抄録
間歇的陽圧換気(IPPV)法は全身麻酔における有用な呼吸管理方法であるが, 循環系を抑制することが知られている. そこでハロセン麻酔下の各群5例の雌馬を用い, 自発呼吸群, 最大吸気圧20 cmH2O(CV20)群および25 cmH2O(CV25)群の3群間における心拍出量の変化を120分間比較検討した. CV20およびCV25群の換気条件において血液ガス分析値は概ね適正範囲内に維持されたが, 各群における心拍出量は経時的な減少傾向を示し, CV20およびCV25群では麻酔開始後105分より麻酔前値の50%以下に減少した. また, CV25群の心拍出量は45, 90および105分においてSV群に対して有意に減少(P<0.05)したが, CV20群ではすべての測定時間において有意な差は認めらなかった. これらのことから, 長時間のIPPVの適応においては心拍出量の減少を改善する必要のあることが示唆された. また, 臨床応用における最大吸気圧は, 炭酸ガス分圧は若干高い値を示したものの心拍出量の減少がCV25群に比べ軽度であったCV20群, つまり最大吸気圧20 cmH2O程度が望ましいと思われた.