1992 年 54 巻 6 号 p. 1145-1149
鶏の病原性大腸菌PDI-386株(血清型O78)から1型線毛を精製し, 性状を解析した. 本菌に見られた酸により誘発される自家凝集性を利用して, 酸による沈澱, 洗浄および中性緩衡液(pH8.0)への溶解により, 線毛は容易に精製できた. 電子顕微鏡観察で精製線毛は, 直径8nm, 平均長10μmであった. SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で求めた線毛サブユニットの質量は, 19,000ダルトンであった. 精製線毛のアミノ酸組成および線毛サブユニットのN末端配列は, 既報のKlebsiella pneumoniaeの1型線毛のそれと類似していた. さらに, 免疫学的にも, K. pneumoniaeの1型線毛と交差した. これらの成績より, 大腸菌とK. pneumoniae間に見られた1型線毛の多様性は, 鶏の病原性大腸菌の間にも既に存在していることが示された.