1995 年 57 巻 3 号 p. 395-399
合成黄体ホルモン剤である酢酸クロルマジノン(CMA)を含有するペレット(ジースインプラント)を3~10歳の正常な雄犬4頭を1群として3群にそれぞれ、CMA 5mg/kg,10 mg/kg, および20 mg/kg皮下移植し、その後の前立腺容積、血中CMA, 性ホルモン値および精液性状の変化を調べた. 前立腺容積はCTを用いて計測した. 血中CMAはGC-MS法, LH, testosterone (T)および5α-dihydrotestosterone (DHT)値はradioimmunoassay法で測定した. また、精液は用手法で採取した. ペレットは移植後26週に摘出し、さらにその後22週まで観察を行った. その結果, 前立腺容積は5 mg/kg,10mg/kgおよび20 mg/kg群で移植後14週では, 移植前容積のそれぞれ72±3% (mean±S.E.), 65±3%, 54±8%, 移植後26週ではそれぞれ61±3%, 51±5%, 53±9%にまで縮小した. 血中CMA値は, 10 mgおよび20 mg投与群において, 投与後2週後にピークを示し、その後徐々に低下した. また, ペレット摘出後22週における前立腺容積は74~85%であった. ペレット移植後において血中LH値は5 mg/kgおよび10 mg/kg投与群で上昇傾向が見られ, 血中TおよびDHT値は, いずれの群でもわずかな低下が認められた. また, 精液性状では、10 mg/kgおよび20 mg/kg投与群で精子数の減少, 精子活力の低下が認められ, 精子奇形率は増加した. 以上の成績から, 雄犬にCMAを含有するペレットを10 mg/kg以上皮下移植することにより、精巣機能は低下するものの, 前立腺容積は移植前のほぼ1/2に縮小し, その効果は長期間持続することが判明した.