Journal of Veterinary Medical Science
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MNUR誘発ハムスター肺炎症性病変における巨核肺胞上皮細胞の超微形態学的特徴および細胞増殖活性
安原 加壽雄三森 国敏今沢 孝喜吉村 博之小野寺 博志竹川 潔高橋 道人白井 弥林 裕造
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1996 年 58 巻 9 号 p. 825-831

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抄録

MNUR誘発肺炎症性病変における巨核肺胞上皮細胞の生物学的特徴を明らかにし, さらにこの細胞が前腫瘍性病変と成りうるが否かを検討するため, 6週齢の雌性シリアンゴールデンハムスターに動物当り0.6mgのMNURを隔週1回, 計5回皮下投与し, 最終投与後1, 4, 8および12週に肺を検索した. 1週では, 間質の水腫あるいは細胞浸潤のために肺胞壁の著しく肥厚している部位においては肺胞壁に沿って再生上皮細胞がみられ, その中には巨大核を有する細胞が認められた. この細胞は電顕的に細胞質に層板状小体を有する肺胞II型細胞であり, 炎症性病変の軽減に伴い4週以降減少した. AgNOR染色において, 正常肺胞上皮細胞では核内に1.8±0.03個の黒点として認められたが, 巨大核を有する細胞では常に4個以上認められた. これらの細胞のPCNA陽性指数は1週で14.6±2.4個であったが, 4週以降は有意に減少した. また, これらの細胞における核DNA含量は正常上皮細胞(1.6-2.3C)に比べ広い範囲に亘る分布(2.1-5.5C)がみられた. これらの成績より, 巨核肺胞上皮細胞はMNUR処置により発現した突然変異細胞と考えられるが, これらの細胞が前腫瘍性病変と成り得る可能性は非常に低いものと推察された.

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