日本暖地畜産学会報
Online ISSN : 2185-1670
Print ISSN : 2185-081X
ISSN-L : 2185-081X
原著論文(一般論文)
南九州の小規模肉牛農家における採草および放牧体系下での矮性ネピアグラスの適応性
UTAMY Renny Fatmyah石井 康之井戸田 幸子原田 直人福山 喜一
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 54 巻 1 号 p. 87-98

詳細
抄録

南九州の,特に離島などにおける小規模肉牛農家では,高齢化,耕地の不足,機械化の遅れなどの問題を抱え,飼料価格の高騰などから,自給粗飼料生産に対する要望が高まっている.そこで本研究は,南九州の宮崎,熊本,鹿児島3県の離島を含む12調査地点における矮性ネピアグラスの適応性を,土壌特性,植物体の成長形質,飼料の収量と品質および越冬性に関して,2007年と2008年に調査したものである.矮性ネピアグラスの乾物収量は,2007年では0.7~13.6トン/ha,2008年では0.2~15.8トン/haの地域間差異が認められた.N肥料供給量と乾物収量との間に両年ともに有意な正の相関関係があったが,乾物収量には,土壌の肥沃度や雑草防除の良否の影響も認められた.飼料品質としてのin vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量は,両年ともにそれぞれ約56~76%,6~18%の範囲であり,CP含量は刈取り間隔との間に負の相関関係があることなどから,繁殖雌牛飼養にとっての限界値を下回る場合が認められ,矮性ネピアグラスのみの給与の場合には,施肥量を年間150 kg N/ha以上に挙げることが必要であった.したがって,矮性ネピアグラスは,適切な土壌条件の土地を選択し,最低年間100 kg N/ha以上の施肥と適切な雑草防除を行えば,離島を含む南九州において造成後2年間は,粗飼料として満足しうる収量と品質を挙げ,適応可能であることが示された.

著者関連情報
© 2011 日本暖地畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top