抄録
イヌの自然発生骨肉腫から樹立された骨肉腫細胞株を用いてクローニングを試みた. 本細胞株はヌードマウスへの移植によっても原発巣の組織像の特徴をよく維持し, いくつかの細胞成分から成るものと考えられたが, この細胞株から支持細胞層を利用した限界希釈法により6種類の細胞を分離した. 得られたクローン細胞は形態学的にそれぞれ均一の大きさで, 多角形から紡錘形を呈していた. 倍加時間およびアルカリフォスファターゼ活性値はそれぞれ30±1.4時間から54±1.3時間, 0.040±0.001μmol/min/mg protein から2.610±0.435μmo1/min/mg protein の範囲で各細胞によって異なっていた. 得られた6種類の細胞をそれぞれヌードマウスに移植したところ, 各細胞ごとにそれぞれ骨芽細胞型, 軟骨芽細胞型, 線維芽細胞型または未分化細胞型の均一な組織を形成した. これらの結果から今回得られたクローン細胞は骨肉腫組織の多様性に対応する性状の異なった細胞であり, 骨肉腫細胞の分化, 表現形質あるいは新しい治療法の検討に非常に有用な細胞と思われた.