抄録
馬の長距離輸送後にはしばしば発熱および発咳などの呼吸器症状が認められる. 今回, これら輸送後に認められる輸送熱の病態を解析する目的で輸送前および輸送後の馬の血清中顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor, G-CSF)活性をマウスのG-CSF依存性細胞株(NFS-60)を用いて測定した. 2歳馬26頭に対して1,580km, 約36時間の輸送を行い, その前後における血清中G-CSF活性の測定を行った. その結果, 輸送中の最高体温が39℃未満の17頭では輸送後のG-CSF活性は輸送前のG-CSF活性と比較して有意な変化を示さなかったのに対し, 39℃以上の発熱を呈した9頭では輸送後のG-CSF活性は輸送前のG-CFS活性と比較して有意な上昇を示した. また輸送後のG-CSF活性と白血球増加の間には正の相関が観察された(r=0.75). これらの結果は, G-CSF活性の上昇によって示される病原体の感染が輸送熱の発生に深く関わっていることを示している.