『源氏物語』は11世紀初頭に書かれた日本文学の最高傑作であるが,その作者や成立順序などに関していまだに多くの謎を秘めている.本稿では,『源氏物語』を対象として3つの可視化手法を適用し,それぞれの手法や得られる情報について解説する.1つ目は,ウェーブレット多重解像度解析を用いた解析であり,助動詞の「タ形」と「ル形」の変化から作品の語りの変化を可視化している.2つ目は,助動詞の統計解析のためのテキストマイニング法で,得られた助動詞の出現頻度を基に数量化理論Ⅲ類を用いた『源氏物語』の構成の特徴抽出を行っている.3つ目は,作品にとって重要なキーワードを用いた頻度分布のパターン解析によって,『源氏物語』の雅な世界を絵画的に可視化している.