抄録
自発呼吸あるいは人工呼吸下において, ラット喉頭腔にカプサイシン(CAPS)溶液を滴下し, その呼吸循環反射および反射発現機序を検討した. CAPS(100μg/ml, 20μl)の初回作用によって, 呼気時間(TE)が著明に延長し, 一時的な無呼吸(apnea)が発現した. 同時に血圧上昇および徐脈も発現した. これらの反射は, 2回目のCAPS作用で著しく抑制されたが, 両側上喉頭神経および両側反回喉頭神経の切断下でも5例中3例のラットで消失しなかった. 血圧上昇および徐脈は, 無呼吸発現のない人工呼吸下においても自発呼吸下と同様に発現した. 徐脈はアトロピンの前処置により完全に消失し, フェントラミンあるいはプロプラノロールの前処置は血圧上昇を抑制した. これらの結果から, 咽喉頭領域への侵害刺激は著明な呼吸循環反射を誘発するが, 循環反射は呼吸抑制に起因する二次的な反射効果によらないことがわかった. また, このような呼吸循環反射の発現は, 求心経路として無髄C線維および細い有髄線維が介在するとともに, 遠心経路として交感および副交感神経の同時興奮が関与することが示唆された.