抄録
Theileria sergenti福島株に対するモノクローナル抗体(MoAb)を作製し, これらの抗体と千歳株に対するMoAbのパネルを用いたウェスタンブロットより, 日本各地で分離されたT. sergenti株の抗原性状を調べた. これらのMoAbsはピロプラズム主要表面抗原蛋白質である23および32キロダルトン蛋白質(p23およびp32)と強く反応した. 国内分離株17株とMoAb6種との反応パターンは株間で異なっており, T. sergentiの抗原多様性が明らかとなった. しかし, 地域による抗原型の偏りは認められなかった. ピロプラズム表面抗原のp23のN-末端アミノ酸配列分析では新得, 千歳株での間で差異が見られた. p23のN-末端アミノ酸配列はp32のcDNAから予想されたアミノ酸配列中には見出せないことから, p23はp32の断片ではないことが示された. p32のcDNAプローブを用いたサザンブロットの解析ではT. sergenti p32遺伝子の分離株間における遺伝的多様性も示された.