抄録
マウス肝炎ウイルス(MHV)のヌクレオキャプシド(N)蛋白質遺伝子に対するアンチセンスRNAあるいはセンスRNAを発現する細胞株におけるMHVの転写や複製について検討した. MHVの転写と複製を制御すると考えられるN蛋白質をコードするmRNA7に対するアンチセンスRNAあるいはセンスRNAを発現する形質転換DBT細胞におけるMHV-JHMの増殖をみると, 両形質転換細胞でのMHV増殖は非転換DBT細胞に比較して, 感染後9時間で95%, 12時間で99%抑制された. 感染後3.5時間目に抽出した感染細胞RNAのNorthern blotting解析によりMHV-RNA合成の抑制が明らかにされた. 以上から, MHV感染初期の段階でmRNA7に対するアンチセンスRNAおよびセンスRNAがウイルス複製を阻害することが示唆された.