ウシ早期妊娠因子(EPF)測定による胚の予後判定への応用を試みた. 黒毛和種16頭とホルスタイン種3頭を自然発情時人工授精(AI)実施群と過剰排卵処置AI実施群に分け, AIおよび胚回収前後におけるEPF値を測定した. 自然発情時AI実施群では妊娠例と非妊娠例の間にAI後13~16日目よりEPF値に有意差(P<0.01)が認められ, EPF値の推移より, 妊娠で5以上, 非妊娠で4以下の基準値が得られた. 妊娠8例では, AI当日に4以下であったEPF値は6~9日目までに全例が5以上に上昇し, 以後持続した. 非妊娠6例中4例では一過性に5以上に上昇した後, 20~25日目までに4以下に低下し, 胚の早期死滅が推測された. 他方, 過剰排卵処置AI実施群ではAI当日に4以下であったEPF値は, AI後3日目までに全例が5以上となり, 胚回収当日まで持続した. AI後7日目に胚が除去されると, 5例中4例のEPF値はその後3日目までに4以下へ低下し, 残る1例も7日目までに4以下に低下した. 以上の結果より, ウシEPF値を測定することにより, 胚の生死判定が可能となり, ウシEPF測定による超早期妊娠診断, またの早期死滅診断への有用性が示唆された.