Journal of Veterinary Medical Science
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57 巻, 4 号
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  • 保田 昌宏, 田浦 保穂, 宇根 智, 中市 統三, 中間 實徳
    1995 年 57 巻 4 号 p. 591-594
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    膵臓全摘出により実験的に糖尿病状態を作製した犬に, 直接紫外線照射のみを行った胎子膵臓を, 大綱内ポーチあるいは脾臓実質的に免疫抑制剤を使用せずに移植した. 紫外線照射により, 膵島リンパ球混合培養でリンパ球の幼若化反応は53.8±4.7%(平均±標準誤差)に低下した. また移植により膵臓全摘出犬の生存日数は著明に延長し, 有意な血糖値の低下, インスリン要求量および体重の減少率の低下が認められた. 1例では300日以上生存し, 体重は膵臓全摘出前値まで回復した. これらの結果から紫外線照射胎子膵の移植により糖尿病状態を改善させることが可能で, 臨床的に応用できる可能性が示唆された.
  • 近棟 稔哉, 片本 宏, 大橋 文人, 島田 保昭
    1995 年 57 巻 4 号 p. 595-598
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    10頭の肥満犬および16頭の対照犬の血清脂質ならびに血清リポ蛋白質濃度について検討した. 肥満犬の血清トリグリセライド(TG)濃度は対照群のそれに比べ有意に高値を示した. また, 肥満犬ではβリポ蛋白質のTGおよびリン脂質(PL)濃度とpre-βリポ蛋白質のPL濃度が有意に高値を示したが, α1リポ蛋白質のPL濃度は有意に低値を示した. さらに肥満犬のβならびにpre-βリポ蛋白質の血清総コレステロール濃度は高い傾向にあり, α1リポ蛋白質のそれは低い傾向にあった. このようなりポ蛋白質の異常はヒトの糖尿病や犬の急性膵炎にみられる変化と類似していた.
  • 荒木 誠一, 鈴木 護, 藤本 昌俊, 木村 誠
    1995 年 57 巻 4 号 p. 599-602
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ビタミンB2 6.25~100mg/kg を大腸菌接種1日前にマウスに筋注すると, 用量依存的な致死抑制効果が認められた. また, 緑膿菌, 肺炎桿菌, 黄色ブドウ球菌及びアクチノバシルス菌接種に対しても効果を発揮した. 末梢血白血球数の増加, 特に好中球及びマクロファージ数の増加が認められ, ざらにマクロファージの貧食能の亢進が認められた.
  • Mohamed Amro, 松本 安喜, 古澤 修一, 吉原 一浩, 松本 芳嗣, 小野寺 節, 廣田 好和
    1995 年 57 巻 4 号 p. 603-610
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌクローン化 IL-8 cDNA (pcIL-8 SRα14)をトランスフェクトした Cos 7細胞の培養上清におけるイヌの末梢血単核細胞(MNC)と多形核細胞(PMN)に対する細胞遊走活性を評価した. 被検培養上清は, pcIL-8 SRα14をトランスフェクトした Cos 7細胞 (Cos 7 /cIL-8)の培養66時間後に回収した. MNCやPMNに対する培養上清中の遊走活性は Boyden chamber変法を用い, ミリポア膜フィルター中の細胞移動距離として測定した. ペルオキシダーゼ染色においては, サイトスピンにより作製した塗沫標本のMNCのみならず, フィルター中を移動したMNCも効果的に染色された. 一方, フィルター中を移動したPMNのべルオキシダーゼ染色による染色性は弱かったが, サイトスピンにより作製した塗沫標本におけるPMNの染色性は良好であった. Cos 7 /cIL-8培養上清めMNCおよびPMNに対する遊走活性は, コントロールのCos 7培養上清に比して有意に高かった. また, Cos 7/cIL-8の培養上清はペルオキシダーゼ陰性で非付着性のMNC (リンパ球)に対して遊走活性を示したが, ペルオキシダーゼ陽性で付着性のMNC(単球)に対しては遊走活性を示さなかった. さらに, 好中球に対するCos 7 /cIL-8の培養上清の遊走活性は濃度依存性を示した. これらの結果から, Cos 7 /cIL-8の培養上清は, 好中球のみならず, リンパ球に対しても遊走活性を有することが示唆された.
  • 中村 郁子, 扇元 敬司, 和泉 博之
    1995 年 57 巻 4 号 p. 611-616
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Selenomonas ruminantium HD-4(S. ruminantium) を高濃度のグルコース(0.4および1.0%)の存在下で培養すると, 培地pHは著しく低下した. 40μM lasalocidによって, グルコース濃度0.05および0.4%における生育はコントロールの35.5および35.7%まで減少したが, グルコース濃度1.0%における生育は完全に阻害された. lasalocid濃度が80μMになると,グルコース濃度に関係なく生育は24時間完全に阻害された. lasalocid濃度が10μMの場合, 0.4および1.0%グルコース存在下においてpHが約6.0以下に低下すると, 生育は阻害されたが, グルコース濃度0.05%ではpHは6.4以下には低下せず, 生育およびpHに対するlasalocidの効果は認められなかった. 指数増殖期に10μM lasalocid を加えると, 緩徐な生育阻害を生じ, 外膜が内膜より分離し, やがて溶菌する異常な菌が電子顕微鏡によって確認された. これらの結果は, 高濃度のグルコースの存在によって培地pHが低下すること, pHが約6.0以下に低下するとlasalocid の S. ruminantium 生育阻害効果が増強されることを示している. 従って, lasalocid の抗菌作用が細胞外pHの低下によって増強されることが示唆された.
  • Kambarage Dominic Mukama, Bland Paul, Stokes Chris
    1995 年 57 巻 4 号 p. 617-621
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚における末梢血単核球(PBM)と腸管粘膜固有層マクロファージ(LPM)のアクセサリー細胞活性の相違について, リンパ球混合反応(MLR)及び過ヨウ素酸処理Tリンパ球幼若化反応を指標として検討した. 対照としては脾臓付着性細胞(SPAC)を用いた. PBM, LPM, SPACのいずれもアロジェニック抗原に対して有意なT細胞増殖を示した. T細胞とアクセサリー細胞比 1:1の時, SPACで最も高い反応が誘導され, PBMがそれに続いたがLPMでは低い反応であった. また細胞比 10:1の時はPBMのみが有意なアクセサリー細胞活性を示した. LPM, SPACは強い幼若化反応を誘導したが, PBMでは弱い反応を示したにすぎなかった. このような相違はこれらの細胞におけるMHCクラスU陽性細胞数や抗原発現の強さの違いが, 1つには起因しているものと考えられる.
  • 永野 麗子, 金井 克晃, 九郎丸 正道, 林 良博, 西田 隆雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 623-627
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ニワトリ胚子生殖腺の始原生殖細胞(PGCs)およびセルトリ細胞における糖鎖の性分化に伴う分布と特性の変化を, 12種類のレクチンをプローブとして用いて光顕レベルで調べた. これらのレクチン結合パターンの特性は精巣の発達に応じてPGCsとセルトリ細胞に観察された. 特に, BPAはPGCsの細胞膜と細胞質に反応した. このBPAの反応性は性未分化期のステージ29から性分化後のステージ36まで続き, ステージ37で完全に消失した. この事から, N-acetyl-D-galactosamine を含む複合糖質のダイナミックな変化が, PGCsの細胞膜と細胞質に生じることが示唆された. 性分化後のステージ36から39において, ConA, WGA, STAおよびRCA-Iの陽性反応がモルトり細胞に発現した. これよりセルトり細胞の細胞膜および細胞質の複合糖質は, 精巣索形成やセルトり細胞自身の機能的な分化に重要な役割を果たしていることが推測された.
  • 安原 寿雄, 山中 盛正, 出水田 昭弘, 平原 正, 中井 正久, 稲葉 右二
    1995 年 57 巻 4 号 p. 629-634
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    豚の下痢症例より分離されたパルボウイルス, H-45株の豚での感染性と病原性を調べるため, 初乳未摂取の2日齢, 5日齢の哺乳豚及び30日齢, 100日齢豚を用いて感染実験を行った. 105又は106 TCID<50>のウイルスを経鼻あるいは経口接種したすべての日齢の豚の直腸スワブよりウイルスが検出され, また, 鼻腔からのウイルス排出を調べた5日齢豚の鼻腔スワブからも継続的にウイルスが検出された. 一方, 各群に同居させた非接種豚の直腸スワブ及び鼻腔スワブからもウイルスが接種豚と同時期かやや遅れて検出され, ウイルスの同居感染が認められた. 同居豚を含む接種後14日まで生存した豚において, 接種ウイルスに対する中和抗体の上昇が認められた. 臨床的には2日齢, 5日齢及び30日齢の豚群で, 接種後5日までに下痢の発現が認められ, 2日齢の同居豚を含む全頭(6頭)と5日齢の5頭中1頭は脱水症状を呈して接種後2日から10日の間に死亡した. 100日齢豚では臨床症状はみられなかった. 経鼻接種した死亡豚では呼吸器及び消化器を中心に多くの臓器から接種ウイルスが分離され, 経口接種した死亡豚では小腸のみからウイルスが分離された. これらの小腸では, 肉眼的には粘膜の充血と出血が観察され, 病理組織学的には小腸上皮細胞の変性と剥離が認められた.
  • 橋本 統, 小川 健司, 九郎丸 正道, 林 良博
    1995 年 57 巻 4 号 p. 635-640
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    悪性度の異なるスナネズミ悪性黒色腫由来培養細胞系(MGM-A, MGM-S)の形態, 接着および増殖に対する細胞外マトリクス(ECM)の影響を検討した. 蛍光抗体法によりMGM-Sの細胞の表面にはフイブロネクチンが観察された. 多極性の形態を示すMGM-Aはフィブロネクチン, ラミニン, タイプIV・コラーゲンをそれぞれコートしたディシュ器面で大きく進展した. また, それらのECM成分に対するMGM-Aの接着率はラミニンに対して最も高い値を示し, MGM-Aの増殖もラミニンにより促進効果がみられた. 一方, MGM-Sに対するECMの影響は認められなかった. 以上のことより, フイブロネクチン, ラミニンに対する親和性の差が, これら2つの細胞系の悪性度に関与しているのではないかと考えられた.
  • 神田 政典, 及川 弘, 中尾 博之, 筒井 敏彦
    1995 年 57 巻 4 号 p. 641-646
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコ初期胚の体外培養下での発育状況を調べるとともに, 得られた胚による移植の可能性を検討した. 過剰排卵処置を施した供試ネコ10頭から回収した1~4細胞期胚を20%牛胎子血清を添加したTCM-199を用いて体外培養した結果, 培養72時間目までに222/248個(89.5%)が桑実胚に発育した. また, これら桑実胚170個中110個(64.7%)が培養96~168時間目までに胚盤胞に発育した. 次に, hCGで排卵を同調させたレシピエント12頭の片側子宮角に胚を1頭あたり4~12個移植した. その結果, 桑実胚(培養3日目)を移植した4頭はすべて受胎したが, 内2頭は流産した. また, 培養4~6日目の胚盤胞を移植した5頭中3頭は受胎したが, 培養7日目で胚盤胞に発育した胚を移植した3頭は不受胎であった. 以上の成績から, ネコ初期胚は体外培養によって移植可能な桑実胚へ高率に発育することが判明した. しかし, 桑実胚から胚盤胞に至る過程で発育の遅延が認められた.
  • 小峯 健一, 大田 博昭, 藤井 治人, 渡邊 義計, 鎌田 信一, 杉山 公宏
    1995 年 57 巻 4 号 p. 647-653
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    正常ニワトリ新鮮血清(NCS)で中和されたIBDウイルス(IBDV)は初生および3週齢ヒナのガラス壁付着ニワトリ脾細胞(CSA細胞)で, また移行抗体(MN-Ab)で中和されたIBDVは3週齢ヒナのCSA細胞でそれぞれ増殖した. 一方, 初生ヒナのCSA細胞は補体レセプター(CR)を, 3週齢ヒナのCSA細胞はFcレセプター(FcR)を各々保有することが確認された. しかしながら, 加熱処理NCS(56℃, 60分)でFcRをブロックした3週齢ヒナのCSA細胞ではMN-Abで中和したIBDVの感染は認められず, CSA細胞でのNCSで中和したIBDVの感染はCRを, またMN-Abで中和したIBDVの感染はFcR を各々介し起こることが示唆された. NCSで処理したIBD生ワクチン(ワクチン)および無処理ワクチンをSPF初生ヒナの頚部に皮下接種(SC)したところ, MN-Abで処理したワクチンSC群に比べ抗体のレベルは高く推移し28日齢まで確認された. また, NCS処理ワクチンSC群では野外株の攻撃を防御したが, MN-Ab処理ワクチンSC群では防御できなかった. さらにMN-Abを保有する市販初生ヒナワクチンSC群ではワクチン経口投与群およびワクチン非投与群に比べ抗体価は21日齢まで高く推移した. ウイルスの体内増殖はSPFおよび市販ヒナの各SC群の末梢血リンパ球で確認された. SPF鶏のNCS処理ワクチンおよび無処理ワクチンSC群, 市販ヒナのワクチンSC群の各々では攻撃後の病理変化, 補体活性の低下, および抗体応答は認められなかった. なおSPF鶏のMN-Ab処理ワクチンSC群およびワクチン非投与群, 市販ヒナの経口投与群およびワクチン非投与群ではこれらの変化が認められた. 以上の結果から, MN-Ab保有初生ヒナへのワクチンのSC法は強毒株の攻撃に対し, 経口投与法よりも高い防御効果を示す場合のあることが示唆された.
  • 西田 由美, 芳賀 知也子, 小田 憲司, 吐山 豊秋
    1995 年 57 巻 4 号 p. 655-658
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    昆虫発育抑制剤 lufenuron の経口投与によるネコノミに対する駆除効果を試験した. ノミ寄生歴のないネコ及びイヌに当研究所で累代飼育しているネコノミを10日ごとに寄生させ, lufenuron をネコでは15, 30, 60 mg/kg, イヌでは10, 20, 40 mg/kgを単回経口投与した. ネコでは, 15 mg/kgの投与で30日, 30 mg/kg以上の投与では40日間成虫の発現はほぼ完全に阻止された. しかし, 15 mg/kg投与における平均孵化率は, 30mg/kg以上を投与したものより常に有意に高かったことから, 確実な効果を得るには30mg/kgが必要量と考えられた. イヌでは, ネコにおけるより低用量でノミの増殖は完全に阻止された.
  • パテル オズマン・ヴァリ, 平子 誠, 高橋 透, 佐々木 伸雄, 百目鬼 郁男
    1995 年 57 巻 4 号 p. 659-663
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    2胚移植によって受胎した正常双胎妊娠牛(N牛), フリーマーチン妊娠牛(F牛)および反転性裂体妊娠牛(S牛)の妊娠全期間にわたる末梢血中プロジェステロン(P4), エストロン(E1)およびエストラジオール(E2)の消長を調べた. 血中P4濃度は, F牛が妊娠254日に双子を死産した際に急減した他は, 三者の間には相違がみられなかった. 血中E1濃度は, N牛においては好期の経過に伴い上昇し, 分娩日に最高値を示した後に急減し, F牛においてはN牛よりも低い値で推移し, 妊娠254日に突然上昇した後に急減した. また, S牛においてもN牛より低く, 変動を伴って推移した. 血中E2濃度は, 三者ともにE1より低く, かつE1濃度に平行して推移した. 血中E1, E2濃度は, 分娩後1日にN牛では両者とも20pg/ml以下の値に低下したが, F牛とS牛はE1が150kg/ml以上, E2が20pg/ml以上の値を示した. この成績は, 妊娠中の胎子数の判定同様子宮内の胞子の予後の判定においても, P4よりE1やE2の方が優れた指標となることを示唆している.
  • 石川 創, 尼崎 肇
    1995 年 57 巻 4 号 p. 665-670
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    本論文は, 異なった成長期の24例の南半球産ミンククジラ Balaenoptera acutorostrata の胎仔における歯芽発生とその生理的退行およびヒゲ板の発生を肉眼解剖学的および組織学的に観察したものである. その結果, この種の歯芽の初期発生パターンが陸生哺乳類の乳歯の発生および生理的退行と類似している事が示された. 退行中の歯芽は胎長615mm以上の個体で確認され, 退行現象は歯芽の表面全域で進行しているようであった. このことは, 陸生哺乳類の乳歯の退行が歯根部に限局されている点と異なっていた. 次いで歯芽の発生数は, 胎長135-153 mmの胎仔において下顎より上顎で数多く確認された. また, 本研究では歯芽の発生数はばらついていた. 退行中の歯芽と共にピケ板の原基が船長903mmの個体で検出され, 歯芽の退行がヒゲ板の原基の発生を誘導していることが示唆された.
  • 大田 方人, 辻 正義, 辻 尚利, 藤崎 幸蔵
    1995 年 57 巻 4 号 p. 671-675
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    北海道の褐毛和種牛の血液から分離した Babesia属原虫 (B. sp,1)の形態, 抗原およびタンパク質性状について, B. ovata(三宅株)との比較を中心に解析した. ギムザ染色後のB. sp.1感染血液塗抹標本を光学顕微鏡を用いて観察すると, B. ovataと類似した種々の形態を呈する虫体が認められた. しかし, 双梨子状虫体の長径, 短径および長幅指数は B. ovataより有意に大きかった. 酵素免疫測定法を用いて解析した結果, B. ovata抗原と β.sp.1抗原と B. ovata感染牛血清およびβsp.1抗原と B. ovata感染牛血清はそれぞれ交差反応性を有するが、いずれも同種の抗原と血清との反応よりは弱かった. また, B sp.1抗原に対して B. bonis および B. bigimina淑感染牛血清はほとんど反応しなかった. B. sp.1または B. ovata感染牛血清を用いたウエスタンブロット法によって, B. sp.1 と B. ovataとでは分子量の異なるタンパク質が抗原性を有することが明らかとなった. 二次元ポリアクリルアミド電気泳動後のタンパク質スポットパターンは, B. sp.1 と B. ovataとでは著しく異なった. 以上の成績から, B. sp.1 は B. ovataとは異なる種である可能性が示唆された.
  • 中村 成幸, 嶋崎 智章, 坂本 研一, 福所 秋雄, 井上 剛光, 小川 信雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 677-681
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    非細胞病原性(NCP)牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)感染牛精巣培養(BT)細胞に7種類のオルビウイルスを重感染させたところ, 全てのウイルスがCPEを発現するとともにBVDV非感染BT細胞に比べウイルスの増殖が100倍以上増強された. NCP ・BVDV 10株のうちEND現象陽性の7株はイバラキウイルスのCPEを発現し, 増殖を増強したが, END現象陰性の3株ではイバラキウイルスの増殖は抑制されるとともに, CPEも観察されなかった. さらに, END現象陽性BVDVを感染させたBT細胞では, BVDV非感染BT細胞に比べイバラキウイルスによるインターフェロンの産生が抑制されていた. 以上のことから, NCP・BVDVはBT細胞においてオルビウイルスの増殖を増強することが明らかとなり, この増殖増強作用は, 重感染ウイルスによるインターフェロシの産生をBVDVが抑制することによることが示唆された.
  • 佐々木 栄英, 北川 均, 藤岡 透, 鬼頭 克也, 岩崎 利郎, 坂口 雅弘, 井上 栄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 683-685
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    慢性皮膚疾患に感染した51頭の犬に対して, 34種の抗原を用いて, 皮内反応テストを実施した結果, 4例がスギ花粉抗原に陽性反応を示した. この4例は, Prausnitz-Kustnerテストが陽性で, スギ花粉に対する特異IgE抗体を持っていることが示された. さらに, スギ花粉の素抗原を鼻腔内に滴下し, 臨床観察を行ったところ3例中2例で鼻汁の漏出を認めた. 以上の結果から, これらの大はスギ花粉に対する過敏性と診断され, スギ花粉は犬のアトピー性疾患の原因の一つであることが明らかにされた.
  • 千田 廉, 片岡 睦国, 阿部 泰之, 豊澤 敬一郎
    1995 年 57 巻 4 号 p. 687-691
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    高齢化した伴侶動物の神経疾患に関するメカニズムの研究, 予防や治療の開発は動物福祉の立場からもきわあて重要な課題である. 本実験は老年にさしかかる中年期から初老期 (19ヵ月齢) ラット大脳皮質において, 物理的環境と社会的環境がどのような影響を与えるかを皮膚質表面脳波 (ECoG) を解析することにより検討した. ラット(Wistar, 雄)は7ヵ月齢より標準型ケージに2匹ずつ (標準環境, N=5), 標準ケージの約半分サイズケージに1匹ずつ (貧環境, N=5) および標準ケージの約4倍サイズケージに6匹ずつ (豊環境, N=5)を入れ, 12ヵ月間飼育した. ただし, 豊環境については40種類ある遊具の中から数種を選び, それらを毎日交換した. さらに, 8週齢の若いラット (標準環境下で飼育, N=5) と比較した. ECoGの測定は小脳上部頭蓋骨に固定した基準電極と左右前頭部, 側頭部及び後頭部間の単極導出により記録し, 環境間での周波数分布, トータルパワー及び平均周波数を比較した. 貧環境ラットは他環境ラットと比べ, 後頭領域のα波帯域 (8.1-10.0Hz) のパワーが増え, さらにトータルパワー含有率でも有意な増加が認められた. この様に居住環境の影響は貧環境ラットにおいてもっとも顕著に現れた. ECoC変化の主因は空間容積などの物理的環境要因よりも社会的環境要因の方が強い影響を与えていることが示唆された.
  • 森友 靖生, 古賀 脩, 宮本 元, 津田 知幸
    1995 年 57 巻 4 号 p. 693-696
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    無尾や偏尾などの後部脊柱に異常を伴った10例の無眼球症が熊本県下で飼育されている褐毛和種に発生し, それらを形態学的に検索した. 異常子牛は両側性または片側性に眼球を欠如していたが, 小型の眼瞼や狭小化した眼瞼裂は認められた. 眼窩内は痕跡的な眼筋や涙腺および脂肪組織の混合物で充たされており, その中に小嚢胞状, 充実性小塊状, または小斑点状の眼球痕跡(REB)が埋没して存在していた. REBは強膜, 脈絡膜および綱膜などの眼球壁を構成する要素が不規則に配列したものであり, 綱膜はしばしば異形成像を呈し, 低形成の視神経に連なっていた. これらの形態変化は眼胞や眼杯がすでに形成されたあとで, その発生過程に障害を受けたことを示唆しており, 今回観察された眼球の異常は変性性無眼球症と考えられた. 一方, 腰椎, 仙椎, 尾椎領域にみられた楔状椎, 半椎, 椎体矢状裂などの椎体の形成異常やこれら奇形椎の椎体軸を結ぶ線の蛇行は胎生初期における脊索の障害を示唆するものと考えられた. また, 胎生学的な観点から, 眼球の器官形成期と脊索形成期における奇形発生要因に対する危険期間がほほ同一時期であったものと推察された. 今回の検索で原因を推定する証拠を得ることはできなかった.
  • 木下 現, 鷲巣 誠, 本好 茂一, Breznock Eugene M.
    1995 年 57 巻 4 号 p. 697-702
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    循環血液量減少性ショック時の肝臓の酸素需給動態の変化を右心バイパス法を用いて検討した. 血液量減少性ショック時には全身の酸素供給量に占める肝酸素供給量の分配率は先人の報告通り著明に低下した. この分配率の低下原因は, 全身の酸素供給量の低下に比べて門脈血酸素供給量が著しく減少した結果であった. 門脈血酸素供給量の減少原因は門脈血酸素供給量と門脈血流量の双方が低下したことにあった. 一方, ショック時における全身の酸素供給量に占める肝動脈血酸素供給量の分配率は増加していた. ショック中の肝酸素利用率はショック前値の約2倍に増加した. この肝酸素利用率の増加はショック時の肝臓のハイポキシアに対する防御機構である可能性が示唆された. ショック状態離脱後の肝酸素供給量はショック前値にまで回復した. この原因は肝動脈血酸素供給量がショック後著明に増加した結果であった. 肝酸素利用率と肝静脈血酸素含有量との間に著明な負の相関関係が認められた. 肝静脈血酸素含有量は臨床的に測定が困難である肝酸素利用率に代わり, 肝臓の酸素需給動態の簡単かつ高精度な指標になりうると考えられた.
  • 木下 現, 鷲巣 誠, 本好 茂一, Breznock Eugene M.
    1995 年 57 巻 4 号 p. 703-708
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    循環血液量減少性ショック時の肝血流量の変化を門脈血流量を正確に測定することが出来るよう改良した右心バイパス法を用いて検討した. 安静時の肝臓の血行動態は今までの報告に類似していた. すなわち, 総肝血流量は心拍出量の34%であり, 門脈血流量および肝動脈血流量は総肝血流量のそれぞれ76および24%であった. 血液量減少性ショック時には門脈血流量の減少によって総肝血流量が著しく減少した. この門脈血流量の減少から腸間膜循環はショック中に心拍出量の分配率が低下する末梢循環に分類されることが確認された. ショック中に心拍出量中の肝動脈血流量への分配率が増加した.このことからショック中の肝動脈緩衝反応の発現が確認された. ショック中低下していた総肝血流量はショック状態離脱後の肝動脈血流量の増加によってショック前値にまで回復した. 本試験結果からショック中及びショック状態離脱後の肝血流量減少に対する代償反応として肝動脈緩衝反応の発現が証明された.
  • 横山 直明, 前田 健, 川口 寧, 小野 満, 遠矢 幸伸, 見上 彪
    1995 年 57 巻 4 号 p. 709-714
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    アラビノシルチミジン(araT)を用いて選択する常法により, 我々は日本で分離された猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)C7301株由来のチミジンキナーゼ(TK)遺伝子内の特定領域が欠損している組換えウイルスを作出した. 得られたaraT耐性の組換えウイルス, C7301dlTKはサザンブロット, PCRによるアガロースゲル電気泳動像により, TK遺伝子が欠損していることを確認した. CRFK細胞におけるC7301dlTKの増殖能は, TK 活性を持つ親株であるC7301のそれと同じであった. しかし, C7301dlTKのプラークの大きさはC7301のそれより有意に小さかった. 本報告は遺伝子組換えによる新たなFHV-1ワクチンの開発に役立つものと考えられる.
  • 天尾 弘実, 金本 東学, 小向 由美, 高橋 和明, 澤田 拓士, 斎藤 学, 杉山 公宏
    1995 年 57 巻 4 号 p. 715-719
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    シリアンハムスターから初めて分離されたネズミコリネ菌 (Corynebacterium kutscheri)の, 病原性を調べる目的で, 本菌の10, 103, 105および107を4週齢の雄シリアンハムスターの筋肉内または皮下に接種し, 10日間観察した後剖検を行った. 10または103接種では, 筋肉内および皮下接種群とも, 本菌による臨床症状, 肉眼的病変, 病理組織学的病変は認められなかった. 一方, 105接種において, 筋肉内接種群では, 病理組織学的に中等度の肉芽組織の増生が認められた. 同, 皮下接種群では接種2日目より接種部位に3~6mmの結節が認められ, その後接種6~9日目には外観からは不明瞭となり, 剖検では軽度な膿瘍が認められたにすぎなかった. 107接種では, 接種翌日より接種部位に, 筋肉内接種群では腫脹が、皮下接種群では5~12mmの結節が明瞭に認められた. その後6~9日目から次第に病変が小さくなる個体が見られたが, 剖検時では全例重度な膿瘍が観察された. ネズミコリネ菌の分離部位は, 1匹を除き病変部位に限られた. 凝集抗体は筋肉内接種および皮下接種群とも105, 107接種の個体のみから検出された. 以上のことより, 健康なシリアンハムスターにおいて, ネズミコリネ菌が創傷から皮下や筋肉内に感染した場合, 105以上の感染で膿瘍を形成するが, 病変は局所にとどまることが示唆された.
  • 吉岡 耕治, 岩村 祥吉, 加茂前 秀夫
    1995 年 57 巻 4 号 p. 721-725
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウシ早期妊娠因子(EPF)の検出のため, ウシT細胞表面抗原の一つであるCD2分子に対する単クローン抗体を用いてロゼット抑制試験を行った. 2種類の抗ウシCD2単クローン抗体(B26A4およびBAQ95A)を用いて妊娠牛および非妊娠牛のプール血清についてロゼット抑制力価(RIT)を比較した. RITはB26A4(P<0.001), BAQ95A(P<0.01)ともに妊娠血清の方が非妊娠血清に比べ有意に高い値を示した. また, RITの解離度はB26A4の方が有意に大きく, 以後の実験はB26A4クローンを用いて行った. 発情後8日の妊娠牛と非妊娠牛各7頭の血清について個体別にRITを検討したところ, 妊娠牛では非妊娠牛に比べ有意に高い値を示した(P<0.001). また妊娠牛と非妊娠牛各4頭の発情時, 排卵後24, 72および168時間の血清についてRITを算出したところ, 妊娠牛では排卵後24時間以降は6~8の値を示し, 発情時および非妊娠牛の2~3に比べ有意な上昇が認められた(P<0.001). 以上のことから, ウシEPF検出のためのロゼット抑制試験にウシCD2に対する単クローン抗体を利用することが可能であり, 妊娠例においてウシEPFは少なくとも排卵後24時間から検出されることが示された.
  • 大石 英司, 北島 崇, 扇谷 年昭, 片山 茂二, 岡部 達二
    1995 年 57 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Actinobacillus pleuropneumoniae (App)Y-1株(血清型1型), G-4株(血清型2型), E-3株(血清型5型)の培養上清濃縮液 (cell-free-antigen: CFA) とオイルアジュバントを混合し, マウスにおける防御効果について検討した. CFA免疫マウスは, ホモの血清型の攻撃に対しては高い生存率(90-100%)を示した. また, ヘテロの血清型の攻撃に対しても交差防御能を認めたが, 生存率は低かった(20-50%). このCFAに含まれる防御抗原について検討する目的で, CFA免疫マウス脾細胞を用いて単クローン抗体(MAb)を作製した. A. pleuropneumoniae RTX-toxin (Apx) I, II, III と血清型5型菌の 莢膜抗原に対するMAbが得られたが, 溶血素中和活性を示したのは Apx Iに対するMAbのみであった. これらを用いて受身感染防御試験を実施したところ, Apx I に対するMAb投与マウスにt, App 5型菌の攻撃に対し, 延命効果が認められ, また1型菌に対しても防御能が認められたが, 最終的な生存率は低値であった. Apx II, III に対するMAb投与マウスでは, 5型菌に対する防御効果が認められなかった. それに対し, 莢膜抗原に対するMAb投与マウスでは, 70%と高い生存率を示した. さらに, Apx I と莢膜抗原に対するMAbの混合投与マウスでは, App血清型5型菌の攻撃に対しては, 完全な防御を示した.
  • 松元 光春, 西中川 駿, 九郎丸 正道, 林 良博, AWAL Mohammad Abdul
    1995 年 57 巻 4 号 p. 733-736
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    絶食マウスにおける腹鼠径部第1乳腺の実質, 脂肪細胞および毛細血管の微細構造の変化を光顕および電顕を用いて検索した. 絶食に伴って乳腺の脂肪細胞は多房型が増加し, 一部腺様構造を呈し, 実質の周囲には膠原線維が増加した. 脂肪細胞の形質膜には小胞が増加し, 一方, 毛細血管内皮細胞の飲小胆の数は増加したが, 辺縁ヒダおよび微絨毛様突起の長さは変わらなかった. 以上の観察から, 飲小胞の数は脂肪細胞の動態と密接な関連のあることが示唆された.
  • 野呂 明弘, 小林 裕子
    1995 年 57 巻 4 号 p. 737-738
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    肥育末期における黒毛和種肥育牛80頭の血清を用いて血清リポ蛋白の分析をゲル濾過法により実施し, 枝肉脂肪交雑基準との関連を検討した. その結果, 枝肉の脂肪交雑基準とLDL-コレステロール濃度との関係は相関係数0.79であり, HDL-コレステロール濃度との間の相関係数は-0.47であった.
  • 福冨 豊子, 藤原 三男, 實方 剛, 明石 博臣
    1995 年 57 巻 4 号 p. 739-741
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    散発的に流行した子牛下痢症35例から, A群ウシロタウイルス4株(OB94-1~OB94-4)を分離した. 交差中和試験とPCR法により, OB94-1・2はG6P5型, OB94-3はG10P5型に型別された. これに対し, OB94-4は, Lincoln株(G6P1)と片面交差, KK 3株(G10P11)とは弱いが両面交差を示し, PCR法によりG6P11型と判明した. このことからOB94-4は, 他のG6型ウシロタウイルスとは異なる抗原性状を示す新しいG6型であることが明らかとなった.
  • 樋口 正, 吉田 文男
    1995 年 57 巻 4 号 p. 743-746
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    正常成熟ラット卵巣中の中性プロテイナーゼを, セファデックスG-75によるゲルろ過によって部分純化を行った. 本酵素は, 分子量約25,000と推定され, 種々阻害剤による検討の結果, キモトリプシン様酵素であることが判明した. Compound 48/80をラットに投与した場合, 本プロティナーゼ活性は, 殆ど完全に消失するので, 本酵素活性はマストセル由来であることが示唆された.
  • 大石 明広, 坂本 紘, 清水 亮佑
    1995 年 57 巻 4 号 p. 747-749
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    124例のイヌの貧血症例について, in vivo bioassay により血漿エリスロポエチン(EPO)値を測定した. 腎機能正常な貧血大81例では, 血漿EPO値とヘモグロビン濃度との間には高い負の相関性が認められた. 一方, 腎不全を有する貧血犬43例では血漿EPO値は明らかに低下していた. 中でも, 血漿EPO値が検出不能であった17例のイヌはいずれも予後不良で死の転帰をとっていた. さらに, 血漿EPOが測定可能であった残り26例のイヌについては, 血漿EPO濃度比率が血中尿素態窒素および血清クレアチニンと有意な負の相関性を有することが示された.
  • 岡野 昇三, 多川 政弘, 浦川 紀元
    1995 年 57 巻 4 号 p. 751-753
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    新しく開発された血小板活性化因子(PAF)拮抗薬TCV-309のエンドトキシンショック時の肺wet/dry比および肺表面活性に対する効果を中心にPAF拮抗薬CV-3988と比較検討した. TCV-309( 1 mg/kg)またはCV-3988 (10 mg/kg)投与は, エンドトキシン(3mg/kg)投与による肺wed/dry比の上昇を有意(P<0.01)に低下させ, またエンドトキシン投与により低下した肺表面活性を上昇させた. さらにTCV-309またはVC-3988投与は, エンドトキシンショックによる組織障害を軽減した. 以上のことよりTCV-309は, CV-3988と同様にエンドトキシンショック時の肺障害を抑制することが示唆された.
  • 松本 清司, 二村 芳弘
    1995 年 57 巻 4 号 p. 755-756
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    雄CBA/Nマウスの血液および骨髄細胞の特徴を調べる目的で3~26週齢時に血液形態学的検査および骨髄検査を行い, 次の結果を得た. 1) CBA/Nマウスの末梢血では他の正常マウスに比べて週齢に伴う白血球数の低下(1,700/μl, 26週齢)が認められた. 2)骨髄では総細胞数が9週齢で高値(13.8×106/大腿骨)を示した後, 26週齢に3週齢の値まで低下した. 細胞分類では3週齢でG/E(穎粒球系/赤芽球系)比の高値(1・22)がみられた.
  • 淺輪 珠恵, 小林 秀樹, 三谷 賢治, 伊東 伸宣, 両角 徹雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 757-759
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1992~1994年に仔豚の胸膜肺炎の肺病巣から分離された A. pleuropneumoniae 67株(血清型1,2,5,7,8)の薬剤感受性試験を実施した. 供試した1 (22株)及び7型菌 (7株)は全株がCP, TPに耐性であった. 一方, 2, 5, 8型菌では全株(38株)が感受性であった. また, SM, OTC, に対する感受性も血清型で明らかな差異が認められた.
  • 玄間 剛, 宮下 直子, 辛 イーオン実, 沖田 賢治, 森 健, 岩附 研子, 見上 彪, 甲斐 知恵子
    1995 年 57 巻 4 号 p. 761-763
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌジステンパーウイルス(CDV)に対する迅速な抗体価測定の為に CDV Onder-stpoort株感染細胞抽出物を用いたELISA法を試みた. CDVワクチン株接種犬26頭の抗体価測定において中和試験法と高い相関が得られ, 本法の有用性が示された. 計167頭の野外発症例の血清を測定したところ, ELISA抗体価と相関しない低い中和抗体価を示す血清が17%存在し,中和抗原が異なる野外ウイルス株の存在が示唆された.
  • 岡本 芳晴, 富田 保, 南 三郎, 松橋 晧, 熊澤 教眞, 谷岡 真一郎, 重政 好弘
    1995 年 57 巻 4 号 p. 765-767
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    犬の皮下に黄色ブドウ球菌を含浸させた4cmの絹糸を埋設することにより膿瘍を作製した. 排膿後, 微粉末状に粉砕したキトサンを生理食塩水に懸濁させた液 (キトサン群), アンピシリン (アンピシリン群) または生理食塩水 (対照群) により処置した (Day0). キトサン群はさらに3群 (0.01, 0.1および1.0mgキトサン群) に分けた. Day4に同様の処置を行い, Day8に安楽死させた. 膿瘍腔の収縮率は Day0, 4および8にゾンデを用いて膿瘍腔の直径を測定することにより算出した. アンピシリン, 0.1および1.0mgキトサン群の膿瘍腔の収縮率は, Day4および8において対照群および0.01mgキトサン群に比べて有意に高かった (p<0.05). Day8において, 0.1および1.0mgキトサン群ではそれぞれ11例中6例 (55%) および10例中9例 (90%) が完全に治癒したが, アンピシリン群では10例中4例 (40%) しか治癒しなかった. 対照群および0.01mgキトサン群では全例とも治癒しなかった. 組織学的にはDay8において0.1および1.0mgキトサン群において血管に富んだ肉芽組織形成がみられた.
  • 小林 秀樹, 山本 孝史, 江口 正志, 久保 正法, 中上 智, 脇坂 真司, 貝塚 政元, 石井 泰雄
    1995 年 57 巻 4 号 p. 769-771
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    培養細胞を汚染するマイコプラズマを迅速簡便に検出するため, ED-PCRを応用した. プライマーはマイコプラズマ属の16SrRNA及び16S-23SrRNAのスペーサー領域の中から選定した. 本法は現在報告されている細胞汚染マイコプラズマ20菌種のうち Acholeplasma axanthum を除く全てが検出可能であった. さらに培養細胞液62検体を供試し, 本法の有用性を培養法, 電顕観察法と比較したところ, マイコプラズマ検出率は培養法と一致した.
  • 勝田 賢, 佐藤 静子, 今井 誠, 白幡 敏一, 後藤 仁
    1995 年 57 巻 4 号 p. 773-775
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1990年-1994年に採取した3,120例の屠殺豚血清について, 各種A型インフルエンザウイルスに対するHI抗体の保有状況を調査した. 豚型のH1N1ウイルス株に対するHI 抗体保有率は観察期間を通じて1.5-9.2%と低率であり, 特に1991年11月から1993年4月までの18ヶ月間は1例の陽性豚も検出されなかった. 人香港型のH3N2ウイルスに対する抗体保有率は, 抗原として用いたウイルス株によって異なり, 0-26.3%であった.
  • 竹原 一明, 西尾 喬子, 林 義規, 神田 純子, 佐々木 誠, 阿部 則夫, 平泉 美栄子, 斎藤 俊逸, 山田 隆弘, 播谷 亮, 吉 ...
    1995 年 57 巻 4 号 p. 777-779
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    青森県下のマスコビーダック育種一生産農場において, 1994年春に孵化したひなが2週齢以内に一部脚弱を示した以外ほとんど症状を示すことなく100%近く死亡した. 血清学的お上びウイルス学的試験により, ガチョウパルボウイルス感染症と同定された. しかし, 病理学的試験では, これまでいわれているガチョウパルボウイルス感染症に特徴的な病変(肝炎および肝細胞内の核内封入体)は認められなかった.
  • 甲斐 一成, 赤木 由香, 相馬 武人, 野村 耕二, 鹿江 雅光
    1995 年 57 巻 4 号 p. 781-783
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    FECV-79-1683株102PFUをSPF猫に経口的に接種したところ, 繰り返し接種したにもかかわらず, ウイルスに対する抗体の産生は見られなかった. 続いて105PFUを接種すると, 5~160×103(平均で3×104), 又は103PFUを接種すると, 2.5~20×103(平均で6×103)のIPA力価を示し, 長期間, 以上の範囲内で変動する免疫反応が観察された. また, 経口感染では最低103PFUのウイルス量が感染成立に必要であることが明らかになった. 別のSPF猫を用いて感染後のウイルス増殖を血漿で調べたところ, 105PFU接種の場合, 感染後2日目, 4日目でウイルス血症が観察されたが, 103PFU接種の場合はウイルス血症は観察されなかった. これらの結果, 局所感染は低レベルの抗体を産生し, 全身感染は高レベルの抗体を産生することが示唆された.
  • 宮本 徹, 萩尾 光美, Mwanza Timothy, 小林 俊明, 奥村 正裕, 藤永 徹
    1995 年 57 巻 4 号 p. 785-788
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    超音波ドプラ法により, イヌの腎動脈血流の定量的な評価が可能であるか否かな検討した. まず, 腎動脈抽出のアプローチおよびドプラ法による血流検出について検討した. 次に, 雑種犬を用いて本法による計測値と電磁流量計による実測値とを比較検討した. その結果, パルスドプラ法による計測値は, 電磁流量計による実測値より過大評価する傾向があるものの, 両者には良好な相関(r=0.879; p<0.01)が得られた.
  • 上野 俊治, 諏佐 信行, 古川 義宣
    1995 年 57 巻 4 号 p. 789-791
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ブチルスズ化合物投与マウスの肝臓におけるスズ化合物の分析力法を検討した. スズ化合物は肝臓ホモジネートから酢酸エチルで抽出し, 有機溶媒による分別抽出とカラムクロマトグラフィーで精製後, 薄層クロマトグラフイーで同定した. さらに薄層上のスズ化合物を酸処理によって抽出し, スズ量を原子吸光法で測定した. 本方法は生体内におけるブチルスズ化合物の代謝過程を観察する目的に十分に適用できることが示唆された.
  • 工藤 博史, 吉沢 重克, 廣池 忠夫, 広瀬 修
    1995 年 57 巻 4 号 p. 793-795
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1975年~1992年に千葉県内の240農家から採取した1,240例の保存血清について, 脳心筋炎ウイルスに対する中和抗体を測定した. 各年の抗体陽性率は16.7%~56.3%であり, 1975年にはすでに23.3%(7/30頭)が抗体陽性であった. 1985年以降は県内の地域別抗体陽性率に差はなかった. 以上の結果から, 国内の豚は1975年以前から脳心筋炎ウイルスに感染しており, 千葉県内の豚にはこのウイルスが広く浸潤していることがわかった.
  • 山口 良二, アモス Jマトベロ, 萩尾 光美, 立山 晉
    1995 年 57 巻 4 号 p. 797-799
    発行日: 1995/08/15
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    前後肢を主とした皮下浮腫を呈する9ヶ月齢, 雄, 黒毛和種子牛を剖検した. 直腸, 結膜, 第4胃粘膜, 大綱の浮腫と約20lの腹水が認められ, リンパ節は内腸骨と肝にのみ小さなものが検出された. 組織学的には過剰な小柱形成と細網細胞の増生を示す異形成, 輸出・入リンパ管拡張が観察された. これらのことによりリンパ節の異形成及び無形成に伴うリンパ流の障害によって浮腫を生じたと考えられた.
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