Journal of Veterinary Medical Science
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ラットアレルギー性喘息モデルに対するM-711の効果
七戸 和博清水 眞澄黒川 和雄
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1996 年 58 巻 1 号 p. 55-59

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抄録

犬の慢性気管支炎および心臓性喘息は咳嗽が主徴で臨床的に発生頻度が高い疾患である. その咳嗽を誘発する重要な要因の一つとして, 化学物質の抗原性によるアレルギー反応が知られている. ヒ卜のアレルギーの臨床では漢方製剤が以前から使用されているが, 獣医臨床では試みが少ない. 本研究は, M-711(漢方製剤, 木防己湯)の犬の慢性気管支炎および心臓性喘息に対する有効作用を実験的に解明するために, アレルギー性喘息モデルラットを用いて検討したものである. M-711乾燥エキスとその構成成分であるボウイ, ニンジン, ケイヒ, セッコウ単独の効果についてメチルエフェドリンを対照として比較した. 被験薬物を前投与したラットに, 卵白アルブミン・抗卵白アルブミンウサギ血精の抗原抗体反応による喘息を惹起し, 血圧および呼吸機能の経過を観察した. M-711は, 乾燥エキスとして20mg/kg以上で, メチルエフェドリンと同様喘息症状の改善がみられた. M-711を構成する生薬の単独投与では著明な効果は認められなかった. 以上の成績から, M-711はアレルギー性喘息時の呼吸因難を改善し, その作用は構成薬物全体の相互作用によるものと思われた. 一般に漢方製剤を用いる場合の長所として有害作用が少ないといわれていることから, M-711は臨床的に犬の慢性気管支炎および心臓性喘息の治療に有効であるものと考えられる.

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