抄録
ニワトリ胚子生殖腺の始原生殖細胞(PGCs)およびセルトリ細胞における糖鎖の性分化に伴う分布と特性の変化を, 12種類のレクチンをプローブとして用いて光顕レベルで調べた. これらのレクチン結合パターンの特性は精巣の発達に応じてPGCsとセルトリ細胞に観察された. 特に, BPAはPGCsの細胞膜と細胞質に反応した. このBPAの反応性は性未分化期のステージ29から性分化後のステージ36まで続き, ステージ37で完全に消失した. この事から, N-acetyl-D-galactosamine を含む複合糖質のダイナミックな変化が, PGCsの細胞膜と細胞質に生じることが示唆された. 性分化後のステージ36から39において, ConA, WGA, STAおよびRCA-Iの陽性反応がモルトり細胞に発現した. これよりセルトり細胞の細胞膜および細胞質の複合糖質は, 精巣索形成やセルトり細胞自身の機能的な分化に重要な役割を果たしていることが推測された.