Journal of Veterinary Medical Science
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猫のビタミンD中毒症 : 自然多発例および実験的研究
森田 剛仁粟倉 毅島田 章則梅村 孝司長井 武雄春名 章弘
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1995 年 57 巻 5 号 p. 831-837

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抄録
全身性石灰沈着自然発生例の猫21例のうち5例について病理学的に検索した. 年齢は1歳から9歳であった. 血液および血清生化学的分析の結果, カルシウム, リン, 血液尿素窒素お上びクレアチニンの値が高かった. X線検査では全身の骨密度が上昇していた. 組織学的に, 肺, 気管, 腎, 心臓, 大動脈, 消化管, 脈絡叢, 骨など, ほほ全身の臓器の血管壁に石灰が著明に沈着していた. 肺, 腎および胃の石灰沈着病巣は核酸結晶の沈着を伴っていた. 血清生化学的に, 25-ヒドロキシコレカルシフェロール (ビタミンD) の高度上昇を認めた. 罹患猫は若齢より多量のビタミンD (100g中 6,370単位)を含む飼料を摂取していたことが判明し, その量は対照飼料(100g中 680単位)の10倍であった. ビタミンD中毒実験の病態は自然例のそれに類似していた. さらに, 自然例および実験例の肺および腎におけるカルシウム, リンおよび亜鉛の組織含有量が著明に上昇していた. 以上より, ビタミンD過剰飼料の摂取が猫の全身性石灰沈着症の多発に関与していることが示唆された.
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