DBA/2およびBALB/cマウスを用いて, 脳心筋炎ウイルスD変異株(EMC-D)が, 水迷路における運動能, 方向認知記憶能および作業記憶能に及ぼす影響を検討した. 全個体において, 作業達成までの潜時は漸次短縮されたが, テスト初日と比べて有意な短縮がみられたのは, 両系統とも対照群に比べて感染群の方が遅かった. 従って, EMC-D感染マウスにおける水迷路学習の阻害には, 脊髄病巣起因の後肢麻痺による運動能の低下の他に, 海馬病巣起因の方向認知記憶及び作業記憶の障害が関与していることが示唆された.