抄録
酵素免疫測定法(ELISA)を用いて, B. gibsoni 感染犬血清中の抗赤血球膜抗体の自己赤血球膜に対する反応性について調べた. 感染血清中の抗赤血球膜抗体は, 未処理(正常)赤血球の表面には結合せず, 酸化(フェニルヒドラジン)及び酵素(ノイラミニダーゼ)処理を施した赤血球の表面にのみ結合すること, 及び精製赤血球膜に結合することが明らかとなった. よって, B. gibsoni 感染症で認められる, 赤血球細胞骨格形成タンパク質に対する抗体は正常赤血球膜タンパク質に結合するが, 赤血球膜貫通露出タンパク質に対する抗体は, 酸化障害またはシアル酸除去を受けた赤血球膜表面糖タンパク質にのみ結合することが推察される. このことは, B. gibsoni 感染症における赤血球結合IgG量の増加及び貧血の機序を明らかにする上で重要である.