Journal of Veterinary Medical Science
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ラジオイムノアッセイによる血清および尿中ウシβ2-ミクログロブリンの測定
椚山 巌伊藤 伸彦高垣 陽子林 創一曽根 健次後藤 広嗣斉藤 寿幸古川 義宣山口 敏朗
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1996 年 58 巻 7 号 p. 617-622

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抄録
Radioimmunoassay (RIA)により, ウシの血清および尿中β2-microglobulin (β2-M)濃度の正常範囲を把握するため, その測定手技を検討した. ウシの初乳から分離精製した蛋白質は, SDS-PAGEで分子量約11,600の単一のバンドを示した. この蛋白質と精製抗体のゲル内沈降反応を試みたところ, 一本の沈降線のみが観察された. また, アミノ酸配列は過去の報告と24位まで完全に一致し, さらにアミノ酸組成もほぼ一致した. これらのことから, 今回ウシの初乳から分離精製した蛋白質は, 高純度のウシβ2-Mであると考えられた. RIAの基礎的検討では, リン酸緩衝液(PBS)とβ2-Mをできる限り除去した尿(除去尿)をそれぞれ希釈液として用いて標準曲線を作成し, 両者の成績を比較した. PBSの標準曲線を使用した場合の同時再現性(n=10)の変動係数は1.7~4.6%であり, 除去尿を用いた場合では1.4~5.1%であった. また, 日差再現性(n=3)は7.1~11.5%(PBS), 12.3~13.5%(除去尿)であった. 添加回収試験では, PBSの標準曲線を使用した場合の回収率は160±19%と高値を示したが, 尿の標準曲線を用いた場合では98.4±7.9%と良好な値を示した. これらのことから, 除去尿を用いた方が高精度で, かつ正確に測定できることが分かった. 本システムを用いて健康なホルスタイン種ウシの尿および血清中β2-M濃度を測定し, その分布型を調べた. その結果, 尿は対数正規, 血清は正規分布することがわかった. β2-Mの平均濃度を算出すると, 尿は0.0305+0.0443-0.0210mg/l(Geometric mean±S.D., n=43), 血清では2.87±0.45mg/l(Arithmetic mean±S.D., n=26)であった. また, ウシ尿中β2-Mの日内変動を調べたところ, 一定の傾向は認められなかった.
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