抄録
キンコウカ(Narthecium asiaticum Maxim.)の有毒成分を, モルモットで毒性をモニターしつつ分離精製した. メタノール抽出物から作成した粗抽出物には, 2種類の主要なザポニン(C8, C9)と, 7種類の類縁のサポニン(C1-7)が含まれていた. 粗抽出物を通常のサポニンに対する溶媒分配法で分画した. 水飽和ブタノール分画にはC8とC9が多量に含まれ, この分画に経口毒性がみられた. C8とC9は分別沈澱ならびにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離された. C9の13C-および1H-NMRスペクトルおよびC9の酸および酵素による加水分解の結果から, C9はサルササポゲニンおよびスミラゲニンの3β位にガラクトース, グルコースおよびアラビノースからなる枝分かれした3糖体, ならびに26位にグルコースが結合した2種類のフロスタノールサポニン(C9a, C9b)の混合物であることが判明した. C8は部分加水分解産物の糖の分析から, C9の構造中のアラビノースがキシロースに置き換わったフロスタノールサポニンと推定された. C8およびC9は, 経口投与によって, モルモットに下痢, 蛋白尿, 血尿および死亡を起こした.