Journal of Veterinary Medical Science
Online ISSN : 1347-7439
Print ISSN : 0916-7250
ISSN-L : 0916-7250
Selenomonas ruminantiumに対するlasalocidの抗菌活性に及ぼすCa濃度の影響
中村 郁子扇元 敬司和泉 博之
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 58 巻 8 号 p. 755-759

詳細
抄録
Selenomonas ruminantium HD-4の生育および構造に対するlasalocidとCa2+の相互作用を検討した. 培養開始時にlasalocidとCa2+を添加した場合, 高濃度(5~50mM)のCa2+存在下では, 12時間後の生育は10μM lasalocidによりほぼ完全に阻害されたが, 0.2mM Ca2+存在下ではわずかに阻害されたのみであった. 12時間培養後の生育は, Ca2+単独投与により濃度に応じて阻害された. Mid-exponential phaseにおける10μM lasalocidと50mM Ca2+の添加は生育を顕著に阻害した. lasalocid単独処理が弱い生育阻害を示したのに対し, Ca2+単独処理は影響を示さなかった. 50mM Ca2+とlasalocidで処理した細胞の超薄切片を観察すると, 細胞質に空隙を有し, outer membraneがinner membrane層から遊離した異常な細胞がみとめられたが, このouter membraneの変化はlasalocid単独処理細胞でも観察された. Ca2+単独処理細胞では, outer membraneの異常は観察できなかったが, ほとんどの菌の細胞質に空隙が観察された. 以上の結果から, lasalocidとCa2+は生育に相乗効果があり, それは細胞質の変化を誘発した結果であることが示唆された.
著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top