抄録
ウサギの冠状動脈における動脈硬化病変の簡便な定量的評価法として肉眼的病変面積を測定する方法を試みた. ウサギ16羽を用い0.5%コレステロール食を15週間与えた後, 15週目に9羽を実験に供した. 残りの7羽は通常食に切り替えさらに7週間飼育した(24週目). 実体顕微鏡下にて左冠状動脈回旋枝(LCX)をウサギの心臓より分離・摘出した. 摘出したLCXの長さは, 38.7±7.1mmであり, すべて左冠状動脈開口部より心尖部に達するものであった. 15週目でのLCXの病変面積は明らかではなかった(3.2±0.4%). いっぽう, 大動脈の病変面積は(50.0±7.6%)と著明な形成が認められた. 24週目では冠状動脈および大動脈ともそれぞれ32.8±9.2%, 85.9%±5.6%と病変面積の有意な増加が認められた. 本報告はウサギ冠状動脈における動脈硬化病変を血管内腔面の病変面積で検討した最初の報告である. 本方法は, 従来のウサギ心臓の連続切片による病理組織学的な検索にくらべ多数羽を用いた冠状動脈硬化病変の量的評価に実用的かつ有用な方法であると思われる.