間にHRP取り込みに関する顕著な差は認められなかった. 以上より, ニワトリM cell様細胞はM cellの形態学的特徴を備えるものの, 哺乳類M cellのように, 異物取り込み能が発達していないことが示唆された.
  • 谷口 和之, 谷口 和美, 新井 徹, 小川 和重
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1007-1016
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ゴールデン・ハムスターの嗅上皮および鋤鼻器における種々の酵素活性を組織化学的に検索した. アデノシントリホスファターゼ, 乳酸脱水素酵素およびコハク酸脱水素酵素は, 嗅上皮, 鋤鼻器感覚上皮および鋤鼻器呼吸上皮に強い活性を示した. また酸性ホスファターゼは嗅上皮と鋤鼻器感覚上皮の両者に強い活性を示したのに対し, 非特異的エステラーゼは鋤鼻器感覚上皮のみに強い活性を示した. 一方, アルカリ性ホスファターゼは鋤鼻器呼吸上皮のみに活性を示した. モノアミン酸化酵素とアセチルコリンエステラーゼは上記のいずれの上皮にも活性を示さなかった. 以上より, 嗅上皮と鋤鼻器感覚上皮における各種酵素活性の類似と相違はこれらの上皮における共通の嗅覚機能又は特殊化を反映している可能性が考えられた. 一方, 鋤鼻器呼吸上皮における各種酵素活性が前2者と異なることは, この上皮が非嗅覚性の上皮であることに起因する可能性が推測された.
  • 林 永昌, 西村 亮平, 野崎 一敏, 佐々木 伸雄, 廉沢 剛, 後藤 直彰, 伊達 宗宏, 竹内 啓
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1017-1022
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    膝蓋靭帯欠損を作製したウサギに対し, 磁場強度0(対照群), 2, 10および50Gauss(G)の変動電磁場刺激を連日6時間行い, 各群に対し1週ごとに4週後まで肉眼的観察, 病理組織学的検索および力学的強度試験を行った. その結果, 欠損作製2週後における肉眼および病理組織学所見では, 対照群および2G, 10G群で, 靭帯欠損部が依然陥没していたのに対し, 50G群では出血, 壊死像はすでに消失し, 他群に比べ走行性のより一致した膝原線維が増加した. この傾向はその後も持続し, 50G群で最も早期の修復像が認められた. 一方, 引張り強度試験では, すべての刺激群で, 対照群よりいずれの週も高値を示し, かつ50Gが最も高値を示した. 以上の結果から, 50Gの変動電磁場刺激は靭帯の修復機転の少なくとも初期段階に対し, 組織学的, 力学的な促進効果を示すことが示された.
  • 内田 和幸, 中山 裕之, 立山 晉, 後藤 直彰
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1023-1029
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    β蛋白, cystatin C, ユビキチン, tau蛋白, 及びneurofilamentに対する抗体を用いて, 高齢犬の脳を免疫組織化学的に検索した. 全てのtypeの老人斑, 及び脳血管アミロイドが抗β抗体に強陽性を示した. 抗cystatin C抗体には大脳皮質の神経細胞の他, primitiveあるいはclassical plaque, 毛細血管周囲に沈着したアミロイドが陽性であったが, diffuse plaqueや中小動脈壁に沈着したアミロイドは陰性であった. 高齢犬の脳では, 若齢犬の脳に比べ, 多数のユビキチン陽性顆粒が存在し, 老人斑にみられる変性神経突起様構造物がユビキチンに強陽性を示した. オートクレーブ前処理により軸策, 神経細胞及び膠細胞が抗tau蛋白抗体に陽性を示し, 稀にclassical plaqueの辺縁にごく少数のtau陽性物質がみられた. また非常に稀にneurofilament陽性物質を少量含む老人斑がみられたが, 殆どの老人斑の変性神経突起様構造物はneurofilament抗体に陰性であった.
  • 大宅 辰夫, 中澤 宗生
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1031-1033
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚の増殖性腸炎由来C. hyointestinalis(CH)29株中21株, C. mucosalis27株中10株, C coli10株中10株が細胞毒産生陽性であった. このうち, CH産生細胞毒の物理化学的性状について検討したところ, 性状の異なる分画I及びIIに分けられた. 細胞毒活性の大部分は分画I(分子量約40,000, 易熱性, トリプシン感受性)に存在しており, 分画IIは分子量約1,000, 耐熱性, トリプシン耐性であることが明らかとなった.
  • 木村 順平, 月瀬 東, 岡野 真臣
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1035-1037
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    卵巣性ステロイドホルモンがネコの大前庭腺(バルトリン腺)の分泌の機能にどう関わるかを調べる目的で, 卵巣・子宮を摘出し, エストロジェンまたはプロジェステロン, あるいは両者を投与したネコの大前庭腺の組織切片について, アルシアンブルー, PAS染色ならびに, PNAおよびWGAによるレクチン染色を施し, 組織化学的に検索した. 本実験の結果, ネコ大前庭腺の分泌機能はエストロジェンに依存していることが判明した.
  • 辨野 義己, 光岡 知足
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1039-1041
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ビーグル犬の腸内フローラを検索するために嫌気性培養法ならびに培地の検討を行なったところ, 培養法としてスチールウール法に比べてMitsuoka et al. (1969)のプレートインボトル法が優れており, 培地として, これまでヒトの腸内フローラ検索に用いられているプレートインボトル法によるメディウム10(以下, M10)培地に犬の盲腸内容物を加えたM10培地で最も多くの腸内嫌気性菌が検出された. また, 本法により分離される発育に高度な嫌気度を要求する嫌気性菌は全フローラに対して18.4%も占めていた.
  • 松澤 時弘, 星野 隆, 伊吹 純
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1043-1046
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ラット精巣精子を, クロラムフェニコール(100μg/ml), 及びシクロヘキシミド(100μg/ml)のそれぞれを含む199-Earle培養液(1%仔牛血清を含む)で, 3時間培養し, 精子頭部のトリプシン耐性の変化を観察した. 結果は, これらの阻害剤を含む培養液, 及び阻害剤を含まない培養液で培養した各精子の生存率の間に差はなく, いずれの培養精子でも培養前より頭部のトリプシン耐性は増加した. ゲル電気泳動によるタンパク質泳動パターンは, 各培養精子で異なり, これら阻害剤が生存率に影響を与える事なく有効であった事を示した. 以上の事は, 培養後の精巣精子におけるトリプシン耐性の増加が, 精子の死によるものでなく, かつ精子のタンパク合成とは独立した現象であるらしい事を示唆した.
  • 新井 敏郎, 揚戸 英樹, 篠藤 徹, 菅原 盛幸
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1047-1048
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    牛のTリンパ腫瘍細胞(BTL-PC3細胞)において細胞質酵素活性を測定した. PC3細胞では, ヘキソキナーゼ, ピルビン酸キナーゼおよびグルコース-6-リン酸脱水素酵素の活性が正常牛胸腺細胞におけるそれらの活性に比べ2~3倍に上昇し, 糖代謝活性が著しく充進していることが明らかとなった.
  • 田村 豊, 木島 まゆみ, 鈴木 祥子, 高橋 敏雄, 中村 政幸
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1049-1050
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    マウスのClostridium chauvoei感染における自然抵抗性機構を明らかにするため, コブラ毒因子を投与したマウスでの攻撃菌の推移を観察した. コブラ毒因子はマウスの末梢血白血球数に影響を与えず, 補体第三成分を23.7%に低減させた. このようなマウスの筋肉に沖縄株の芽胞(1.9×104個)を注射したところ, 注射局所及び肝臓で菌の増殖は観察されず死亡することもなかった.
  • 鷲巣 誠, 小林 圀仁, 三阪 和徳, 林 太郎, 木下 現, 近藤 元紀, 青木 忍, 識間 博光, 鷲巣 月美
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1051-1053
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    日本ネコ(2歳, 雌, 体重3.6kg)が腹部膨満を主訴に来院した. 身体検査, レントゲン及びCT検査で肝嚢胞と診断された. 外科的に嚢胞を形成する膜の辺縁部分のみを切除した結果, 術後の経過も良く, 半年後の検査でも再発は認められなかった. 嚢胞内液の胆汁酸濃度は血清総胆汁酸濃度とほぼ同様の値であった.
  • 荒木 誠一, 鈴木 護, 藤本 昌俊
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1055-1056
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    鶏卵白由来の卵白粗製物(AEWP)に経口投与で生体防御能を増強する作用を見出した. マウスにAEWP500mg/kg~2g/kgを大腸菌感染1日前に予防的に投与することにより, 用量依存的な感染防御効果が認められた. また, AEWP12mg/kg~1.5g/kgを黄色ブドウ球菌感染直後から14日間毎日治療的に連投することにより, 用量依存的な延命効果および生存率の上昇が認められた. 食品由来のAEWPは, 経口投与によって感染抵抗性を増強した.
  • 桑野 昭, 伊藤 隆, 舘 裕, 平棟 孝志
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1057-1059
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    スルファモノメトキシン(6-MeO-SMMX)は, サルファ剤耐性B. bronchisepticaの莢膜合成を阻止することを報告したが, 他のサルファ剤にも莢膜合成阻止作用があるか否かを検討した. その結果, 化学構造的にはピリミジン環に1個のMeO基(-OCH3)を有する6-MeO-SMMXおよび2-MeO-SMMXが最も強い莢膜合成阻止作用を示した. MeO基を有しないサルファ剤の莢膜合成阻止作用は極めて弱いことが明らかとなった.
  • 澤田 勉, 玉田 尋通, 稲葉 俊夫, 森 純一
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1061-1062
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    CAPを3ヵ月または1週間毎に経口投与し猫の発情阻止が可能かどうかを検討した. 先ず, 成猫16頭に日量4-12.5mgを1週間連日投与し, これを3ヵ月毎に繰返したが, 投与終了後1~4ヵ月で10頭に発情が回帰した. 次に, 幼猫と成猫を含む28頭に2-12.5mgのCAPを1週間毎に経口投与すると, 少なくとも1年間全頭の発情を阻止することができた. 本法は体重に若干の増加を生じた他は何ら異常を認めず, 猫の発情阻止法として有効と考えられた.
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