1993 年 55 巻 2 号 p. 343-344
我が国における牛の皮膚糸状菌症の原因菌はTrichophyton verrucosumで, 本菌は感染した体表から容易に直接伝播するものとされている. しかし本菌の感染病巣外での生態分布については十分知られていないことからT. verrucosum感染仔牛と同居する牛体表からの真菌分離を行った. 19感染牛の感染部体表から29点, 34感染牛の非感染部から46点, 29非感染牛の体表から35点被毛を採取し, T. verrucosumの分離をサブローデキストロース寒天培地を用いて検索した. その結果, 感染部位からの検出は, 58.6%であり, 感染病巣から高率に分離された. 一方, T. verrucosumによる感染を認めない部位での検出率は, 感染牛非感染部体表では34.8%, 非感染牛体表では17.1%であった. このようにT. verrucosumは感染病巣部以外からも分離され, 本菌が感染病巣から同居する牛群体表に伝播し, 宿主側の何らかの要因により感染範囲を拡大していくものと推察され本感染症に対する防疫体勢の重要性が示唆された.