Journal of Veterinary Medical Science
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58 巻, 9 号
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  • 大塚 治城, 玄 学南, 柴田 勲, 森 正史
    1996 年 58 巻 9 号 p. 819-824
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    オーエスキー病ウイルス(PRV)糖タンパクgB, gC, gDおよびgEを単独あるいは複数で発現するウシヘルペスウイルス-1型(BHV-1)組み換え体の防御免疫効果を調べた. 組み換えBHV-1をマウスに接種し3週後にPRV強毒株で攻撃した. PRVのgC, gDおよびgEを発現するBHV-1/TF7-1を接種されたグループにおいて, 20LD50強毒PRVによる攻撃からは7匹全部が防御されたが, 100LD50による攻撃に対しては7匹中6匹が防御された. PRVgB, gC, gDを単独で発現するBHV-1組み換え体をマウスに接種した場合, それぞれ防御効果を示したがBHV/TF7-1の効果には及ばなかった. 組み換えBHV-1接種を受けたマウスの血清をWestern blot法で調べた結果, それぞれの組み換え体が発現するPRVの糖タンパクに対する抗体が単独あるいは複数で生成していることが判明した. PRVに対する中和抗体価は, PRV攻撃に対し防御効果が低いPRVgBを単独で発現する組み換え体(BHV-1/TF6-1)を接種したマウスから得た血清が最も高い価を示し, 防御効果の最も高いBHV-1/TF7-1を接種したマウス血清の中和抗体価は比較的低かった.
  • 安原 加壽雄, 三森 国敏, 今沢 孝喜, 吉村 博之, 小野寺 博志, 竹川 潔, 高橋 道人, 白井 弥, 林 裕造
    1996 年 58 巻 9 号 p. 825-831
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    MNUR誘発肺炎症性病変における巨核肺胞上皮細胞の生物学的特徴を明らかにし, さらにこの細胞が前腫瘍性病変と成りうるが否かを検討するため, 6週齢の雌性シリアンゴールデンハムスターに動物当り0.6mgのMNURを隔週1回, 計5回皮下投与し, 最終投与後1, 4, 8および12週に肺を検索した. 1週では, 間質の水腫あるいは細胞浸潤のために肺胞壁の著しく肥厚している部位においては肺胞壁に沿って再生上皮細胞がみられ, その中には巨大核を有する細胞が認められた. この細胞は電顕的に細胞質に層板状小体を有する肺胞II型細胞であり, 炎症性病変の軽減に伴い4週以降減少した. AgNOR染色において, 正常肺胞上皮細胞では核内に1.8±0.03個の黒点として認められたが, 巨大核を有する細胞では常に4個以上認められた. これらの細胞のPCNA陽性指数は1週で14.6±2.4個であったが, 4週以降は有意に減少した. また, これらの細胞における核DNA含量は正常上皮細胞(1.6-2.3C)に比べ広い範囲に亘る分布(2.1-5.5C)がみられた. これらの成績より, 巨核肺胞上皮細胞はMNUR処置により発現した突然変異細胞と考えられるが, これらの細胞が前腫瘍性病変と成り得る可能性は非常に低いものと推察された.
  • Selim Hatem Mohamed, 今井 壮一, 大和 修, 宮川 栄一, 前出 吉光
    1996 年 58 巻 9 号 p. 833-837
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    エジプト国内で飼育されていたラクダ(Dromedary camel)11頭よりその前胃内容を採取し, そこにみられた繊毛虫構成を調べた. その結果, 8属24種の繊毛虫が認められた. そのうちの1種はこれまでに報告されていないことからDasytricha kabaniiと命名された. 繊毛虫構成はすでに報告されている中国産のラクダ(Bactrian camel)のそれに類似していた.
  • 小山田 隆, 小林 弘明, 金銅 達也, 工藤 上, 吉川 博康, 吉川 尭
    1996 年 58 巻 9 号 p. 839-843
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    野生小哺乳類における日本顎口虫の幼虫寄生を知る目的で, 1993年9月-1995年11月の期間に青森県東部の浸淫地で齧歯類3種と食虫類2種からなる計313匹を検索した. 日本顎口虫の幼虫寄生はドブネズミとカワネズミの2種に認められ, 寄生率は前者が27.2%および後者が72.7%という極めて高い値であった. 寄生数はドブネズミで3-10虫(平均6.0)およびカワネズミで2-40虫(10.6)であり, 総計273虫が検出された. ドブネズネミの幼虫のすべて(18虫)とカワネズミの幼虫の大多数(216/255虫: 82.4%)は筋肉から得られ, 後者の筋肉には多数の被嚢している幼虫が観察された. 形態学的に今回のすべての幼虫は日本顎口虫第3後期幼虫(AdL3)と同定された. それらのAdL3は自然感染の冷血動物から報告されているものより大きい傾向にあり, 体長1,056-2,110μmであった. 形態的に変性や死滅を示すAdL3は観察されなかった. 以上の結果から, ドブネズミとカワネズミは日本顎口虫AdL3の寄生に対して高い感受性があり, 宿主としての好適な性質を備えていることが示唆された. また, それら動物は日本顎口虫の生活環における好都合な待機宿主であると考えられた. 本報告は日本顎口虫AdL3の自然感染を確認したドブネズミ(齧歯類)とカワネズミ(食虫類)に関する最初の記録である.
  • 佐藤 良彦, 青柳 高弘
    1996 年 58 巻 9 号 p. 845-848
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    キンカチョウの自然感染例から分離されたSalmonella Typhimurium(S.Typhimurium)の感染性を調べるため, キンカチョウを用いて接種試験を行った. 1羽当たり102CFU, 104CFUもしくは105CFUのS.Typhimuriumを, それぞれ8羽のキンカチョウのそ嚢内に接種し1週間観察した. その結果, 105CFU接種区において全羽のキンカチョウに感染が成立し, 7羽の肝臓に巣状壊死が認められた. 次に105CFUのS.Typhimuriumを8羽のキンカチョウに接種し22日間観察したところ, 19日目に1羽が死亡し, 糞便中への排菌は接種翌日から最終日まで認められ, 最大排菌量は4×103CFU/gであった. 接種22日後における肝臓, 脾臓, 腸管の保菌は死亡鳥も含め2羽のキンカチョウに認められ, 肝臓の巣状壊死は6羽に認められた. 以上の成績は, キンカチョウ由来S.Typhimuriumがキンカチョウに対し病原性と感染持続性を有することを示唆し, このことからキンカチョウにおけるS.Typhimurium感染症はヒトへの感染源として重要と考えられた.
  • 吉川 博康, 瀬尾 浩和, 小山田 隆, 小笠原 俊実, 小山田 敏文, 吉川 尭, 韋 旭斌, 王 水琴, 李 養賢
    1996 年 58 巻 9 号 p. 849-854
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    中国東北地方のシカ牧場で運動失調症を示した梅花シカ(Cervus nippon Temminck)13頭を病理組織学的に検索した. 特徴的病理所見は, 脊髄および脳幹の白質部における海綿様空胞・髄鞘欠之, 脊髄動脈の線維化および弾性板の崩壊, クモ膜における中皮細胞の肥厚性増生であった. その他の所見として, 大動脈, 腎臓, 肺の血管弾性板の形成異常および脾臓と肝臓にヘモジデリンの沈着が観察された. また, 生化学的に, 血清および肝臓の銅含有量は低値を示していた. 脊髄および脳幹の白質部における脱髄は, 髄鞘形成不全と二次的な髄鞘破壊の共存により発現していた. それら種々の病変形成には銅含有酵素活性の低下が関与し, 銅欠之が運動失調症の発現および病変形成に重要な役割をになっていると考察された.
  • 北嶋 修司, 作間 晋, 内布 洋一, 寺野 剛, 宮崎 章, 袴田 秀樹, 堀内 正公
    1996 年 58 巻 9 号 p. 855-860
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ウサギの冠状動脈における動脈硬化病変の簡便な定量的評価法として肉眼的病変面積を測定する方法を試みた. ウサギ16羽を用い0.5%コレステロール食を15週間与えた後, 15週目に9羽を実験に供した. 残りの7羽は通常食に切り替えさらに7週間飼育した(24週目). 実体顕微鏡下にて左冠状動脈回旋枝(LCX)をウサギの心臓より分離・摘出した. 摘出したLCXの長さは, 38.7±7.1mmであり, すべて左冠状動脈開口部より心尖部に達するものであった. 15週目でのLCXの病変面積は明らかではなかった(3.2±0.4%). いっぽう, 大動脈の病変面積は(50.0±7.6%)と著明な形成が認められた. 24週目では冠状動脈および大動脈ともそれぞれ32.8±9.2%, 85.9%±5.6%と病変面積の有意な増加が認められた. 本報告はウサギ冠状動脈における動脈硬化病変を血管内腔面の病変面積で検討した最初の報告である. 本方法は, 従来のウサギ心臓の連続切片による病理組織学的な検索にくらべ多数羽を用いた冠状動脈硬化病変の量的評価に実用的かつ有用な方法であると思われる.
  • 斉藤 守弘, 柴田 穣, 小林 孝之, 小林 勝, 久保 正法, 板垣 博
    1996 年 58 巻 9 号 p. 861-867
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    走査電顕(SEM)と透過電顕(TEM)を用いてシスト壁, 特に壁表面の突起villar protrusionの構造を比較観察した. 材料は牛のSarcocystis cruzi, 緬羊のS.sp.1とS.tenella, 山羊のS.hircicanisとS.capracanis, 豚のS.miescheriana, 馬のS.fayeri, ホンシュウジカのS.sp.2であった. これらのうち, 光顕的に薄いシスト壁をもつS.cruzi, S.sp.1, S.hircicanisと, 厚い壁をもつ, それ以外の種に大別できた. 薄い壁をもつ種の表面の突起はいずれも毛状であった. 厚い壁を有する種の突起には柵状のもの(S.tenella, S.capracanis, S.miescheriana)と指状のもの(S.fayeri, S.sp.2)とがあった. その他特徴的な構造として, S.fayeriの突起の表面には多数の窪みが見られ, また, S.miescheriana, S.fayeri, S.sp.2の突起の内部には微小管microtubuleが見られた. また, すべての種のシスト壁の表面には網目状に微小な窪みが配列していた.
  • 大槻 公一, 平井 伸明, 三谷 宗久, 井澗 美希, 下畠 多恵, 国井 悦子, 浦本 京也, 清武 真, 加藤 宏光, Ellis Ma ...
    1996 年 58 巻 9 号 p. 869-874
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    1989年より1991年にかけて兵庫県北部, 宮崎県, 茨城県において頭部腫脹症候群(SHS)様症状を呈していたブロイラー, 採卵鶏が認められた. TRTVの関与する可能性が考えられたので, TRTV3B株を用いるウイルス中和テストにより, これら罹患鶏の血清中にTRTV抗体の検出を試みた. その結果, 2県の症例から抗体が検出された. その後1993年から全国の主要な養鶏地帯でブロイラーを中心にSHSが多発したので, 送付された鶏血清のTRTV抗体調査を行った. その結果, SHS様症状を呈していたほとんどすべてのフロックの鶏が抗体を保有していることが明らかになった. 一方, 1972年から1988年まで採集され, 保存されていた鶏血清中にはTRTV抗体は認められなかった. これらの成績により, 国内には, 既にTRTVが広範囲に分布しており, TRTVの関与するSHSの発生していることが明らかとなった.
  • 桑村 充, 吉田 智美, 山手 丈至, 小谷 猛夫, 佐久間 貞重, 都築 政起
    1996 年 58 巻 9 号 p. 875-879
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    新たに確立した遺伝性小脳虫部欠損ラット(CVD)に見られる異形成小脳組織の生後の形成過程を組織学的および免疫組織化学的に検索した. CVDの主な病理学的変化は, 生後5日頃より見られる血管周囲の異常細胞集族であった. 生後14日前後には血管周囲細胞はその数を増し, 正常外顆粒細胞で見られるのと同様に, 多くの細胞が活発なブロモデオキシウリジンの取り込み能を示した. 血管周囲細胞および外顆粒細胞は低親和性神経成長因子受容体に対して強い免疫反応陽性を示した. 免疫組織化学所見により, 異常血管周囲細胞が異所性外顆粒細胞であるこが明らかとなった. これらの血管周囲細胞は, CVDで見られる小脳の層形成の異常および細胞配列異常へと移行していった. これらの所見は, 血管周囲の外顆粒細胞集族かCVDで見られる小脳皮質形成異常の病理発生にとって重要であり, CVDが外顆粒細胞と血管との異常な関係を研究するうえで有益なモデルとなることを示唆している.
  • Tuchili Lawrence M., 児玉 洋, Sharma Ravindra N., 高取 一郎, Pandey Girja S., ...
    1996 年 58 巻 9 号 p. 881-884
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    サルモネラphoE遺伝子特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により, 未受精卵および死ごもり鶏胚卵黄, また環境材料から長さ365-bpの特異的遺伝子断片を検出した. 死ごもり鶏胚黄卵45検体のうち20例(44.4%)がサルモネラDNA陽性であるのに対し, 培養による菌分離では11例(24.4%)が陽性であった. サルモネラDNAは未受精卵, 鶏糞便, 敷料, また羽毛からも検出され, 培養によるサルモネラ検出率よりも高率であった.
  • 中市 統三, 竹内 啓, 佐々木 伸雄, 設楽 信行, 高倉 公朋
    1996 年 58 巻 9 号 p. 885-891
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ラットで実験的に作製した脳腫瘍を用いて, ヒト天然型腫瘍壊死因子(nh-TNF)の坑腫瘍効果とその作用機序について検討した. 実験的脳腫瘍はウィスター系ラットにC6神経膠腫細胞を脳内に移植することにより作製した. 検討の結果, 担癌ラットの生存期間は, nh-TNF5,000Uを3回反復して脳腫瘍内に局所投与することにより有意に延長した. 肉眼的にn-TNFは正常脳組織に対して特別な反応を誘起しなかったが, それを投与した脳腫瘍では明らかな発赤が見られた. 病理組織学的にはnh-TNFを投与した脳腫瘍内には充血やフィブリンの形成が観察され, さらに発赤が著しい部位では凝固性壊死が認められた. また白血球の浸潤, それらの血管内皮細胞との接着像が観察された. 免疫組織学的検査の結果, これらの白血球は好中球とマクロファージから構成されること, また腫瘍血管上におけるintercellular adhesion molecule-1の発現増加が明らかとなった. 以上のことから, n-TNFの局所投与は脳腫瘍に対して抗腫瘍効果を有しており, その作用機序として腫瘍血管への作用が重要であると考えられた. またこの作用には, TNFの炎症性サイトカインとしての側面が大きく関与しているものと考えられた.
  • 小西 正人, 青柳 敬人, 武富 敏郎, 板倉 はつえ, 伊藤 貴子, 矢澤 慈人
    1996 年 58 巻 9 号 p. 893-896
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    一般的な過剰排卵処置による胚の作出が困難な黒毛和種経産牛8頭に対し, 超音波診断装置を用いた経膣採卵をそれぞれ12回実地した. これらの8頭には, ブタインヒビン(α鎖N1-26)の合成ペプチドを抗原として能動免疫を行い, 10~17, 21, 25, 29および33週目に経膣採卵を実施(1回/週)した. 直径2mm以上の卵胞から卵子を吸引し, 付着している卵丘細胞の形態により5つの品質に分類した. 採取した卵子のうち体外受精(IVF)に適用可能なものを, 体外成熟培養, 凍結精液によるIVFおよび7日間の体外培養を行った. その結果, 採用した卵子数, 卵丘細胞の付着形態から判定した品質およびIVF後の発育率において, 供卵牛による個体差が認められた, また, IVFを行った685個の卵子から120個の桑実胚または胚盤胞が得られた(17.5%). 得られた胚の36個を新鮮胚移植(1個/頭)した結果, 20頭が受胎した(55.6%). 以上の結果から, インヒビン能動免疫を行ったウシから経膣採卵を実施した場合, 採取した卵子数, 卵丘細胞の付着形態による品質および体外受精後の発育率には個体差が認められること, ならびに繁殖成績が不良であっても経膣採卵技術を用いることにより, 産仔の生産が可能であるということが示唆された.
  • 高橋 芳幸, 菱沼 貢, 松井 基純, 田中 穂積, 金川 弘司
    1996 年 58 巻 9 号 p. 897-902
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    タンパク質を含まない化学的組成の明らかな培地(アミノ酸, インスリンおよびポリビニールアルコールを含む修正合成卵管液; mSOFai)を用いて, 培養気相中の酸素濃度がウシ体外受精卵の発育に及ぼす影響を調べた. 媒精18時間後に卵丘細胞を除去した受精卵を2.5~20%の酸素を含む気相で104~106時間培養した結果, 桑実胚への発育率は酸素濃度が5%の場合に最も高い値を示した. また, 体外受精卵を102~104時間培養して得られた桑実胚を5あるいは20%の酸素濃度の気相で50時間培養した結果, 胚盤胞への発育率に差異は認められなかったが, 得られた胚盤胞の細胞数は5%の方が20%濃度に比べて多かった. さらに, 体外受精卵をmSOFaiを用いて5あるいは20%酸素濃度の気相で152~154時間培養し, 従来の共培養法(ウシ胎子血清を添加したTCM199を用いてウシ卵管上皮細胞とともに共培養)の発育成績と比較した結果, 5%濃度での胚盤胞への発育率は20%濃度の2倍になり, 共培養の発育率とは差異が見られなかった. また, 5%濃度で培養して得られた胚盤胞の細胞数は, 共培養で得られた値より多かった. これらの結果から, ウシ体外受精卵の発育は培養気相中の酸素濃度の影響を顕著に受け, 最適酸素濃度は5%と推察された. また, 化学的組成の明らかな培地を用いても5%酸素の気相下で体外培養すれば, 従来の共養培法に匹敵する発育成績の得られることも明らかになった.
  • 中島 崇行, 岡村 優, 小川 和重, 谷口 和之
    1996 年 58 巻 9 号 p. 903-908
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ゴールデンハムスター嗅球の短軸索細胞に局在する各種神経伝達物質, ニューロン特異的マーカーおよび一酸化窒素合成酵素(NOS)を免疫組織化学的ならびに酵素組織化学的に検索した. その結果, 主嗅球では嗅糸球層の短軸索細胞にニューロペプチドY(NPY), NOSおよびNADPH-diaphorase, 外網状層の短軸索細胞に血管作動性腸ペプチド(VIP), また, 顆粒細胞層の短軸索細胞にNPY, ソマトスタチン(SOM), protein gene product 9.5(PGP9.5), NOSおよびNADPH-diaphoraseが検出された. 一方, 副嗅球では僧帽/房飾細胞層の短軸索細胞にVIPおよびPGP9.5, 顆粒細胞層の短軸索細胞にNPY, SOM, NOSおよびNADPH-diaphoraseが検出された. 以上より, NPY, SOM, VIP, PGP9.5, NOSおよびNADPH-diaphorase陽性の短軸索細胞が主嗅球, 副嗅球のいずれにおいても認められたため, それぞれ同一の免疫活性を示す短軸索細胞は, どちらの部位に存在していようとも, 同様の機能を有していることが示唆された.
  • 志賀 敦史, 代田 欣二, 野村 靖夫
    1996 年 58 巻 9 号 p. 909-914
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    イヌ肝細胞癌8例の血洞壁細胞について, 免疫組織化学的および電顕的な検索を行った. 腫瘍の血洞内皮細胞は第VIII因子関連抗原およびピーナッツ疑集素(PNA)に陽性であったが, ハリエニシダレクチン(UEA-I)とは結合しなかった. デスミンおよびリゾチーム陽性細胞は正常イヌ肝臓と同様に, それぞれ, 腫瘍組織の血洞および血洞周囲腔に存在したが, 正常イヌ肝臓より数が少なかった. α-平滑筋アクチン陽性細胞は血洞に沿って頻繁に観察された. 電顕的に血洞内皮直下には基底膜が形成され, 血洞内皮細胞には窓が乏しかった. マクロファージも血洞内や周囲に存在し, 腫瘍の分化度に関連して増加していた. α-平滑筋アクチン陽性細胞に一致する, 様々な形態を示す筋線維芽細胞様細胞が, 血洞周囲腔に頻繁に認められた. 本研究結果はイヌ肝細胞癌の血洞壁細胞が表現型にいくつかの特徴を有することを示唆している.
  • 菊池 直哉, 平棟 孝志, 高橋 樹史, 梁川 良
    1996 年 58 巻 9 号 p. 915-917
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    レプトスピラの毒力株と無毒力株からプラスミドDNAを検出し, そのプロファイルを比較した. 供試したすべてのL.interrogansから約370 kbのプラスミドが検出された. しかし, 毒力株と無毒力株との間のプラスミドプロファイルに差は認められなかった. 非病原性レプトスピラのプラスミドは検出されなかった.
  • 永友 寛司, 清水 高正, 東山 祐啓, 矢野 安正, 黒木 啓光, 浜名 克己
    1996 年 58 巻 9 号 p. 919-920
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma bovisの関与する子ウシ肺炎が, 過去3年間集団発生している肉用子牛飼育場に導入された48頭について, 導入後のM.bovisに対する抗体応答を経時的に検索した. その結果, 無処置のAおよびB群(A群: 16頭, B群14頭)の抗体価の幾何平均値の有意な上昇は, 導入後それぞれ63日および59日に認められた. 一方, 導入後28日から31日まで抗生物質を連日投与したC群(18頭)では, 抗体価の幾何平均値の有意な上昇は導入後248日に認められた. 以上の成績から, M.bovisによる高度汚染飼育場での伝播は容易に起こることが確認され, また有効な抗生物質を適時に連続投与すれば, 子牛肺炎の発症時期を遅延できることが示唆された.
  • 能澤 教眞, 井倉 克頼, 川崎 康宏
    1996 年 58 巻 9 号 p. 921-923
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    耐熱性溶血毒(TDH)産生性腸炎ビブリオは佐陀川汽水域のイシマキガイの消化管内で1991年7月~9月の間に2.0×103/gまで増加した. 本菌は佐陀川の付着性微細藻類, 生態学的に離れた2汽水域のイシマキガイと微細藻類, 3漁港の泥土からは検出されなかった. 分離株の血清型は臨床分離株で報告されている血清型とは異なっていた. TDH産生菌は一部の河川のイシマキガイの消化管内で選択的に増殖することが確認された.
  • 猪島 康雄, 池田 靖弘, 河本 麻理子, ペコラロ マルセロ リカルド, 下島 昌幸, 下島 優香子, 稲田 剛毅, 川口 寧, 朝長 啓 ...
    1996 年 58 巻 9 号 p. 925-927
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    ネコ免疫不全ウイルス(FIV)を実験感染させたネコにおいて, 7年間にわたる中和抗体価の推移を観察した. 初めに, CRFK細胞で増殖できないFIVにも適用可能な, MYA-1細胞を用いた, 新しい中和試験の方法を確立した. 次に, この方法を用いてFIV接種後7年間にわたる中和抗体価の推移を, 経時的に観察した. 接種後7年間, 長い無症状潜伏感染の状態にあったこれらFIV感染ネコにおいて, 高い中和抗体価が維持されていることが示された.
  • 町田 登, 桐生 啓冶, 中村 孝, 立花 雅豊, 長浜 光朗, 浅山 仙八
    1996 年 58 巻 9 号 p. 929-932
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    突然死した2例の乳牛の心臓を病理学的に検索したところ, 両例に共通して以下のような所見が得られた: 1. 求心性心肥大; 2. 心筋錯綜配列と叢状線維化; 3. 斑状ないしは貫壁性の置換性心筋線維化; 4. 壁内冠状動脈における管壁の肥厚と管腔の狭小化. これらの病理所見は, 今回検索した2例のウシにみられた原発性の心疾患が, ヒトの肥大型心筋症に相当するものであることを示唆していた.
  • 宇根 有美, 多々良 成紀, 野村 靖夫, 高橋 令治, 斎藤 保二
    1996 年 58 巻 9 号 p. 933-935
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    2頭のオグロプレーリードッグ(Cynomys ludovicianus)に, 肺転移を伴う肝細胞癌と非腫瘍部の慢性活動性肝炎の同時発生と, 肝細胞の過形成が認められた. 過形成性の肝細胞は細胞質内に多数の好酸性, Orcein染色陽性の封入体を持っていた. 電子顕微鏡で, 細胞質内封入体に一致して鎖かたびらのような編み目状の構造物を観察した. これらの封入体の電顕像は, 肝癌に関連するヘパドナウイルスの封入体の形態と異なっていた. また, ヘパドナウイルス様の粒子も認められなかった.
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