Journal of Veterinary Medical Science
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55 巻, 4 号
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  • 宮沢 孝幸, 見上 彪
    1993 年 55 巻 4 号 p. 519-526
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコ免疫不全ウイルス(feline immunodeficiency virus: FIV)は, 1986年に後天性免疫不全症候群(エイズ)様症状を呈するネコから初めて分離された. このウイルスは, ヒ卜のエイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルスと, 多くの共通する性質をもっており, レトロウイルス科レンチウイルス属に分類されている. FIVの発見以来多くの研究者が, 臨床的, 生物学的, そして遺伝学的側面からこのウイルスの研究を精力的に進めている. 本総説では, 我々と他のグループの最新の結果を踏まえ, FIVの性質を, 形態学的, 生化学的および生物学的にまとめた. さらにネコにおけるFIVの感染を, 免疫学的側面および臨床的側面から概括した.
  • 林 永昌, 西村 亮平, 野崎 一敏, 佐々木 伸雄, 後藤 直彰, 廉沢 剛, 伊達 宗宏, 竹内 啓
    1993 年 55 巻 4 号 p. 527-531
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    膝蓋靭帯中央部に欠損を作製した雄のウサギ80羽に対し, それぞれ0(対照群), 2, 10, 50 gauss(G)の磁場強度(周波数10 Hz, パルス幅25μsec)で連日6時間刺激した. 刺激後1, 2, 3, 4週目に各群ごとに欠損部の血流量の測定, コラーゲン量の測定, コラーゲン分子種の同定および電子顕微鏡による組織学的検索を行った. その結果, 50G群では血流量が2週後以降に他群より有意に高く, 10G群も有意な高値を示したが, 2G群は対照群と同様であった. 欠損部のコラーゲン量は, PEMFs群ではいずれも対照群より有意に高値を示し, またその増加の程度は磁場強度の強さに比例した. 一方, 電顕所見では, 50G群の2週後における線維芽細胞内にきわめて発達した粗面小胞体が認められ, コラーゲン分泌機能が他群よりも早期に活発化するものと思われた. 以上の結果から, PEMFs刺激により靭帯損傷部位の血流量が増加し, そこに出現する線維芽細胞が増殖するとともに, コラーゲン産生量も変動電磁場の直接刺激により増加し, これらが修復機転を促進するものと考えられた.
  • 野中 哲, 新井 敏郎, 佐々木 稔, 大木 与志雄
    1993 年 55 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    KKおよびC57BLマウスの新生仔に4mg/gのアスパラギン酸ナトリウム(MSA)を皮下投与した. 無処置の動物を対照群として用いた. 体重, 尿糖, 血糖値, 血中インスリン値, FFA値および肝酵素活性の測定を行った. KK, C57BLマウス共にMSA投与群では対照群に比べ顕著な肥満傾向を示した.0週齢の対照群のKKマウスのインスリン値は平均73.6μU/mlでC57BLマウスに比べ4倍以上高かった. KKマウスの肝グルコキナーゼ(GK)活性はC57BLマウスに比べ有意に低く, フルクトース-1, 6-ジホスファターゼ(FBP), アセチルCoAカルボキシラーゼ(CBX)活性は逆に高かった. MSA投与群ではKK, C57BLマウスともインスリン値は対照群の2~3倍に上昇した. C57BLマウスではこれに伴いGK, CBX活性が上昇し, 肥満がより亢進したが, KKマウスではGK活性は増加せずCBX活性はむしろ低下し, FBP活性だけが有意に増加した. この結果, KKマウスでは全例で尿糖の発現が見られ, 血糖値, FFA値が著しく上昇した.
  • 杉山 文博, 深水 昭吉, 梶原 典子, 上原 小百合, 杉山 芳宏, 村上 和雄, 赤堀 文昭, 八神 健一
    1993 年 55 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    血圧調節に必要な機能を持つ酵素レニンは, おもに腎臓で合成されている.我々はラットレニンプロモーターの特質を明らかにするため, ラットレニン遺伝子の上流238bpの推定制御領域にクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)を連接させたレポーター遺伝子を構築し, このCAT融合遺伝子をin vitroトランスフェクション法で培養細胞ヘ導入し, またマイクロインジェクション法でマウスの受精卵へ導入しトランスジェニック(Tg)マウスを作成して, そのプロモーター活性を測定した. トランスフェクション解析においてCAT活性は胎児性腎臓293細胞で発現したが, 子宮頸癌由来のHeLa細胞では発現せず, ラットレニンの推定プロモーター領域が細胞依存的発現様式において転写を支配していることが示された. そこで同じ配列がマウスにおいてCAT遺伝子の発現における転写を支配する能力があるか検討するため, 作成した7匹のトランスジェニックマウスを解析した. しかしながら, 導入した外来遺伝子は, 検査したどのTgマウスの腎臓においても発現が見られなかった. これらより, 発育するマウス個体においてラットレニンプロモーター活性を発現させるには238-bpのプロモーター領域にさらに追加しなくてはならない調節領域が必要である可能性が示唆された.
  • 大石 明広, 坂本 紘, 清水 亮佑, 大橋 文人, 竹内 啓
    1993 年 55 巻 4 号 p. 543-548
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌの赤血球産生のホメオスタシス維持に必要な機能性腎組織量を調べる目的で, 外科的に作製した1/2および1/4腎犬における瀉血刺激後のErythropoietin (EPO)産生反応について比較検討した. その結果, 腎組織量の減少によりEPO産生量も減少し, 貧血の回復遅延が認められた. 腎組織量を減少させた直後の貧血進行時, 血漿EPO値はほぼ組織量に比例して変動し, この傾向は1/2腎犬群の貧血回復時にも維持されていた. 従って, 機能性腎組織量1/2は赤血球産生のホメオスタシスを維持するに足るEPO産生に十分寄与するものと考えられる. しかしながら, 1/4腎犬群においては, 貧血回復時に血漿EPO値の急激な低下傾向を認め, 貧血の回復が極めて悪い状況となった. よって, 1/4の機能性腎組織量では赤血球産生のホメオスタシス維持は不可能と思われる. 以上のことから, 機能性腎組織量の減少は, 尿産生に関わる腎機能の維持に影響を欠くとしても, EPO産生低下を介して赤血球産生に強い影響をもたらすことが明らかとなった.
  • 佐々木 宣哉, 林 正信, 青山 史朗, 山下 匡, 三好 一郎, 笠井 憲雪, 波岡 茂郎
    1993 年 55 巻 4 号 p. 549-554
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ラウス肉腫ウイルスのLTRをプロモーター/エンハンサーとして使用し, マウス肝炎ウイルス(MHV)のヌクレオキャプシドタンパク質mRNAに対するアンチセンスRNAを発現するトランスジェニックマウスを作製した. 作製された5匹のトランスジェニックマウスの内4匹で導入された遺伝子が子孫に伝達されることが示された. また, MHVの標的器官である肝臓や脳を含む各種臓器においてアンチセンスRNAの発現が検出された. 確立された2系統のトランスジェニックマウスの内1系統で, 通常のマウスと比較してMHVの致死的感染に対して抵抗性が示された. これらの結果はウイルス遺伝子に対するアンチセンスRNAの in vivoでの発現がウイルス感染に対して防御的に働くことを示した.
  • ギアコボニ ガブリエラ, 伊藤 喜久冶, 平山 和宏, 高橋 英司, 光岡 知足
    1993 年 55 巻 4 号 p. 555-559
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    3地域, 6ヶ所の牧場の仔牛34頭および成牛60頭, 合計94頭の直腸内容物よりCampylobacterの検出を試みた. その結果, 生後1年以下の仔牛の97.1%, 1年以上の成牛の46.7%からCampylobacterが検出された. 仔牛では検出率が牧場ごとに大きな違いはみられなかったが, 1年以上の成牛では牧場により検出率が異なった. 分離される菌種は, 仔牛ではC. jejuniが61.8%の個体より分離され, 最優勢菌種であった. C. hyointestinalisとC. fetus subsp. fetusは共に26.5%の個体から分離された. これらの3菌種が成牛からはそれぞれ13.3%, 15.7%, 11.7%と同程度の検出率であったが, いずれも仔牛より低い検出率であった. この他, C. coli, C. lari, C. fetus subsp. venerialis, C. fecalisならびに未同定株が仔牛, 成牛から分離されたが, 低い検出率であった. これらの結果から, 仔牛の腸内にはきわめて容易にCampylobacterが定着することが明らかとなった.
  • 鈴木 一由, 広瀬 昶, 外尾 亮治, 竹村 直行, 本好 茂一
    1993 年 55 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    泌乳期間中に血液量と血漿の増加が起こることが知られている. 泌乳期間中の血液量の増加が血液を構成する成分の増加を伴うものなのか, それとも主に水による希釈によるものかを調べた. ラットを用いて, 分娩日を泌乳0日とし, 分娩時に強制離乳した対照群と保育仔数を12匹にそろえた泌乳群の血漿浸透圧を泌乳3, 5, 7, 10, 13および18日目に比較した. その結果, 泌乳群の血漿浸透圧は泌乳5および10日目以降において対照群よりも有意に低かった. 電解質として浸透圧に寄与する血清中のNa+濃度も同様な成績が得られた. 泌乳群の総血漿蛋白質の濃度は泌乳3, 10および18日目に対照群よりも有意に低かった. 泌乳量は10日目まで増加し, 10日目以降では18g/12hrとなってほぼ安定した. したがってラットでは, 泌乳量が増加して安定する泌乳10日目頃からは, 血漿が希釈されて浸透圧の低下した状態が維持されるものと推察された. また, ヘマトクリット値も泌乳5日目を除いて, 泌乳群では対照群よりも有意に低かったので, ラットの泌乳期間中, 少なくとも泌乳量の多い時期においては血球成分の生成があるとしても, 血漿量はそれ以上の割合で増加していることが示唆された.
  • 福田 俊, 飯田 冶三
    1993 年 55 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    雌ビーグル犬の妊娠および授乳期間における骨代謝の変化を骨形態計測法および骨に関連した血清成分の測定によって検索した. 1歳8ヶ月齢から4歳7ヶ月齢までの繰り返し観察した1例を含む延べ8頭を用いた. 骨の動的指標を得る骨2重標識のために, 交配直後, 分娩直後, 離乳直前に塩酸テトラサイクリンまたはカルセインのような蛍光色素を全頭に7日間隔でそれぞれ2回ずつ投与し, 離乳時に腸骨を生検した. 腸骨の非脱灰骨組織標本の骨梁骨エリアの形態計測学的分析を半自動画像解析装置を用いて行った. 骨に関連した血清生化学的指標の副甲状腺ホルモン, カルシトニン, カルシウム, リン, アルカリフォスファターゼ活性値の測定を経時的に行った. 骨形態計測の結果, 同年齢の非妊娠犬の値に比べて類骨および石灰化速度は有意に高かった. 経時的に測定した石灰化速度は交配時に比べて授乳後に増加し, 分娩前にはさらに増加していた. 単位骨量, 平均骨梁幅, 骨形成率, 石灰化ずれ時間値には有意な差が認められなかった. 組織学的所見では, 妊娠後期から授乳期間に蓄積した類骨がみられた. 全骨形態計測値と母犬の年齢や仔犬の数に有意な相関が認められた. 血清成分値の変化は認められなかった. 以上の結果, 犬では骨ミネラルの減少は妊娠後期から授乳期間の骨代謝のhigh turnoverによって起こり, そして胎仔の石灰化や泌乳だけでなく母犬の年齢や仔犬の数に関与することが示唆された.
  • 佐藤 真澄, 神尾 次彦, 河津 信一郎, 谷口 稔明, 南 哲郎, 藤崎 幸蔵
    1993 年 55 巻 4 号 p. 571-574
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    子牛3頭にTheileria sergenti感染フタトゲチマダニの若ダニを付着させた後8日, 10日目にそれらの牛について病理組織学的に検索を行った. ダニ付着部近接リンパ節, 肝臓, 脾臓の巨大化した細胞は, 径50~200ミクロンの大きさで, 核, 細胞とも著しく拡大し, 電顕的には, 核の複雑な弯曲と, クロマチンに富み, 細胞質内には多くの空胞が認められた. それらの細胞質内には, 径1~7ミクロンの大きさで不整形, 顆粒状を呈する虫体が観察された. これらの虫体は, 酵素抗体染色により特異的に反応し, メロゾイトを形成する前のステージであることから, シゾントと考えられた.
  • 阪野 哲也, 柴田 勲, 鮫ヶ井 靖雄, 種田 貴至, 岡田 宗典, 入澤 俊夫, 佐藤 静夫
    1993 年 55 巻 4 号 p. 575-579
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    オーエスキー病ウイルス(ADV)と Actinobacillus pleuropneumoniae 1型の単独感染と複合感染による病状を, 4ヵ月齢のPrimary Specific-Pathogen-Free豚での実験感染により比較した. 鼻腔内にADV YS-81株を106.9 TCID50/頭, 又はA. plleuropneumoniae 1型ZF-867株を103.1又は105.1 CFU/頭をそれぞれ単独接種, あるいはADV接種1週後にA. pleuropneumoniae を複合接種した. ADVの単独接種群では接種後数日間, オーエスキー病(AD)症状がみられたが肺病変は観察されず, またA. pleuropneumoniae 103.1 CFU/頭の単独接種群では臨床症状及び肺病変は観察されなかった. しかし, 両者の複合接種群では全頭ともAD症状に続いてA. pleuropneumoniae による症状が持続し, 3頭中1頭が死亡し, いずれも中度~重度の胸膜肺炎を起こした. A. pleuropneumoniae 105.1 CFU/頭の単独接種群では2頭中1頭が急性経過で死亡し, 残りの1頭も軽度な発症がみられ, またADVとの複合感染群では症状がより重度であり, 両群の全頭に中度~重度な胸膜肺炎が認められた. これらの成績から, ADV感染豚群では A. pleuropneumoniae の感染による病状が重篤化することが確認された.
  • 森 隆, 永田 和哉, 石田 卓夫, 佐々木 富雄, 濱田 香理, 仁礼 久貴, 大網 弘, 桐野 高明
    1993 年 55 巻 4 号 p. 581-586
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    実験的クモ膜下出血(SAH)後に起こる脳血管攣縮(VS)の病理発生と, 免疫学的反応の関与を明らかにするために, 犬のSAHモデルを用いて, Streptomyces tsukubaensisから分離された, 細胞性免疫抑制剤, FK-506のVSに対する効果を調べた. 実験的SAH後の無処置対照群の脳底動脈では, 典型的なVSを認めた. しかし, そのVSは, FK-506投与群及びステロイド剤とFK-506を併用投与した群のいずれにおいても, 無処置群との間で攣縮血管の収縮率に有意差を認めなかった. 免疫組織化学的並びに病理形態学的検索では, 無処置群の脳底動脈周囲の軽微なリンパ球浸潤以外に, FK-506投与群と無処置対照群との間に, 病変の性質に差を認めなかった. 病理組織学的に, クモ膜下腔の攣縮血管周囲に, FK-506によって抑制されない好中球の明らかな炎症反応を認めた. さらに, 攣縮血管壁の様々な収縮性あるいは退行性変化も認めた. 免疫組織化学的に, 攣縮血管の内膜, 中膜側及び脳幹実質内の毛細血管にIgG, IgM及びC3の沈着を認めた. これらの沈着はVSにおける血管透過性充進によるものと思われた. 以上の様に, 細胞性免疫抑制剤, FK-506投与により, 血管攣縮あるいはリンパ球浸潤以外の病理学的変化が抑制されなかったことより, SAH後のVSの発生に細胞性免疫の関与が乏しいものと考えられた.
  • 高橋 真人, 小俣 吉孝, 及川 弘, Claveria Florencia, 五十嵐 郁男, 齋藤 篤志, 鈴木 直義
    1993 年 55 巻 4 号 p. 587-590
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Isospora felis(I. felis)実験マウスにおけるBabesia microti(B. microti)感染防御能について検討した. I. felis感染後28日目にB. microtiが接種されたマウスでは,ほとんど虫血症が観察されず, B. microtiに対し強い抵抗性が認められた. これらのマウスでは, B. microti接種前においては, 抗B. microti抗体は検出されなかった. I. felis感染マウス脾細胞が移入された個体では, B. microti接種後に出現した虫血症は, 未感染マウス脾細胞が移入された個体に比較し, きわめて軽微であった. 一方, I. felis感染マウスのうち, 抗L3T4モノクロナール抗体投与群では, B. microti接種後, 顕著な虫血症が観察された. これらの事から, I. felis感染によって惹起されるB. microti感染抵抗性には, 細胞性免疫, 特にL3T4+細胞の関与が示唆された.
  • 上村 利也, 坂本 紘, 三角 一浩, 平川 篤, 清水 亮佑, 阿久沢 正夫, 宮原 健吉
    1993 年 55 巻 4 号 p. 591-594
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬の心筋厚の正常値を知るために雑種犬の1歳齢50頭の左室心筋厚を測定し, 併せて体重, 心重量, 血圧との関係も同時に検討した. なお, 心筋厚の平均は体重8-12kg の範囲に限定して算出した. その結果, 左室前壁で7.1±1.2mm, 側壁7.1±1.3mm, 後壁6.3±1.6mm, 心室中隔10.6±1.8mm, 右室前壁3.4±1.0mmであった. 心筋厚と心重量とは比較的疎な正の相関を, 体重との間では部位によって疎な正の相関を示した. また, 血圧と心筋厚との間には有意な正の相関は認められなかったが, 今後加齢による影響を検討する必要があると考えられた.
  • 度会 雅久, 沢田 拓士, 中込 美穂, 天尾 弘実, 吉田 孝冶, 高橋 勇
    1993 年 55 巻 4 号 p. 595-600
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    現行豚丹毒生ワクチンの製造用株である血清型1aのアクリフラビン耐性弱毒豚丹毒菌小金井65-0.15株(Kg-1a株)とその派生株である血清型2のKg-2株の病原学的および免疫学的性状等を比較した. 生化学的性状検査では, 両菌株の糖分解能に若干の差異が認められた. また, アクリフラビンに対してはKg-2株がKg-1a株より高い耐性度を示した. マウスに対する病原性はKg-2株がKg-1a株より強く, ddY系のマウスにおいて両菌株間には関節炎(P<0.05)および全身症状(P<0.01)で有意差が認められた. また, 両菌株に対するマウスの抵抗性は, C3H/He系がddY, A/J系よりも強かった. これら菌株の3種の培養分画(全培養菌液: WC, 培養濾液: CF, 菌体: KC)の感染防御活性は, どの分画についてもKg-2株がKg-1a株より高かった. また, これらの分画の中で最も感染防御活性が高かったのはKg-2株のCFであった. WCの熱および酵素処理による影響は両菌株の間で差はみられず, 56℃または100℃の熱処理およびトリプシン処理によって両菌株とも感染防御活性が失われた. したがって, 感染防御抗原の主体は蛋白質であると思われた. 以上の成績より, 両弱毒菌株は種々の性状において差異があることが明らかになった.
  • 二井 愛介, 藤原 公策, 後藤 直彰
    1993 年 55 巻 4 号 p. 601-606
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    肝の腫大を惹起し, かつ肝細胞蛋白合成促進作用を有する化合物がラットTyzzer病に及ぼす効果を, 血漿生化学的および病理組織学的に検索した. 非感染ラットに肝の代謝酵素誘導剤であるフェノバルビタールとメチルコラントレン, あるいは肝細胞にマイトジェンとして作用する硝酸鉛とエチレンジブロミドを投与すると, これらの化合物を投与しない非感染ラットと比べて肝重量は増加した. 化合物を投与してTyzzer菌を感染させたラットでは, 化合物を投与しない感染ラットと較べ, 菌による肝壊死病変の程度の指標としての血漿中GOTおよびGPTが高値を示し, 組織学的にはより大きな肝壊死像あるいは壊死巣周囲肝細胞内により多くの菌を保有している像が観察された. これらの成績より, Tyzzer菌の増殖が肝の腫大過程における肝細胞代謝の変化により増強されたことが示唆され, 肝細胞内で合成された蛋白質がTyzzer菌増殖に大きく関与している可能性が示された.
  • 岡野 昇三, 多川 政弘, 原 康, 江島 博康, 本好 茂一, 浦川 紀元, 古川 清憲, 恩田 昌彦, 小川 龍
    1993 年 55 巻 4 号 p. 607-611
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    7頭の健康なビーグル犬に対し, ペントバルビタールナトリウム全身麻酔下で致死量のエンドトキシン(3mg/kg)を静脈内投与し, エンドトキシンショックモデルを作製し, その網内系機能に対する影響について検討した. 血中エンドトキシン濃度は, 投与直後から急激に高い値を示したが, エンドトキシン投与後360分値においてもいぜん高値(1,051pg/ml)を示した. 網内系貪食能の指標であるlipid emulsion testおよび肝臓のエネルギーチャージを示す動脈ケトン体比は, エンドトキシン投与後低下し, 360分まで回復しなかった. また, オプソニンタンパクの一つであるフィブロネクチンは, エンドトキシン投与後低下傾向を示し, エンドトキシン投与後180および360分値においてエンドトキシン投与前値に対して有意に(P<0.01)低値を示した. これらのことよりエンドトキシンショック時には, 網内系機能が低下することが示唆された.
  • 是松 潔, 高木 英守, 河部 崇司, 中尾 敏彦, 森好 政晴, 河田 啓一郎
    1993 年 55 巻 4 号 p. 613-616
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    乳牛の分娩後子宮修復遅延例に対する灸治療の効果を明らかにする目的で, 分娩後21-35日の間に2回の生殖器検査を行い子宮修復が遅延していると診断された48頭を用いて臨床試験を行った. このうち16頭を灸群, 17頭をPGF2α群, 15頭をアンピシリン群とした. 灸群には卵巣圧痛点, 子宮圧痛点の計12ヵ所の経穴に3日間連続して灸を行った. PGF2α群にはPGF2α25 mgを1回臀部筋肉内に注射した. アンピシリン群にはアンピシリン500 mgを1回子宮内に注入した. 各治療は2回目の検査直後より行った. 各治療群の子宮修復に及ぼす効果を, 子宮頸の幅, および妊角と不妊角の幅の差の減少程度で比較した場合は, 各群の間に差は認められなかったが, 子宮頸管粘液性状異常例の出現率, 細菌検出率の減少では灸群は他の2群よりも効果が劣る傾向がみられた. 乳汁中のProgesterone濃度の変動から卵巣静止と判定された例のうち, 治療後4週間以内に卵巣機能の回復がみられたものの割合は, 灸群が最高であった. 治療後の繁殖成績を分娩後初回AIまでの日数, 初回AI受胎率, 分娩後受胎までの日数で比較した場合灸群とPGF2α群でほぼ同等の成績であったが, アンピシリン群は両者より劣る傾向があった.
  • Elias Bella, Kruger Monika, Gergly Peter, Voets Rien, Rafai Pal
    1993 年 55 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ハンガリーとオランダの各3豚群における毒素原性Bordetella bronchisepticaとPasteurella multocidaの動力学及び血中と鼻汁中の特異抗体量を調べた. 1, 2回分娩の若種雌豚(YS), 4回以上分娩の老齢種雌豚(OS)とそれらの子豚を研究対象とした. オランダの豚はB. bronchisepticaとP. multocida感染頻度がハンガリーの豚より低いのが特徴であった. オランダの豚とその子豚はP. multocidaの感染率がB. bronchisepticaのそれより高かった. ハンガリーではその逆であった. B. bronchisepticaの感染は若齢, 老齢両種雌豚の子豚の3-4週齢に始まり, 続いて, 5週齢(YS)と6週齢(OS)にP. multocidaが出現した. ハンガリーの子豚では, B. bronchisepticaの感染は1週齢(YS)と3週齢(OS)に, P. multocidaの感染は3週齢(YS)と5週齢(OS)に認められた. 血清学的検査では, B. bronchisepticaに対する抗体価はオランダの豚がハンガリーの豚より高かった. ELISAではオランダの豚の血清IgAとIgG量及び鼻汁中sIgA, IgA, IgG量はハンガリーの豚より3週齢と4週齢のそれぞれにおいて有意に高かった.
  • 片岡 康, 杉本 千尋, 中澤 宗生, 両角 徹雄, 柏崎 守
    1993 年 55 巻 4 号 p. 623-626
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1987年~1991年にかけて, 我が国におけるStreptococcus suis感染症の疫学調査を行った. 合計380株のS. suisが, 豚, 牛および馬から分離され, これらの分離株の血清型別検査を行った結果, 318株(83.7%)がS. suis type 1~22までのいずれかの血清型に血清型別できた. その内訳は, 2型が最も多く28.2%, 次いで7型(10.8%), 1/2型(8.4%), 3型(7.4%), 4型(5.5%)であった. 牛から分離されたS. suisは合計20株で, 9型が8株, 10型が1株, 18型が5株, 20型が1株で, 残りの5株は型別不能であった. また, 肺炎を呈した競走馬からS. suisが1株分離されたが, 血清型別不能であった. 分離株の多くは髄膜炎由来(38.2%)で, 次いで肺炎由来(33.4%), 心内膜炎由来(9.2%)であった. S. suis 380株をAPI STREP 20を用いて同定したところ, 333株がS. suisとして同定され, 同定率は87.6%であった.
  • 木村 誠, 荒木 誠一, 中井 豊次, 久米 勝巳
    1993 年 55 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    モルモットおよび豚のActinobacillus pleuropneumoniae(Apn)感染症に対するApn ワクチンとDihydroheptaprenol(DHP)との併用効果を検討した. モルモットにApnワクチンを筋肉内接種後2週目にDHP 20mg/kgを筋肉内投与し, その24時間後にApnで腹腔内攻撃した. 補体結合(CF)抗体価が8倍のワクチン単独投与群では全ての動物が死亡したのに対して, DHP併用群では30%の生残率を示した. CF抗体価8~16倍の動物の生残率は, ワクチン単独群が33%に対してDHP併用群は63%であり, ワクチン単独群と比較して有意に高い生残率であった(P<0.05). 豚にApnワクチンを筋肉内接種後14または20日目に体重kg当たり1mg, 2.5mgあるいは5mgのDHPを筋肉内投与し, その24時間後にApnで気管内攻撃した. CF抗体価8倍のワクチン単独群およびDHP 1mg併用群では, 全ての動物が死亡したが, DHP2.5および5mg併用群の生残率は20~40%であった. CF抗体価8~16倍の動物の生存率は, ワクチン単独群で37%, DHP併用群で47~73%であった. 特に, DHP 5mg併用群の生残率73%は, ワクチン単独群と比較して有意に高い値であった(P<0.05). ApnワクチンとDHP併用投与による感染抵抗性の増強機序は, DHPによって増数・活性化された食細胞が, Apnワクチン接種によって産生された抗体などのオプソニン関与により攻撃菌に対する貪食・殺菌作用を促進するものと推測される.
  • 河上 栄一, 筒井 敏彦, 清水 幹子, 織間 博光, 蒔苗 暢子, 矢島 佳絵子, 小笠 晃
    1993 年 55 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    本学動物病院に1989年から1990年の間に来院し, 前立腺肥大症と診断された4-15歳の犬25頭のうち7頭に対して, anti-androgen製剤である酢酸クロルマジノン(CMA) 2mg/kg/dayを3または4週間連日経口投与した. その投与開始前後にX線および超音波画像診断装置により前立腺の大きさを計測して, その容積を算出した. また, これらの犬のうち3頭については, 精液性状検査も実施した. 前立腺肥大症の犬全頭および5-7歳の正常犬4頭の末梢血を採取し, 血漿中LH, 4-androstenedione, 5α-dihydrotestosterone, testosteroneおよびestradiol-17βの濃度を測定した. 血尿や排便・排尿困難などの臨床症状は, CMA投与開始後10日以内に消失した. CMA投与終了後の前立腺容積の平均値(±S.E.)は, 投与前の39±4%に減少した. 治療前の前立腺肥大症の犬の血漿中testosterone濃度は, 正常犬のそれに比較して有意に低値を示した(P<0.01). CMA投与終了後にも採血を実施した6頭の各種ホルモンの血漿中濃度は, LHを除き投与前の値に比較して, いずれも有意に低下した(P<0.05). また, 投与終了後の精子数と精子活力は減少し, 精子奇形率は増加した. 以上の成績から, 前立腺肥大症の犬に対するCMAの経口投与により精巣機能は抑制されてしまうが, 前立腺容積は著しく減少し, 短期間で臨床症状が改善されることが判明した. しかし, 治療後約6ヵ月で再発する例も認められた.
  • 内田 和幸, 奥田 龍太郎, 山口 良二, 立山 晉, 中山 裕之, 後藤 直彰
    1993 年 55 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌの老人斑と神経細胞, 神経突起, 神経膠細胞, 及び毛細血管との関係について, ブアン固定した大脳の連続パラフィン切片を用い二重免疫染色により検討した. amyloid plaqueは常に毛細血管を含んでおり, しばしば数本の毛細血管周囲に沈着したβ蛋白が融合し老人斑様の構造を形成する像が認められた. これらの老人斑の周囲には腫脹した神経突起が稀に認められた. なお, amyloid plaqueと神経細胞及び膠細胞との関連は不明瞭であった. 一方diffuse plaqueは頻繁に神経細胞の周囲に形成されていた. また正常あるいは不規則に配列する神経突起がdiffuse plaque内やその周囲に認められ, 特に海馬にdiffuse plaqueが認められた症例の海馬で明瞭に確認された. なおdiffuse plaqueと毛細血管及び膠細胞との関係は不明瞭であった. 以上の観察結果より, イヌのamyloid plaqueは毛細血管のアミロイド変性に関連して形成され, 一方diffuse plaque形成には神経細胞と神経突起の役割が重要である事が示唆された.
  • 上村 俊一, 扇 勉, 高橋 雅信, 塚本 達
    1993 年 55 巻 4 号 p. 643-647
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    分娩後100日以内に受胎した乳牛40頭について, 卵巣活動の回復と子宮の修復状況を超音波断層装置により毎週2回人工授精時まで調査した. まず, 生体内での超音波診断と摘出後の卵巣所見の比較では, 直径が10-14mmおよび&ge;15mmの卵胞数に両者間で0.71と0.85, また最大卵胞の直径では0.99の相関係数が得られた. 分娩後の卵胞発育では, 初回排卵前に直径&ge;10mmのdominant follicle (DF)が1個出現した牛が25頭, 2個が10頭, 3個が4頭および4個が1頭で平均1.5個であった. 第2回および第3回排卵前のDF数は平均2.1および2.2個と増加した. 受胎までの平均DF数と排卵数は7.2個と3.6回で, 分娩後受胎までの間隔74.0日との間に高い相関が認められた. 超音波断層像による黄体の推定体積は, 血漿中progesterone濃度の推移と類似し, 初回排卵後の体積と濃度は第2回および第3回排卵後の体積や濃度より小さかった. 二重の輪郭線に囲まれた子宮断層像のうち, 内側の子宮内膜の断面積は分娩後41.5日で最小となり, この時点で子宮修復の完了が推察された. 超音波断層装置による卵巣の観察から, 分娩後初回排卵前のDF数や排卵後の黄体の体積は第2回および第3回排卵前のDF数や排卵後の黄体より小さいことが明らかとなった.
  • 中村 政幸, 長峰 範行, 鈴木 祥子, 乗松 真理, 大石 弘司, 木島 まゆみ, 田村 豊, 佐藤 静夫
    1993 年 55 巻 4 号 p. 649-653
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    S. Enteritidis HY-1株からリファンピシン耐性株を作出し, 本株を用いて鶏における長期排菌を実験的に証明した. ふ化後24時間以内の35羽のSPFひなを, ふ化後12時間以内にEnteritidisを4×102 CFU経口感染させたひなと同居させた. 生残耐過鶏25羽について, 7週齢目から, 雄鶏では21週齢まで, 雌鶏では28週齢までゲージ飼育し, 1あるいは2週間隔で盲腸便からの菌分離を行った. その結果, 雄鶏では21週齢時まで, 雌鶏では28週齢時まで, 間欠的ではあるが本菌が分離された. 4日齢, 30日齢鶏や産卵鶏における本菌の経口感染では, 排菌は1~2ヵ月であったことを考えると, 本実験のようにふ化24時間以内に同居感染させることによって, 介卵感染でも同様であろうが, 少なくとも28週齢時まで排菌を証明できたことから, 本菌感染症を撲滅するためには(1)介卵感染あるいはふ化直後の同居感染を防ぐこと, (2)本菌感染鶏摘発のために菌分離を行う場合には繰り返し実施することが必要と考えられた.
  • 本多 英一, 岡田 潤子, 岡崎 克則, 甲野 雄次
    1993 年 55 巻 4 号 p. 655-656
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚伝染性胃腸炎(TGE)ウイルスTO-163株に対するモノクローナル抗体(MAb)のうちS蛋白を認識し中和活性を持つ5つのMAbがIB-RS-2細胞でのTGEウイルスによる細胞融合を阻止した. このことから中和エピトープは細胞融合活性をも持つと考えられた. 細胞融合の出現のKineticsを調べた結果, 感染細胞の培地を低pH(5.7)に変えた後2時間から6時間の間に起こることがわかった.
  • 趙 徳明, 山口 良二, 立山 晉, 山崎 ゆみ, 小川 博之
    1993 年 55 巻 4 号 p. 657-659
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    3歳の雌柴犬に腎臓原発のリンパ肉腫を認めた. 剖検では, 腎臓は黄色調を示して著しく腫大し, 膵臓, 心臓, 卵巣, 輸卵管, 消化管に腫瘍の転移巣が認められた. 組織学的には, 腎臓の皮質, 髄質両者に腫瘍細胞が瀰慢性に増殖し, 糸球体は萎縮し, ほとんどの尿細管は壊死・消失していた. 腫瘍細胞は小型~中型で, 細胞質に乏しく, 核は円形でクロマチンに富んでいた. 腸間膜, 気管支その他のリンパ節, 脾臓, 骨髄などには著変は認められなかった.
  • 高木 道浩, 星 敦夫, 太田 千佳子, 白幡 敏一, 後藤 仁, 浦沢 价子, 谷口 孝喜, 浦沢 正三
    1993 年 55 巻 4 号 p. 661-663
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    一軽種馬牧場での3型ロタウイルスによる幼駒下痢症の発生で, これまでの当牧場の常在ウイルスとは異なるRNA電気泳動像を示す小流行ウイルス株(CH-3)を分離した. このCH-3株は既知のロタウイルス抗体とほとんど反応しなかったが, 遺伝子レベルでは馬由来のロタウイルスの特徴を有し, 3型ウイルスの流行時に, 一時的に本集団に侵入したが, 伝播力の差などにより, 馬の間に定着できなかったものと推察された.
  • 品川 森一, 村松 康和, 小野寺 朝子, 松井 高峯, 堀内 基広, 石黒 直隆, 中川 迪夫
    1993 年 55 巻 4 号 p. 665-667
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    24ヶ月齢で出産した2頭のコリデールヒツジが29及び30ヶ月齢で相次いで運動失調を示し起立不能に陥った. 1例目は原因不明のまま死亡し, 2例目は病理組織学的及び免疫化学的にスクレイピーと診断された. これらの子ヒツジ4頭の内, 3頭が10, 14, 及び19ヶ月齢でスクレイピーを発症した. 親子共に脱毛はなく, そう痒症状を欠いていた. 異常に短い潜伏期及びそう痒症状の欠落について考察する.
  • 中久 喜正
    1993 年 55 巻 4 号 p. 669-671
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    「哺乳類の肺の気管支分岐の基本型」(中久喜, 1975, 1980)に基づきアシカ(Zalophus californianus)の肺の気管支分岐と肺葉の関係について調べた. アシカの肺の気管分岐部は一般哺乳類の肺に比較してかなり前方である. このことは哺乳類の肺の気管分岐部は必ずしも一定でないことを示す重要な証拠である. アシカの右肺は前葉, 中葉, 後葉および副葉から成り, 左肺は発達した中葉と後葉から成る.
  • 山田 宜永, Moralejo D., 土屋 公幸, 安居院 高志, 松本 耕三
    1993 年 55 巻 4 号 p. 673-675
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    野生ラット(Rattus norvegicus)における生化学マーカー多型の調査は広い遺伝的変異を持つ実験用ラット群の確立を効率良く進めると考えられる. 大分市で捕獲された9匹の野生ラットにおける21個の生化学マーカーを電気泳動法により調査した. 6匹のラットに存在する11個のマーカー蛋白はヘテロ型であった. さらに我々は実験用ラットにおいて稀有な変異であるES-4の多型を高い頻度で野生ラット中に発見した.
  • 大室 賢二, 岡田 幸助, 佐藤 亨, 村上 賢二, 佐竹 茂, 朝比奈 政利, 沼宮内 茂, 大島 寛ー
    1993 年 55 巻 4 号 p. 677-680
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    サラブレッド種, 去勢雄, 19歳の芦毛馬で尾根部, 肝門周囲の皮膚および全身の結合組織に認められた黒色腫について組織学的, 電子顕微鏡的観察を行った. 組織学的に腫瘍は高度のメラニン色素沈着が特徴的な成熟型のメラニン性黒色腫であった. 電子顕微鏡的には腫瘍細胞内にはステージIVメラノソーム, もしくは成熟した顆粒状および層状メラノソームが多数認められた. 成熟メラノソームの大部分は互いに融合して, 内部のメラニン集合体に似た形を呈する複合メラノソームを形成した. 次に内部のメラニン集合体は分解され, 複合メラノソームは球状となり, 自己貪食胞に変化した.
  • 金子 雅史, 中山 博, 五十嵐 章之, 廣瀬 昶
    1993 年 55 巻 4 号 p. 681-682
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    妊娠末期におけるビーグル犬の血液性状と胎仔数の関係について検討した. その結果, 妊娠末期における赤血球数, ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値と胎仔数の間に, 有意な負の相関関係が認められた.
  • 小川 絵里, 二宮 博義, 山崎 君江
    1993 年 55 巻 4 号 p. 683-685
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    チャイニーズハムスターの老化精巣を核磁気共鳴法(NMR)で観測した. 老化精巣は間質に浮腫を形成しており, 組織の水のスピン-スピン緩和時間(T2)は若い精巣に比べ有意に延長していた. 若い精巣の静脈を結紮し浮腫を作出すると, T2は老化精巣と同程度に延長した. T1および組織の水分含量は老化による変化を示さなかった. T2は間質の浮腫を反映することから, 精巣の老化による組織学的変化を評価するのに有用な手段と考えられる.
  • 西村 亮平, 金 輝律, 松永 悟, 林 慶, 佐々木 伸雄, 田村 弘, 竹内 啓
    1993 年 55 巻 4 号 p. 687-690
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    実験用豚におけるメデトミジン, アセプロマジン, アザペロン, ドロペリドールおよびミダゾラムの鎮静, 鎮痛/麻酔効果の比較を行った. その結果これらの鎮静剤の中ではメデトミジンが最も強力な鎮静作用を示し, 他の薬剤にはほとんどあるいは全く認められない筋弛緩作用と弱い鎮痛/麻酔作用も得られ, 約60分間にわたり刺激による覚醒反応を最も強力に抑制した.
  • 芹川 慎, 伊藤 俊輔, 八田 忠雄, 草刈 直仁, 仙名 和浩, 佐原 聡, 平棟 孝志, 菊池 直哉, 梁川 良
    1993 年 55 巻 4 号 p. 691-692
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1歳未満, 1歳および2歳の3群のめん羊から3-5ヶ月間隔で4回採血してC. pseudotuberculosis毒素に対するELISA抗体を調査した. 1歳羊と2歳羊の抗体陽性率は4月から7月にかけ著しく上昇していた. 一方, 1歳未満羊では7月に陽性率が逆に著しく減少しており, それは移行抗体の消失によるものと思われた. 1歳羊と2歳羊は4月の採血後に毛刈をされていたことから, 毛刈による創傷が本菌の感染に密接に関与していることが示唆された.
  • 多川 政弘, 岡野 昇三, 林 良博, 草野 健一
    1993 年 55 巻 4 号 p. 693-694
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    42頭のDirofilaria immitis-freeのビーグル犬に100隻ずつのD. immitisの感染幼虫を接種してミルベマイシンオキシムの予防効果について調べた. ミルベマイシンオキシム0.05mg/kgから1.0mg/kgを感染後1ヵ月目に, また0.25mg/kgを感染後1から90日の間に投与したところ, 0.25mg/kg以上のミルベマイシンオキシムを感染後15日から60日の間に投与することによって完全な予防効果が得られた.
  • 岡崎 克則, 本多 英一, 甲野 雄次
    1993 年 55 巻 4 号 p. 695-696
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシヘルペスウイルス1型(BHV-1)呼吸器由来株, 生殖器由来株並びに弱毒生ワクチン株のC57BL乳飲みマウスに対する病原性を比較したところ, 呼吸器由来株の50%致死量はワクチン株のおよそ1,000分の1であった. 生殖器由来株は中程度の病原性を示した. 呼吸器由来株は, マウス脳内で多段階増殖を起こしたが, 他の2株では接種後24時間で脳内ウイルス量が最大に達した後, 時間経過とともに減少あるいは消滅した.
  • 岩田 祐之, 井上 武
    1993 年 55 巻 4 号 p. 697-698
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Phytohemagglutinin-P(PHA)およびconcanavalin A(ConA)による豚リンパ球の幼若化反応を3-(4, 5-dimethylthiazol-2-yl)-2, 5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT) を用いた比色定量法で測定し, 3H-thymidine取り込み法と比較した. 相関係数はPHAで0.70(n=18, P<0.01), ConAで0.82(n=18, p<0.01)であった. また, 至適培養条件は2.0×106 cells/mlのリンパ球をPHA 2.5-10μg/mlもしくはConA 2.5-5.0μg/mlで72時間刺激した場合に得られた.
  • 古林 与志安, 落合 謙爾, 板倉 智敏
    1993 年 55 巻 4 号 p. 699-701
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    72日齢の雌犬が、食欲不振, 発咳, 鼻汁排泄, 下痢便を主とした15日間の臨床経過で死亡した. 病理検索の結果, 本犬には全身性の犬ジステンパーウイルス感染, 並びに肝・胆管系と呼吸器系に限局した犬アデノウイルス(CAV)感染が認められた. とくに胆管壁の水腫性肥厚および肝実質の多発性巣状壊死が, CAV封入体と関連して発現していたことは, CAVが犬伝染性肝炎ウイルスであることを示唆している.
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