抄録
非細胞病原性ウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルス(cBVD-MDV)の持続感染ウシにおいて, 偶然的に発生した粘膜病(MD)例および細胞病原性ウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルス(cBVD-MDV)を実験的に重感染させた例について, MDの発現を検討した. 偶然的に発生した症例では, 同居していた持続感染ウシ2頭中1頭にMDが発現した. MDの発現ウシからはcBVD-MDVが分離され, 持続感染ウイルスと同じ抗原性状を示した. 残るウシにも同株の感染が証明されたが, 両株の抗原性状は異なっていた. 実験的MDの発現を目的とした試験では, まず持続感染ウシ2頭に対し, 持続感染ウイルスとは抗原性状の異なるcBVD-MDVを重感染させたところ, いずれもMDは発現しなかった. 次にその約6か月後, 同じウシ2頭に前とは抗原性状の異なったcBVD-MDVで再攻撃した. このウイルスは持続感染ncBVD-MDVの抗原性状に対し2頭中1頭が同一であった. その結果, 1頭は無症状で耐過したが, 両ウイルスの抗原性状が一致した1頭は攻撃ウイルスに対する抗体応答を示さず, 持続的な下痢と脱水症状を示し約2か月後に死亡した. このことから, 持続感染ウシのncBVD-MDVと抗原性状が一致するcBVD-MDVの重感染は免疫寛容との関わりから高率にMDを発現することが予想された.