1993 年 55 巻 4 号 p. 601-606
肝の腫大を惹起し, かつ肝細胞蛋白合成促進作用を有する化合物がラットTyzzer病に及ぼす効果を, 血漿生化学的および病理組織学的に検索した. 非感染ラットに肝の代謝酵素誘導剤であるフェノバルビタールとメチルコラントレン, あるいは肝細胞にマイトジェンとして作用する硝酸鉛とエチレンジブロミドを投与すると, これらの化合物を投与しない非感染ラットと比べて肝重量は増加した. 化合物を投与してTyzzer菌を感染させたラットでは, 化合物を投与しない感染ラットと較べ, 菌による肝壊死病変の程度の指標としての血漿中GOTおよびGPTが高値を示し, 組織学的にはより大きな肝壊死像あるいは壊死巣周囲肝細胞内により多くの菌を保有している像が観察された. これらの成績より, Tyzzer菌の増殖が肝の腫大過程における肝細胞代謝の変化により増強されたことが示唆され, 肝細胞内で合成された蛋白質がTyzzer菌増殖に大きく関与している可能性が示された.