2016 年 36 巻 142 号 p. 12-15
反応を伴う混相流の流体解析は,化学,バイオ,食品産業分野でも重要であり,得られた知見は装置設計等に大きな指針を与える.しかし流れが複雑でその大半は不透明であるため計測が困難な場合が多い.超音波計測は不透明な混相流においても高精度且つ時空間的に速度場を計測できるため,今後これら流体挙動の解明に大きな期待が寄せられる.
化学産業等で一般的に使用されているインペラ攪拌などは流れ場に局所せん断を生じさせ不均一な流れになりやすく,せん断による細胞破壊が致命的になるバイオリアクターでは問題である.その点Taylor渦流れ(Taylor Vortex Flow;)は単純な二重円筒構造で,インペラもなく局所せん断の影響が少ないためバイオリアクターにも適すると言われている.しかし,装置のコンパクト化に伴い上下固定境界端の影響が大きくなると乱流へのカオス流動と干渉し合って流れが複雑になる.ここでは超音波計測法を用いてこれら複雑な流れを把握し,解析を行った.