Journal of Veterinary Medical Science
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55 巻, 2 号
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  • Terreros M. C., Luca J. C. De, Dulout F. N.
    1993 年 55 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    異物に対する細胞の遺伝子レベルでの応答に及ぼす蛋白欠乏食とエタノール摂取量の影響を調べた. 両性BALB/cマウスに蛋白質量25%の正常食及び同5%の低蛋白食を離乳後3週間にわたって給餌した. そのうちの半数には飲用水としてエタノール20%を含む水を与えた. 細胞遺伝学的分析には骨髄細胞を用い, ニ動原体(dicentric)染色体の正確なスコアリングのためスライドはCバンド染色を行った. Dicentric染色体の発現頻度は蛋白欠乏食を与えたマウス(5.45 dicentrics/100 cells)のほうが正常食マウス(0.61 dicentrics/100 cells)に比較して高かった. エタノール摂取は染色体損傷を引き起こしたが, 正常食(16.33 dicentrics/100 cells)と蛋白欠乏食(16.80 dicentrics/100 cells)を与えたマウスでエタノールの効果に差はなかった. 本結果は食事が生体の異物に対する遺伝子レベルでの応答に影響を与えることを示したものである.
  • 稲元 民夫, Georgian Maya M., Kagan Elliott, 扇元 敬司
    1993 年 55 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    肺胞マクロファージの線維芽細胞に対する走化性因子の産生に及ぼすin vivoでのアスベスト暴露の影響をラットの吸入モデルを用いて検討した. 2群のラットには間欠的に(1日6時間, 週5日, 計4週間)amphibole(クロシドライト)ないしserpentine(クリソタイル)アスベストを, 対照群のラットには清浄空気のみを吸入させた. 各群のラットは暴露終了後2~5ヶ月の間に屠殺し, 2系統のラットのそれぞれの群からの肺胞マクロファージの回収は気管支肺胞洗浄により行い, RPMI-1640培地で37℃, 24~96時間培養した. 培養上清は8μmのポアサイズを持つフィルターを装着した48穴マイクロケモタキスチャンバーを用いて, ラット胎児皮膚線維芽細胞に対する走化性活性を37℃, 5時間のアッセイで調べた. クロシドライト暴露ラットのマクロファージ培養上清は両系統とも, 線維芽細胞に対して対照群のラットのそれよりも有意に(P<0.01)大きな走化性活性を示した. クリソタイル暴露群はACIラットでのみ有意な(P<0.05)活性が見られた. 活性は48時間培養上清で最も高い値であった. この先化性因子は易熱性でトリプシン感受性であり, 透析により部分的に活性を減じた. 肺胞マクロファージは肺内部のアスベスト沈着部位に集積することから, これらの結果はアスベスト性肺損傷で病理学的に観察される間質性肺線維芽細胞の浸潤増加に関連しているのであろうと思われた.
  • 大西 堂文, 鈴木 佐代子, 堀江 牧夫, 橋本 昌俊, 梶川 武次, 大石 巌, 江島 博康
    1993 年 55 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    既に報告したようにBabesia gibsoni感染犬の血清中溶血活性は, 貧血の進行と共に上昇する. 感染犬から得た同一血清について, 異なる個体から得た非自己赤血球で溶血活性を測定すると活性値の分散は大きい. しかし, 自己赤血球(感染犬の赤血球)あるいはある同一の個体から得た非自己赤血球で測定すると分散は小さかった. 非自己赤血球による活性値の分散と犬の赤血球型別とを検討したが, 関連性はみられなかった. 血清中溶血活性は, 血清を加熱処理しても低下することはなく, 溶血活性の上昇に補体の関与はないと考えられた. また, B. gibsoni感染・非感染犬で赤血球の脆弱性にも違いはみられなかった. 血清中溶血活性は実験的感染の初期から上昇したが, 2~3週間後(感染後期)には低下し, Hematocrit値も徐々に回復を示した. この感染後期の溶血活性の変化は, 非自己赤血球より自己赤血球で測定した場合, より急激な低下を示した. このことは感染後期の溶血活性の変化は, 血清中に存在する溶血因子ではなく自己赤血球の組成の変化によることを示している. このような結果は, B. gobsoniによる感染後, 血中溶血活性の上昇と並行して著しい貧血が発症すると, 血清中溶血因子に抵抗性をもつ赤血球が出現し, 溶血性貧血の進行が抑制されることを示唆している.
  • 中尾 敏彦, 原田 篤, 木村 真, 高木 英守, 金子 一幸, 杉山 定寛, 斉藤 昭彦, 森好 政晴, 河田 啓一郎
    1993 年 55 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    直腸検査によって卵胞嚢腫が疑われた乳牛170頭中88頭(51.8%)が, 乳汁中プロジェステロン値に基づいて卵胞嚢腫と診断された. この88頭中83頭を治療試験に用いた. 83頭中56頭には, まず, 強力な黄体形成ホルモン放出作用を有する酢酸フェルチレリンを100μg筋肉内注射し, その14日後に黄体退行作用と発情誘起作用を有するフェンプロスタレンを1.0mg皮下注射した. 残りの27頭には, フェルチレリン100μgの筋肉内注射のみを行い, これらを対照群とした. フェルチレリン-フェンプロスタレン投与群の方が, 対照群よりも, 治療後100日以内の受胎率が高く(66.1vs48.1%), 治療開始から受胎までの平均日数も短かかった(30±21vs43±27日). したがって, フェリチレリン投与後にフェンプロスタレンを投与することは, 牛の卵胞嚢腫黄体化後の正常発情の発現と交配時期を早め, 治癒期間短縮に有効であり, 臨床的にも推奨される.
  • 工藤 忠明, 角 明美, 橋本 晃
    1993 年 55 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬の椎間板内へのキモパパイン注入により生ずるChemonucleolysisの経過をX線学的ならびに組織学的に観察した. キモパパイン注入によりX線学的に狭小化を示した椎間板腔は2週目より徐々に回復を示し, 12週目には0.1mg例で74.1%, 1.0mg例で61.1%および10.0mg例で71.7%まで回復していた. また, 加齢により回復が遅延する傾向がみられた. 組織学的には, キモパパイン注入2週目には椎間板腔が減少を示し, 投与酵素量に応じてプロテオグリカン陽性基質が減少していた. 髄核は増殖軟骨細胞とコラーゲン基質で囲環された不整形の変性脊索細胞塊より成っていた. 12週目には, 髄核中心は線維軟骨組織に置換されていた. 10.0mg例では椎間板腔は変性基質を伴わない密な軟骨組織で満たされ, 椎間板腔が狭小化していた. これらの結果より, キモパパイン10.0mgによるChemonucleolysisは化学的椎間板減圧術として犬の椎間板内圧を減少させ, 椎間板ヘルニアの病状を軽減すると考えられる.
  • 山本 滋, 宮武 克行, 岡本 芳晴, 南 三郎, 松橋 晧
    1993 年 55 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫成虫を肺動脈内に挿入して作製した肺動脈怒張および腹水を伴う右心不全の犬におけるニトログリセリンの循環動態を検索した. 犬糸状虫挿入後4-5週間後の平均肺動脈圧(21.5±6.6mmHg)は対照群(4.2-7.1mmHg)に比較して高かった. 犬糸状虫挿入犬にニトログリセリンを静脈内投与すると, 3または10μg/kgで肺動脈圧の低下がみられた. ニトログリセリンは肺血管抵抗および全身血管抵抗を低下させたが, 心係数および心拍数に影響を及ぼさなかった.
  • 荒蒔 康一郎, 柳田 誠, 菊森 幹人, 小島 基義, 鈴木 隆元, 天野 健次
    1993 年 55 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換え法により生産されたヒト型顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子のin vivoでの生物活性を正常カニクイザルを用いて調べた. 100μg/kgの単回静脈内投与では, 投与から12時間後をピークに好中球を主とする末梢白血球数の上昇を認めた. また, 20μg/kg/dayの10日間連続静脈内投与では, 好中球, 好酸球, リンパ球を主とする末梢白血球数のmulti-lineageな上昇および血小板数の上昇を認めた. 20日間連続静脈内投与では, 白血球数および血小板数の上昇に加えて, 血小板数と逆相関する平均血小板容積の低下を確認した.
  • 橋本 統, 宮本 健一, 森友 忠昭, 斎藤 寛史, 渡辺 翼, 望月 公子
    1993 年 55 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    可移植性スナネズミ悪性黒色腫から培養細胞系を樹立した. 腹腔内に移植された同種動物において腹水の貯留が認められ, 今回, この腹水中の腫瘍細胞を出発材料として細胞培養を試みた. 初代培養では多極性および多形性細胞の2種類が区別された. 継代6代目より, 多形性細胞に付着する細胞塊が観察された. そこで, この付着している細胞をはがし継代を行ったところ, 細胞は多極性で多数の細胞突起を有し, 活発に増殖し, 房状構造を呈した. 継代初期では光顕および電顕観察において, メラニン顆粒を多数有する細胞が証明された. Dopa反応では殆どの細胞が陽性であった. 20代から30代の継代を重ねるにつれ, メラニン顆粒の減少が認められ殆どの細胞が無色素性となった. 増殖曲線より倍加時間は32時間と計算され, 染色体数は68から82に分布した. この培養細胞を同種動物の腹腔内ヘ接種したところ, 接種後, 30日以内に腹腔内に白色腫瘍が形成された. この細胞系は, MGM-Aと名付けられ, 2年間にわたり100代以上培養維持されている.
  • 土屋 佳紀, 内村 昭彦, 田近 英樹, 坂本 研一, 古谷 隆徳, 佐藤 邦彦, 難波 功一, 三浦 康男
    1993 年 55 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚コレラウイルス(HCV)およびその抗体を定量する新しい方法を開発した. まず, HCV感染によるインターフェロン(IFN)抑制効果についての確認を行った. HCVに感染しているCPK細胞は, IFNインデューサーを感作してもIFNを生成しなかった. しかし細胞のIFNに対する感受性は抑制していなかった. これらの結果をもとに, HCVのIFN抑制効果に基づいた新しいHCV検出法を確立し, 逆干渉法と命名した. その原理は, CPK細胞におけるGPE-株のVesicular stomatitis virus(VSV)に対する干渉作用をHCVが阻害する現象をもとにしている. 本法では, HCVの感染力価はVSVによる細胞変成効果の出現に基づいて評価される. 本法は, HCVの感染力価および抗体価の測定において, END法とほぼ同等の感度を示した. 迅速さと客観性では, END法よりも優れていた.
  • 音井 威重, 立川 進, 近藤 正治, 鴻野 文男, 後藤 充宏, 小賀野 義一, 鈴木 達行
    1993 年 55 巻 2 号 p. 237-239
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    体外受精後7~8日目に発生した胚盤胞を洗浄液(胎児血清20%を添加したm-PBSとTCM-199を等量混合)で12回洗浄(対照群), または3回洗浄後0.3%BSA加m-PBSで2回洗浄し, Ca++, Mg++を含まないハンクス溶液で溶解した0.25%トリプシン溶液で2回洗浄後, 洗浄液で5回洗浄した(トリプシン処理群). 洗浄後一部の胚は凍結し, 新鮮および凍結融解胚の体外での発育性および移植後の受胎性を検討した. その結果, 対照およびトリプシン処理群において, 新鮮, 凍結融解胚の発育性に差はなく(P>0.05), 受胎率においても差が認められなかった(P>0.05). このことは体外受精胚に対するトリプシン処理が胚の発育性および受胎能に影響しないことを示唆している.
  • 板垣 伊織, 田中 雅治, 四宮 啓祐
    1993 年 55 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    当施設で実施されたB6C3F1マウスを用いた癌原性試験において, 110匹の雄動物中に精巣上体に限局した組織球系細胞の腫瘍が4例認められた. 癌原性試験の結果, 対象化合物の発癌性は否定的であったので, これらは全て自然発生病変であると考えられた. 病理組織学的には, 鋭い陥入を有する核を持つことの多い, 紡錘形から円形の, 組織球に類似した腫瘍細胞の充実性の増生が特徴であった. これらの内3例の腫瘍組織内に局所的な出血と, その部分でのerythrophagocytosisが認められた. これらの腫瘍には, 他の雌雄動物に明らかな悪性所見を伴って認められたhistiocytic sarcomaと, 組織学的に共通する点がいくつか見出だされた. しかしhistiocytic sarcomaで見られたような系統的な増生や細胞の強い異型性は, 精巣上体の腫瘍では認められなかった. 一方雌動物でも, 同様な組織学的特徴を備えた限局性の腫瘍が106匹中4例の子宮に認められた. この腫瘍がhistiocytic sarcomaの良性病変あるいは前段階病変とも考えられたことから, 精巣上体の腫瘍も同様病変として位置付けられるものと考えられた. 精巣上体の腫瘍にはやや悪性を示唆する所見が見られた例もあったことを考慮すると, この臓器を原発としてhistiocytic sarcomaが発生する可能性もあり得ることが示された.
  • 和田 直己
    1993 年 55 巻 2 号 p. 247-249
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    実験には成猫17頭を用いた. 後肢筋支配の運動ニューロンから記録される単シナプス性反射に対する後肢足底部の5つのFOOT-PAD(central pad, toe pad-2, 3, 4, 5)それぞれに対する電気刺激の効果について検討した. その結果FOOT-PAD刺激の効果は運動ニューロンの種類によって異なり, さらにおなじ単シナプス性反射においても, 刺激するFOOT-PADによって効果の異なることが明らかになった. 以上の成績はFOOT-PADからの末梢入力が様々な後肢筋の活動を調節し, 後肢の安定調節を行っていることを示唆している.
  • 植田 吉純, 桜井 徹, 矢内 顯
    1993 年 55 巻 2 号 p. 251-258
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコインターフェロン(FeIFN)をコードするcDNAを組込んだ遺伝子組換えカイコバキュロウイルスBmFeIFN1を作製し, カイコ体液中にFeIFNを生産することを前報で報告したが, 逆相HPCLにより2成分のFeIFNが検出された. 両者のアミノ末端配列は異なり, シグナルペプチドの2種類のプロセッシングが示唆された. 部位特異的変異の手法を用い, 塩基配列から推定されるシグナルペプチドの1箇所のアミノ酸を変換することにより, 多くのヒトインターフェロン-αに共通なアミノ末端配列を有する1成分のFeIFNのみを生産するようにし, このFeIFNをrFeIFNと名付けた. カルボキシル末端アミノ酸は, 塩基配列の推定より1残基上流のGluであった. パス染色陽性, アミノ酸組成分析によってN-アセチルガラクトサミンが検出されずN-アセチルグルコサミンが検出されたこと, またアミノ酸配列分析によってAsn-Thr-Thr配列中のAsnが検出されなかったことから, rFeIFNにはN型糖鎖のみの付加が示唆された. pH1.5, 4℃で少なくとも50日間は失活は認められなかった. ネコカリシウイルス, ネコヘルペスウイルスに対してin vitroで抗ウイルス活性を有した. 等電点は6.5であった. ヒトインターフェロンの構造および生合成との比較から, rFeIFNはω型インターフェロンに分類されると考えられる.
  • 中川 潤子, 納 敏, 一条 茂, 荒木 誠一, 木村 誠
    1993 年 55 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    活性卵白粉末を子牛に経口投与し, 投与後の末梢血好中球数, 好中球機能としてNit-roblue Tetrazolium (NBT)還元能とStaphylococcus aureus(S. aureus)に対する貧食殺菌能の変動について検討した. 子牛に対して活性卵白粉末を250mg/kgと500mg/kgの1回および5日間隔での2回経口投与を行った. 1回投与では, 500mg/kg投与例の末梢血好中球のNBT還元能とS. aureusに対する貧食殺菌能が投与1日目から上昇して3日目に最高値となったが, 250mg/kg投与例では活性の上昇が見られなかった. 5日間隔での2回投与例では, 500mg/kg投与例は, 1回投与例と同様の変動を示し, さらに250mg/kg投与例においても2回目投与後に好中球機能の活性の上昇が認められた. しかし, 活性卵白粉末の1回および5日間隔での2回投与後は, 末梢血好中球数の増加が見られなかった. 以上の成績から, 活性卵白粉末の子牛に対する経口投与は, 非特異的免疫能の増強効果を有することが明らかになった.
  • 河村 美奈, 大橋 文人, 永田 佳子, 高井 信治, 本家 弘之, 西村 亮平, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1993 年 55 巻 2 号 p. 265-270
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    尿管結紮による実験的尿毒症犬の血漿を用いて既報で選定した4つの尿毒症性ピークの構成成分を二段階の分取液体クロマトグラフィー(PLC)を用いて分画し, 各分画の物理化学的性状を調べた. 分取の第一段階として既報と同じ陰イオン交換樹脂を用いたPLCを試み, 各分画の逆相HPLCによる分析で, 3ピークはほぼ単一の成分からなることが確認されたが, 1ピークは多成分から構成されていることが判明した. そこで, 各主要ピークを第二段階の逆相系PLCで分画した. これらの純化した4種の成分を薄層クロマトグラフイー分析, 紫外部吸収スペクトル測定およびプロトン核磁気共鳴測定により物理化学的性状を調べた結果, ピリジン誘導体, 尿酸, 馬尿酸およびキヌレン酸であることが判明した. これらの物質は犬の小分子量尿毒症物質として重要な意義を有することが示唆された.
  • 左近允 巌, 榎元 勝治, 上村 俊一, 浜名 克己
    1993 年 55 巻 2 号 p. 271-274
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ早期妊娠因子(EPF)測定による胚の予後判定への応用を試みた. 黒毛和種16頭とホルスタイン種3頭を自然発情時人工授精(AI)実施群と過剰排卵処置AI実施群に分け, AIおよび胚回収前後におけるEPF値を測定した. 自然発情時AI実施群では妊娠例と非妊娠例の間にAI後13~16日目よりEPF値に有意差(P<0.01)が認められ, EPF値の推移より, 妊娠で5以上, 非妊娠で4以下の基準値が得られた. 妊娠8例では, AI当日に4以下であったEPF値は6~9日目までに全例が5以上に上昇し, 以後持続した. 非妊娠6例中4例では一過性に5以上に上昇した後, 20~25日目までに4以下に低下し, 胚の早期死滅が推測された. 他方, 過剰排卵処置AI実施群ではAI当日に4以下であったEPF値は, AI後3日目までに全例が5以上となり, 胚回収当日まで持続した. AI後7日目に胚が除去されると, 5例中4例のEPF値はその後3日目までに4以下へ低下し, 残る1例も7日目までに4以下に低下した. 以上の結果より, ウシEPF値を測定することにより, 胚の生死判定が可能となり, ウシEPF測定による超早期妊娠診断, またの早期死滅診断への有用性が示唆された.
  • 北川 均, 保田 恭志, 佐々木 栄英
    1993 年 55 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    肺動脈寄生の犬糸状虫症犬において血液ガスを分析した. 動脈血酸素分圧(PaO2)は犬糸状虫非寄生群19例では91.5±7.3mmHg, 軽度の呼吸器症状, 心機能障害, 貧血などの症状を示す軽症群48例では85.7±8.2mmHg, 腹水, 浮腫などの右心不全症状を示す重症群13例では76.4±11.6mmHgであった. 軽症群のPaO2と肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)は非寄生群より低値であった. 重症群のPaO2と動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)は非寄生群および軽症群より低く, AaDO2は大きかったが, この群の2例のみが60mmHg以下のPaO2と50mmHg以上のAaDO2を有していた. 混合静脈血O2分圧とCO2分圧は重症群で低値であった. 動脈血pH, 重炭酸イオン(HCO3-), base excessは軽症群と重症群で非寄生群より低値であった. 重症群のpHは軽症群と有意差がなかったが, HCO3-は有意に低値であった. アニオンギャップは3群で有意差が無かった. 重症群の血清乳酸濃度は非寄生群および軽症群より高値であったが, ほとんどの例で正常範囲内にあり, わずかに高い血清乳酸濃度が2例に認められたのみであった(3.84mmol/lと3.82mmol/l). PaO2とAaDO2は平均肺動脈圧と有意に相関した(それぞれr=-0.62, r=0.66, P<0.01). 犬糸状虫摘出1週後, 軽症群では血液ガス値, pHおよびHCO3-は有意に変化しなかった. 重症群では, 血液ガス値は変化しなかったが, pHとHCO3-は上昇し, acidosisは改善された.
  • 稲葉 睦, 後藤 郁男, 佐藤 耕太, 前出 吉光
    1993 年 55 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウマ赤血球アニオントランスポーター(Band 3)の性質を, 蛍光基質N-(2-aminoethyl sulfonate)-7-nitrobenz-2-oxa-3-diazole(NBD-taurine), ならびに無機リン酸(Pi)を基質としてヒト赤血球のそれと比較, 検討した. ウマ赤血球はPiに対してヒト赤血球の62%のアニオン輸送阻害剤, 4, 4'diisothiocyano-stilbene-2, 2'-disulfonate (DIDS)感受性輸送を示したが, 一方, NBD-taurineの輸送能はヒ卜の1/60以下と極めて低値であった. ところが, NBD-taurineはウマ赤血球におけるPi輸送を競合的に, かつヒト赤血球におけると同様に強く阻害した. これらの成績は, NBD-taurineがウマ赤血球のBand 3に他のアニオンと同様に結合するものの, 輸送基質としては適していないことを示すものであり, ウマ赤血球のBand 3がアニオン輸送部位, あるいはその近傍でヒ卜のBand 3と異なる構造を有することを示唆するものである.
  • 能澤 教眞, 森本 直樹, 岡本 芳晴
    1993 年 55 巻 2 号 p. 287-290
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    アマオブネ(海産巻貝)とムラサキイガイ(海産二枚貝)の血液細胞はザイモサン粒子および腸炎ビブリオと大腸菌の生菌の存在下でルミノール依存性化学発光を示した. この発光は各々の貝の血漿の添加により促進された. イシマキガイ(汽水産巻貝)の血液細胞は大腸菌の存在下では海産貝類の血液細胞と同程度の発光を示したが, ザイモサン粒子と腸炎ビブリオによる発光は弱く, 血漿による促進効果も弱かった. ヤマトシジミ(汽水産二枚貝)の血液細胞は3種類の刺激因子による発光が認められなかった. 化学発光により測定される汽水産貝類の活性酸素産生能が海産貝類の血液細胞に比較して弱かったことは汽水産貝類による腸炎ビブリオの長期間保菌と関連があるのではないかと考えられる.
  • 寺田 厚, 原 宏佳, 加藤 慎二, 木村 剛, 藤森 勲, 原 耕三, 丸山 司, 光岡 知足
    1993 年 55 巻 2 号 p. 291-295
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    猫8頭(ヒマラヤン3頭とペルシャ5頭)に乳果オリゴ糖を50mg/kg/日を2週間投与し, 投与前, 投与7日目および14日目, 投与後7日目に糞便フローラ, 糞便内腐敗産物, 水分, pH, 尿内アンモニアおよび環境のアンモニアを測定した. 腸内フローラでは投与期間中Lactobacillusは有意(p<0.05)に増加し, Clostridium perfringensとEnterobacteriaceaeは有意(p<0.05)に減少した. FusobacteriumおよびStaphylococcusは乳果オリゴ糖投与7日目に投与前に比べて有意(p<0.01)に低下し, Bacteroidesは投与後14日目に有意(p<0.001)に増加した. 検出率については, 乳果オリゴ糖投与14日目においてBifidobacteriumは有意(p<0.001)に上昇し, 一方, Spirochaetaceaeおよびレシチナーゼ陰性Clostridiumは有意(p<0.05)に低下した. 腐敗産物については, 糞便内アンモニア, エチルフェノール, インドールおよびスカトール, 並びに尿内アンモニアはいずれも投与14日目に有意に(p<0.05)低下した. 糞便水分量および便量は乳果オリゴ糖投与中わずかに増加し, 逆に糞便pHはわずかに低下した. 飼育室のアンモニア濃度(p<0.01)は減少し, 糞便臭もかなり減少した.
  • 松永 敏幸, 鎌田 信一, 柿市 徳英, 内田 和夫
    1993 年 55 巻 2 号 p. 297-300
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1988年11月~1989年5月に本邦の27牧場で発生したウシ乳房炎由来のS. aureus58株について病原関連因子の産生性を調べた. 各病原因子の全体での陽性率は, toxic shock syndrometoxin-1(TSST-1, 27.6%), enterotoxins(34.5%), α-haemolysin(74.1%), β-haemolysin(65.5%), δhaemolysin(12.1%), DNase(100%), egg-yolk factor(25.9%), clumping factor(70.7%)およびprotein A(58.6%)であった. 甚急性由来のS. aureusは, 100%がTSST-1, enterotoxin C, α-haemolysinおよびβ-haemolysinを産生した. Clumping factorとprotein Aは甚急性由来株から検出されず, 慢性由来株から比較的高率に検出された. Coagulase型はVI型(36.2%)が最も多く, IV, VおよびVIII型は認められなかった. TSST-1陽性株は全株がenterotoxin C, coagulase VI型を産生したが, 1株を除いてegg-yolk factor, clumping factor, protein Aを産生せず, その性状は特異的であった. 今回の調査結果から, TSST-1およびenterotoxin Cのウシ乳房炎とくに甚急性乳房炎への関与が推察された.
  • 安宅 倭, 浅井 洋, 九郎丸 正道, 林 良博
    1993 年 55 巻 2 号 p. 301-306
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    As系ミュータントラットの精子形成不全について組織学的検討を行った. ミュータントの精細管内の細胞数は正常のものと比べて著しく少なく, 精細管の径も小さい. 精上皮細胞にはアクロゾームが精細管の基底膜の方向に向きを変えたステップ8の精子細胞まで確認されたが, それ以降の発育段階の精子細胞は認められなかった. また, 精子細胞由来と考えられる多核巨細胞が観察された. ミュータントにおけるセルトリ細胞間の血液精巣関門はランタントレーサー法によって正常に機能していることが明らかになった. パキテン期精母細胞の細胞質内に観察される特異構造物には大量のRNAが存在し, この構造は電顕レベルで直径約25nmの顆粒の集合物として観察されたことから, リボゾームの集積物と同定された. 一方パキテン期精母細胞以前の段階の精細胞, セルトり細胞および間質細胞には, 電顕レベルにおいても形態学的な異常は認められなかった. このミュータントにおける精子形成の異常には, パキテン期精母細胞におけるタンパク合成系の異常がかかわっているものと推測された.
  • 上原 勇作
    1993 年 55 巻 2 号 p. 307-312
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    肺動脈圧の非観血的推定を行うために, 40頭の犬の肺動脈血流をパルスドプラ法にて記録し, この血流速波形から波形の形状, 右室駆出加速時間(AT), 心拍数に対するATの割合(AT/HR)および右室駆出時間(ET)に対するATの割合(AT/ET)の4つの指標(パラメータ)を求め, これらの指標と観血的に測定された肺動脈圧との相関を検討した. その結果, 血流速波形の形状パターンでは肺動脈圧の定量的推定が困難であったが, AT, AT/HR, AT/ETと肺動脈収縮期圧との間には, それぞれr=-0.71, r=-0.67, r=-0.84と比較的良好な負の相関(P<0.01)が得られた. このことから, パルスドプラ法は肺動脈圧を推定する方法として応用が可能であること, また今回の4つのパラメータの中で, AT/ETが肺動脈圧実測値と最も良好な相関を示すことが明らかとなった.
  • 梅西 文範, 韓 邦根, 池本 卯典
    1993 年 55 巻 2 号 p. 313-317
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    韓国の珍島犬21例のミトコンドリアDNA(mtDNA)多型を6塩基認識する10種類の制限酵素を用いて検討した. 珍島犬のmtDNAは, Apa I, EcoR V, Hinc II, Sty Iなど4種類の制限酵素で多型を示したが, 残りのBam H I, Bgl II, EcoR I, Hind III, Pst I, Xba Iなど6種類の制限酵素で調査した21例すべて同一のパターンを示し多型を認めることはできなかった. 4種類の制限酵素によって得られるmtDNA多型を組み合わせると, 珍島犬は4つのタイプに分類された. さらに, 根井らの方法により遺伝距離を求めると0.0086であった. また, 各タイプ間の遺伝距離よりUPG法を用いて系統樹を作成してみたところ, クラスターは1集団として分類された. この結果は, 珍島犬の血統が現在のところよく保存されていることを示唆するものといえよう.
  • 甲斐 清徳, 立山 晉, 三好 宣彰, 山口 良二, 内田 和幸, Rostami Mina
    1993 年 55 巻 2 号 p. 319-321
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ヒトEpidermal growth factor receptor (EGFR) geneを用いて牛, 馬, 豚, 犬, 猫および鶏のゲノムDNAとのサザンブロットハイブリダイゼーションを行った. 各家畜においてヒトEGFR geneに相同性を持つ遺伝子の存在が確認された. また牛ゲノムDNAのPst I消化および鶏ゲノムDNAのEco RI消化において, 遺伝子多型と考えられる個体間でのバンドの相違が確認された. 以上の結果は, 家畜の腫瘍発生とEGFRとの関係を解析する上での基礎的な知見となるであろう.
  • 輿水 馨, 斉藤 剛敏, 篠塚 康典, 土屋 公幸, Cerda Raul O.
    1993 年 55 巻 2 号 p. 323-324
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    4属7種35匹の野生小型げっ歯類の呼吸器および泌尿生殖器からマイコプラズマの分離を試みた. マイコプラズマはアゼネズミ(Rattus argentiventer), クマネズミ(R. rattus)およびナンヨウネズミ(R. exulans)の鼻腔, 口腔, 気管, 膣, 陰茎から分離されたが, ドブネズミ(R. norvegicus), スミスネズミ(Eothenomys smithi), ミラルディア(Millaradia meltada)およびハツカネズミ(Mus musdulus)は陰性であった. 分離されたマイコプラズマは生物学的性状および血清学的性状からMycoplasma pulmonisおよびM. arthritidisと同定された.
  • 朴 在鶴, 落合 謙爾, 板倉 智敏
    1993 年 55 巻 2 号 p. 325-328
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    E. cuniculiに自然感染した兎の血清は, 間接金コロイド免疫組織化学法で本原虫に対して高い抗体価を示し, 免疫電顕法ではE. cuniculiの殻の外層と結合した. ビオチン化兎抗E. cuniculi IgGは, 直接ABC免疫組織化学法でE. cuniculiと特異的に反応したが, 他の原虫である, Neospora caninum, Toxoplasma gondii, sarcocystisとは反応しなかった. 直接ABC免疫組織化学法は, E. cuniculi感染の診断並びに研究に極めて有用であるとみなされた.
  • 大場 茂夫, 木場 秀夫, 桑原 正人, 吉田 仁夫, 小出 英興, 武石 昌敬
    1993 年 55 巻 2 号 p. 329-332
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコの歯牙吸収病巣について, 研磨標本のコンタクトマイクロラジオグラムにより得られたフィルムをPIAS-画像処理装置により検討した. 吸収病巣境界面には限界明瞭な輝度の差異がみられ, ネコの吸収病巣における脱灰様相の所見はヒトの齲蝕像とは異なり, 疑似カラー処理により, ヒト齲蝕でみられる脱灰所見はないことが明らかにされた.
  • 宮本 千加子, 高島 郁夫, 苅和 宏明, 杉浦 健夫, 鎌田 正信, 橋本 信夫
    1993 年 55 巻 2 号 p. 333-335
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    日本の軽種馬血清につきクラミジア感染状況を把握するために, 補体結合反応により抗体価の測定を実施した. 平均抗体陽性率は15.2%(91/599)であり, 地域別の陽性率は本州(19.1%, 48/251)と九州(20.0%, 20/100)において北海道(9.3%, 23/248)より高く, また宇都宮で最も高い陽性率(56.0%, 28/50)が得られた. 年齢別抗体陽性率は2~5歳で最も高かった.
  • 岩中 麻里, 織田 信一郎, 杢野 弥生, 秋山 潔, 二井 愛介, 柳井 徳磨, 柵木 利昭, 上田 雄幹
    1993 年 55 巻 2 号 p. 337-339
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    下痢および鼻漏を呈して死亡したポメラニアン仔イヌの1例で, カタル性肺炎, 肝の巣状壊死および急性腸炎が認められ, 回腸上皮細胞および肝細胞内に細長桿菌が見られた. 回腸上皮細胞内ではTyzzer菌とジステンパーウィルスの細胞レベルでの重感染が確認された.
  • 矢用 健一, 武田 眞記夫, 局 博一, 菅野 茂, 土井 邦雄
    1993 年 55 巻 2 号 p. 341-342
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    DBA/2およびBALB/cマウスを用いて, 脳心筋炎ウイルスD変異株(EMC-D)が, 水迷路における運動能, 方向認知記憶能および作業記憶能に及ぼす影響を検討した. 全個体において, 作業達成までの潜時は漸次短縮されたが, テスト初日と比べて有意な短縮がみられたのは, 両系統とも対照群に比べて感染群の方が遅かった. 従って, EMC-D感染マウスにおける水迷路学習の阻害には, 脊髄病巣起因の後肢麻痺による運動能の低下の他に, 海馬病巣起因の方向認知記憶及び作業記憶の障害が関与していることが示唆された.
  • 高鳥 浩介, 高橋 淳子, 川合 覚, 一条 茂, 長谷川 篤彦
    1993 年 55 巻 2 号 p. 343-344
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    我が国における牛の皮膚糸状菌症の原因菌はTrichophyton verrucosumで, 本菌は感染した体表から容易に直接伝播するものとされている. しかし本菌の感染病巣外での生態分布については十分知られていないことからT. verrucosum感染仔牛と同居する牛体表からの真菌分離を行った. 19感染牛の感染部体表から29点, 34感染牛の非感染部から46点, 29非感染牛の体表から35点被毛を採取し, T. verrucosumの分離をサブローデキストロース寒天培地を用いて検索した. その結果, 感染部位からの検出は, 58.6%であり, 感染病巣から高率に分離された. 一方, T. verrucosumによる感染を認めない部位での検出率は, 感染牛非感染部体表では34.8%, 非感染牛体表では17.1%であった. このようにT. verrucosumは感染病巣部以外からも分離され, 本菌が感染病巣から同居する牛群体表に伝播し, 宿主側の何らかの要因により感染範囲を拡大していくものと推察され本感染症に対する防疫体勢の重要性が示唆された.
  • 畑 英一
    1993 年 55 巻 2 号 p. 345-347
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    広東住血線虫の培養法について検討した. 第3期幼虫をRPMI 1640に20%牛胎児血清を含む培養液下で培養すると4週目には約30%の虫体が第3期後期に発育した. またラットの脳から回収した第4期幼虫では化学的に既知なWaymouthの合成培養液(MB 752/1)の単独下が最も良好で培養7日目には74%の虫体がyoung adultに発育し, その平均体長も培養前の約1.4倍を示した.
  • 野口 雅久, 笹津 備規, 高橋 敏雄, 大前 憲一, 寺門 誠致, 河野 恵
    1993 年 55 巻 2 号 p. 349-350
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    慢性豚丹毒罹患豚より分離した豚丹毒菌Erysipelothrix rhusiopathiae43株について, アガロースゲル電気泳動によりプラスミドDNAの検索を行った. その結果, 1から6個のプラスミドを持つ7株を初めて検出した. 電子顕微鏡観察から, プラスミドは1.4から84kbの種々のサイズを持っていた. これらのプラスミドの機能については現在のところ不明である.
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