2018 年 38 巻 149 号 p. 25-29
モデル実験は,直接観察できない火山地下の現象を可視化するツールである.我々は,爆発的噴火の際にマグマの中で発生すると考えられている「破砕波」の実像を求め,衝撃波管を用いた破砕実験を行ってきた.気泡を含むシリコン粘弾性パテや火山岩を急減圧することによって,破砕波のイメージに合致する現象を実現した.しかし,これらの実験結果をマグマ破砕のモデリングに応用するには2つの問題があった.破砕挙動が試料と管の初期接着状態に大きく依存すること,破砕現象において本質的に重要な粘弾性特性が,流動状態にあるマグマとシリコンパテや固体岩石試料の間で大きく異なることである.そこで,発泡水あめを用いた実験をデザインした.その結果,遅延破砕という新しい現象を発見し,実際の火山噴火で破砕の速度や継続時間を決める可能性を指摘した.さらに,大型放射光施設で破砕実験を行い,試料内部で生じている変形過程の解明を目指している.