日本暖地畜産学会報
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54 巻, 1 号
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研究紹介
原著論文(一般論文)
  • 萩原 慎太郎, 大田 紗矢佳, 岡本 智伸, 芝田 猛, 矢用 健一, 伊藤 秀一
    2011 年 54 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    アニマルウェルフェアに配慮した肉用鶏管理法開発の基礎的知見を得ることを目的として,4週齢のブロイラー6羽と熊本種12羽を同羽数の2群に分け,オガクズ床と牧草床で単飼し,床材が生産性,行動と羽毛状態に及ぼす影響を比較した.配合飼料の採食量について,ブロイラーでは床材の影響は認められなかったが,熊本種では導入7日目のオガクズ床区で多い傾向(P=0.06)がみられた.増体量と飼料要求率ではブロイラーと熊本種とも床材間に差がなかった.床つつき行動ついてはブロイラーでは区間に差がなかったが,熊本種では7日目の牧草床区で43%とオガクズ床区より多くなった(P<0.05).羽毛状態は牧草床区のブロイラーで汚損の進行が認められたが(P<0.05),熊本種では両区で汚損はほとんどみられなかった.
    以上より,牧草床での飼育は熊本種では牧草を探査および採食することでウェルフェアレベル向上につながるが,ブロイラーではその効果が低いことが示唆された.
  • 李 潤雨, 山本 直之, 杉本 安寛, 西脇 亜也, 狩野 秀之
    2011 年 54 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    本論文は,頭数規模の拡大が進行する韓国肉用牛経営における,糞尿処理・利用の特徴と問題点を明らかにし,今後の改善方向を検討することを目的とする.韓国・忠清北道X市の肉用牛経営160戸を対象に調査票を配付するとともに,聞き取りによる実態調査を行った.飼養頭数8頭以上-75頭未満の農家について糞尿処理・利用方式の違いに着目し,類型別に考察を試みた結果,A類型(50%以上の堆肥を自家利用)は糞尿処理に要する労働費や購入粗飼料費の低さ,B類型(過半の堆肥を経営外に供与・販売)は堆肥販売による処理費用の回収等のメリットを享受している.一方で,飼料生産部門の労働負担軽減の体制作り,副資材購入の費用低減や堆肥販売促進のための対応を求められていることが明らかになった.またC類型(糞尿処理施設無し)をも含めた課題として,糞尿処理機械・施設の共同利用,共同堆肥化施設の可能性を検討していく必要があると思われる.
  • 徳永 忠昭, 下村 麻衣, 石田 孝史, 原田 宏
    2011 年 54 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    宮崎県では,1991年から和牛の産肉能力に関わる育種価評価事業が行われている.育種価評価は能力のより優れた個体を選抜する手段の1つであり,その有効活用により宮崎牛のさらなる改良が進むと考えられる.そこで本研究では,宮崎県で造成された種雄牛が,後代牛である繁殖雌牛集団の平均近交係数や超音波測定による産肉形質に対してどのように影響を与えたかについて検討を行った.北諸県郡および児湯郡における平均近交係数の年次推移について,地域間差はほとんど認められなかった.また,父牛および母方祖父牛の系統が平均近交係数に及ぼす影響度については系統による差が認められた.北諸県郡および児湯郡における産肉形質の標準化育種価予測値の推移について,地域間差はほとんど認められなかった.皮下脂肪厚を除く4形質は上昇傾向を示し,皮下脂肪厚は低下傾向を示した.
  • 徳永 忠昭, 白石 誠, 石田 孝史, 原田 宏
    2011 年 54 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    近年の黒毛和種の生時体重や育成時の発育向上に伴って,宮崎県の繁殖雌牛の登録審査月齢が従来に比べ若くなってきている.和牛に対する改良は産肉能力を中心に進められてきたが,分娩間隔についてはあまり改善されているとはいえない.そこで,繁殖雌牛の超音波診断による産肉能力および分娩間隔に着目し,遺伝的評価を行った.育種価予測には,登録審査時の超音波測定値および1~2産次の分娩間隔を用い単形質アニマルモデルにより検討を行った.
    超音波測定値による産肉形質の遺伝率は低い値であったが,育種価年次推移は年々上昇しており遺伝的改良量は高い水準で維持されていた.分娩間隔の遺伝率は極めて低い値であったが,遺伝分散の値より個体間にばらつきが認められ,遺伝的改良の余地が認められた.また分娩間隔の育種価年次推移は上昇が認められた.
    今後,安定した和牛生産を確保する上で,分娩間隔等の種牛性に関する改良が重要な課題の一つと考えられた.
  • 冨阪 吉登, AHHMED Abdulatef M, 河原 聡, 六車 三治男
    2011 年 54 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    細胞骨格タンパク質talinは,integrinとactin細胞骨格との間の重要な架橋として働いている.ある研究では,熟成した肉の保水性に関与すると報告されている.しかし,talinには2つのアイソフォーム,talin1(T1)およびtalin2(T2)があり,それぞれの生物学的役割は十分には理解されていない.また,T1とT2の肉質における特異的な役割も明確にはなっていない.本研究において,我々は,ニワトリの胸肉,腿肉,砂のう筋および心筋におけるT1とT2の発現量を調べた.また,腿肉におけるtalinの死後変化も調べた.T1のmRNA発現量は,砂のう筋で高く,胸肉で低かった(P < 0.01)が,T2の発現量は砂のう筋で低く胸肉で高かった(P < 0.01).また,砂のう筋におけるT1は腿肉や心筋よりも高かった(P < 0.01).8d4,anti-talin2または TA205抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果,anti-talin2だけが骨格筋におけるtalinを検出することができた.また,免疫組織染色法においても,8d4ではなくanti-talin2が腿肉の筋繊維の周囲にtalinが局在することを示した.さらに,anti-talin2によってラベルされた腿肉のtalinは死後の貯蔵の間,早期に消失した.これらの結果から,ニワトリ骨格筋における(T1ではなく)T2の死後分解は,鶏肉の肉質に影響する可能性があると考えられた.
  • 中村 好徳, 守田 智, 金子 真, 加藤 直樹, 林 義朗, 常石 英作, 山田 明央
    2011 年 54 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    褐毛和種去勢雄牛(3頭,8~9ヵ月齢,311±4 kg,種雄牛:第十六光重)を用いて,配合飼料無給与で暖地型牧草(バヒアグラスおよびヒエ)放牧地と寒地型牧草(イタリアンライグラス)放牧地で周年放牧育成(草地育成期間)後,イタリアンライグラス草地で放牧を続けながら自家産のトウモロコシサイレージを併給する肥育方法により飼養(草地肥育期間)し増体と肉質を調査した.放牧期間および放牧期間中の1日増体量は,草地育成期間で287日および0.40±0.13 kg/日,草地肥育期間で164日および1.42±0.35 kg/日ならびに草地育成・肥育期間で451日および0.82±0.08 kg/日であった.草地育成および草地肥育期間ともに粗飼料のみで可消化養分総量自給率は100%であった.供試牛は24.7±0.6ヵ月齢で,体重650±22 kgで屠畜され,牛枝肉格付評価はA-2(1頭)およびB-2(2頭)であった.半腱様筋(M. semitendinosus)の肉質を慣行肥育去勢雄牛(24.5±0.4ヵ月齢,体重680±54 kg)と比較すると,脂質含量が有意(P<0.05)に低くβ-カロテン含量が有意(P<0.01)に高かった.また,3週間の冷蔵保存後の肉質比較も含めて剪断力価と活性酸素吸収能力(ORAC値)に相違はなく,味覚認識装置(味覚センサー)を用いた牛肉スープの官能評価値にも大差はなかった.しかし,冷蔵5日目に比べて冷蔵3週間目では慣行肥育および草地肥育牛肉ともに剪断力価の有意(P<0.05)の低下およびORAC値の有意(P<0.05)の上昇が見られた.加えて味覚センサーによる測定項目のうち先味(酸味A,旨味)および後味(にがり系苦味,苦味/薬)の値は有意(P<0.05)に上昇し,先味(苦味雑味/薬,渋味刺激,甘味)および後味(旨味コク)の値は有意(P<0.05)に低下した.従って,草地肥育牛肉は慣行肥育牛肉と同程度の肉の硬さ,抗酸化能力ならびに味を有することが明らかになり,筋肉中のβ-カロテン含量はこれらに影響しないことが示唆された.
  • 水町 進, 新城 健, 川本 康博
    2011 年 54 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    西表島における生育特性からみた適草種の選定を目的とし,既存の基幹3草種(ギニアグラス,ジャイアントスターグラスおよびローズグラス)を含む暖地型イネ科牧草計13草種・品種の乾物生産性を比較した.個体群生長速度(CGR)は,春期および夏期では,他の草種・品種と比較してBrachiaria属2品種およびSetaria属2品種で高かったのに対して,冬期では既存の3草種で高くなる傾向を示した.旱魃傾向が認められた2年目の夏期において,ローズグラスの生育が著しく低下したことから,他の草種・品種と比較して耐旱性に劣ると考えられた.主成分分析の結果,第2主成分までの累積寄与率は85%であった.第1主成分が示す潜在的な乾物生産性の高さ,第2主成分が示す季節生産性の抑制程度から,本地域における新規導入草種としてBrachiaria属2品種およびSetaria属2品種が有望であると評価され,特にBrachiaria属2品種は,降雨量に関わらず夏期の生産性に優れていた.
  • 曹 旭敏, 長谷川 信美, 宋 仁徳, 李 国梅, 孫 軍
    2011 年 54 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    ヤクの季節放牧が植物種多様性と植生に及ぼす影響を調査した.暖季放牧地(WSGP)では62種が出現し,寒季放牧地(CSGP)の53種よりも多かった.WSGPはCSGPよりもShannon-Wiener指数,Simpson指数とPielou指数が低く,植被度と群落高は低かった(p<0.05).地上部現存量は,WSGPでは42.9 gDM/0.25 m2で,CSGPの108.7 gDM/0.25 m2よりも低かった(p<0.001).WSGPではKobresia parvaなど草高が低く放牧に強い草種,Leontopodium nanumなど匍匐性で踏圧に強い草種が優占種であったが,CSGPではElymus nutansなど高草高の草種やTaraxacum mongolicumなど優良野草が優占種であった.WSGPではStellera chamaejasmeなど草地劣化を象徴する植物種が多数出現した.
  • 鈴木 知之, 神谷 裕子, 田中 正仁, 服部 育男, 野中 最子, 佐藤 健次
    2011 年 54 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    本試験では原料の異なる焼酎粕濃縮液のウシにおける栄養学的特徴を明らかにすることを目的とした.米焼酎粕,麦焼酎粕あるいはカンショ(甘藷)焼酎粕の各濃縮液を添加した発酵TMR,あるいは濃縮液を含まない発酵TMRを調製し,3頭の反すう胃カニューレ装着ホルスタイン種乾乳牛に給与してエネルギー代謝試験を行い,栄養価を求めた.米,麦およびカンショ焼酎粕濃縮液の乾物当たりの可消化粗タンパク質含量はそれぞれ37.9,33.8および13.6%であり,可消化養分総量はそれぞれ81.9,91.7および70.1%であった.また,カンショ焼酎粕濃縮液は他に比べてカリウム含量が高い(乾物当たり6.46%)という特徴を示した.以上の結果から,焼酎粕濃縮液は焼酎の主原料の種類によってその栄養学的な特徴が異なることが明らかとなり,ウシ用の飼料として濃縮液を利用する場合,これらを考慮した飼料設計が必要であることを示した.
  • UTAMY Renny Fatmyah, 石井 康之, 井戸田 幸子, 原田 直人, 福山 喜一
    2011 年 54 巻 1 号 p. 87-98
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    南九州の,特に離島などにおける小規模肉牛農家では,高齢化,耕地の不足,機械化の遅れなどの問題を抱え,飼料価格の高騰などから,自給粗飼料生産に対する要望が高まっている.そこで本研究は,南九州の宮崎,熊本,鹿児島3県の離島を含む12調査地点における矮性ネピアグラスの適応性を,土壌特性,植物体の成長形質,飼料の収量と品質および越冬性に関して,2007年と2008年に調査したものである.矮性ネピアグラスの乾物収量は,2007年では0.7~13.6トン/ha,2008年では0.2~15.8トン/haの地域間差異が認められた.N肥料供給量と乾物収量との間に両年ともに有意な正の相関関係があったが,乾物収量には,土壌の肥沃度や雑草防除の良否の影響も認められた.飼料品質としてのin vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量は,両年ともにそれぞれ約56~76%,6~18%の範囲であり,CP含量は刈取り間隔との間に負の相関関係があることなどから,繁殖雌牛飼養にとっての限界値を下回る場合が認められ,矮性ネピアグラスのみの給与の場合には,施肥量を年間150 kg N/ha以上に挙げることが必要であった.したがって,矮性ネピアグラスは,適切な土壌条件の土地を選択し,最低年間100 kg N/ha以上の施肥と適切な雑草防除を行えば,離島を含む南九州において造成後2年間は,粗飼料として満足しうる収量と品質を挙げ,適応可能であることが示された.
  • SULTANA Mosa Sanzida, 神園 巴美, 古園 健太, 林 國興
    2011 年 54 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    焼酎粕(濃縮液)は,各種の抗酸化物質と成長促進物質を含んでおり,飼料原料として有効に利用できることが明らかにされている.しかし,貯蔵中に焼酎粕の飼料価値が低下する可能性が示されているが,その詳細は明らかでない.そこで本研究では,15日齢チャンキー系雄ブロイラーを供試し,貯蔵期間の異なる2種類の甘藷焼酎粕濃縮液(水分60%)を飼料にそれぞれ4%および16%配合してブロイラーに給与し,成長,筋肉ならびに血漿中のTBARSおよび筋肉中α-トコフェロール含量に対する影響を調べた.4℃,1年間の貯蔵によって焼酎粕のα-トコフェロール含量は減少し,アンモニア含量は増加したが,その他の成分およびpHには影響は見られなかった.動物実験の結果,増体量は新鮮焼酎粕で増加する傾向を示した.飼料要求率は新鮮焼酎粕4%区で有意に低下した.ムネ肉重量は新鮮焼酎粕で増加する傾向を示し,貯蔵による差異に有意差が認められた.血漿中TBARSは,焼酎粕給与により有意に低下し,貯蔵による差異も有意であった.筋肉中のTBARSおよびα-トコフェロール含量には,焼酎粕の違いおよび貯蔵による影響は認められなかった.骨格筋タンパク質分解の指標である血漿中のNτ-メチルヒスチジン濃度は,焼酎粕により有意に低下し,さらに,貯蔵による差異も有意であった.焼酎粕による成長促進作用は骨格筋タンパク質分解の抑制に起因すると考えられるが,この作用は貯蔵により失われる可能性が示された.以上の結果は,長期間の貯蔵により焼酎粕の成長促進作用は低下するが,抗酸化作用は維持されることを示している.
  • 神谷 充, 松崎 正敏, 服部 育男, 林 義朗, 常石 英作, 神谷 裕子, 鈴木 知之, 田中 正仁, 佐藤 健次
    2011 年 54 巻 1 号 p. 107-116
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル フリー
    哺乳期の代用乳増給がホルスタイン種去勢牛の育成および肥育成績に及ぼす影響について調べた.ホルスタイン種雄子牛6頭(3日齢)を対照区と試験区に配置し,対照区は3から41日齢まで代用乳を1日当たり400から500 g,試験区は3から55日齢まで代用乳を1日当たり600から1,200 g給与した.離乳後の給与飼料の種類および給与量設定は対照区と試験区で同様にした.その結果,哺乳期間中は試験区で代用乳摂取量が多く,人工乳摂取量が少なかった.哺乳期間中は試験区でTDNおよびCP摂取量が有意に多く(P<0.05),1日当たりの体重,体高,管囲の増加量は有意に高い値となった(P<0.05).育成および肥育期間中の飼料摂取量,1日当たりの体重,体高,管囲の増加量に影響を及ぼさなかったが,哺乳期間終了時(8週齢時),育成期間終了時(12週齢時),肥育前期終了時(10ヵ月齢時)の体高は試験区で高い傾向にあった.試験区の飼料効率は哺乳期間中で有意に高く(P<0.05),育成期間中で有意に低く(P<0.05),肥育期間中は対照区と同じであった.試験区のと畜時(20ヵ月齢時)の枝肉重量は,対照区よりも35 kg重かったが,有意差は認められず,枝肉成績にも影響はなかった.以上の結果より,哺乳期の代用乳増給はホルスタイン種雄子牛の増体を促進し,肥育前期までの体高を大きくするが,肥育成績や枝肉成績に影響を及ぼさないことが分かった.
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