Journal of Veterinary Medical Science
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アスベスト吸収による肺胞マクロファージの線維芽細胞走化性因子の分泌亢進
稲元 民夫Georgian Maya M.Kagan Elliott扇元 敬司
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1993 年 55 巻 2 号 p. 195-201

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抄録

肺胞マクロファージの線維芽細胞に対する走化性因子の産生に及ぼすin vivoでのアスベスト暴露の影響をラットの吸入モデルを用いて検討した. 2群のラットには間欠的に(1日6時間, 週5日, 計4週間)amphibole(クロシドライト)ないしserpentine(クリソタイル)アスベストを, 対照群のラットには清浄空気のみを吸入させた. 各群のラットは暴露終了後2~5ヶ月の間に屠殺し, 2系統のラットのそれぞれの群からの肺胞マクロファージの回収は気管支肺胞洗浄により行い, RPMI-1640培地で37℃, 24~96時間培養した. 培養上清は8μmのポアサイズを持つフィルターを装着した48穴マイクロケモタキスチャンバーを用いて, ラット胎児皮膚線維芽細胞に対する走化性活性を37℃, 5時間のアッセイで調べた. クロシドライト暴露ラットのマクロファージ培養上清は両系統とも, 線維芽細胞に対して対照群のラットのそれよりも有意に(P<0.01)大きな走化性活性を示した. クリソタイル暴露群はACIラットでのみ有意な(P<0.05)活性が見られた. 活性は48時間培養上清で最も高い値であった. この先化性因子は易熱性でトリプシン感受性であり, 透析により部分的に活性を減じた. 肺胞マクロファージは肺内部のアスベスト沈着部位に集積することから, これらの結果はアスベスト性肺損傷で病理学的に観察される間質性肺線維芽細胞の浸潤増加に関連しているのであろうと思われた.

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