抄録
チェジャック・ヒガシ症候群(CHS)黒毛和種牛および正常牛における血小板凝集反応の性格を調べた. CHS牛の血小板ではコラーゲン(Coll)凝集反応が抑制されていたが, ADP(10-20μM), トロンビン(0.5-1.0U/ml)およびホルボールエステル(3.2μM)では抑制されなかった. またCHS血小板のColl凝集(10-20μg/ml)は, 正常血小板で通常みられる形態変化を欠いていた. ADP(10μM)とColl(10μg/ml)の同時適用ではCHS血小板のColl凝集の回復がみられたが, ADPの前処置ではColl凝集を回復できなかったことから, 凝集刺激には閥値が存在すると思われた. あらかじめ10μM ADPと10μg/ml Collに暴露された正常血小板は, それ以上アラキドン酸(AA, 5mM)に反応することができなかったが, CHS血小板ではこのAA適用によって凝集反応が生じたことから, 正常牛ではAA凝集システムが最大限に活性化されているものの, CHS牛では抑制されている可能性が示唆された. さらにシクロオキシゲナーゼ阻害薬インドメタシン(1×10-5M)前処置により, 正常血小板ではColl反応性の著明な低下がみられたのに対して, CHS血小板ではインドメタシンへの感受性がなかった. このインドメタシン処置の正常血小板は, CHSのColl凝集パターンを再現した. 以上の成績から, CHS血小板におけるColl惹起凝集では, レセプター作動性の反応からAA代謝までの情報伝達経路が阻害されていることが示唆された.