抄録
正常ニワトリ新鮮血清(NCS)で中和されたIBDウイルス(IBDV)は初生および3週齢ヒナのガラス壁付着ニワトリ脾細胞(CSA細胞)で, また移行抗体(MN-Ab)で中和されたIBDVは3週齢ヒナのCSA細胞でそれぞれ増殖した. 一方, 初生ヒナのCSA細胞は補体レセプター(CR)を, 3週齢ヒナのCSA細胞はFcレセプター(FcR)を各々保有することが確認された. しかしながら, 加熱処理NCS(56℃, 60分)でFcRをブロックした3週齢ヒナのCSA細胞ではMN-Abで中和したIBDVの感染は認められず, CSA細胞でのNCSで中和したIBDVの感染はCRを, またMN-Abで中和したIBDVの感染はFcR を各々介し起こることが示唆された. NCSで処理したIBD生ワクチン(ワクチン)および無処理ワクチンをSPF初生ヒナの頚部に皮下接種(SC)したところ, MN-Abで処理したワクチンSC群に比べ抗体のレベルは高く推移し28日齢まで確認された. また, NCS処理ワクチンSC群では野外株の攻撃を防御したが, MN-Ab処理ワクチンSC群では防御できなかった. さらにMN-Abを保有する市販初生ヒナワクチンSC群ではワクチン経口投与群およびワクチン非投与群に比べ抗体価は21日齢まで高く推移した. ウイルスの体内増殖はSPFおよび市販ヒナの各SC群の末梢血リンパ球で確認された. SPF鶏のNCS処理ワクチンおよび無処理ワクチンSC群, 市販ヒナのワクチンSC群の各々では攻撃後の病理変化, 補体活性の低下, および抗体応答は認められなかった. なおSPF鶏のMN-Ab処理ワクチンSC群およびワクチン非投与群, 市販ヒナの経口投与群およびワクチン非投与群ではこれらの変化が認められた. 以上の結果から, MN-Ab保有初生ヒナへのワクチンのSC法は強毒株の攻撃に対し, 経口投与法よりも高い防御効果を示す場合のあることが示唆された.