2012 年 55 巻 2 号 p. 121-127
本研究は,わい性ネピアグラスにおける効率的な苗生産を行うための組織培養法の改善を図り,また,苗生産において重要な課題である順化の効率化やソマクローナル変異の誘発などの問題を軽減したものである.外植体として用いた腋芽は,分げつから無菌的に摘出して,2,4-DおよびBAPを組み合わせて添加したMS固形培地で多芽体を誘導した.その結果,多芽体は0.1 mg L-1 2,4-Dおよび2.0 mg L-1 BAP添加の培地で29%と最も高い誘導率を示した.培養培地への硫酸銅の添加は,多芽体の増殖率を向上し,50 μMの硫酸銅の添加が増殖に最も有効であった.増殖した多芽体は,0.1 mg L-1 NAAおよび2.0 mg L-1 BAP添加のMS固形培地で84%と最も高い再分化率を示し,多くの植物体が再分化した.また,再分化植物体の全ては順化することができ,土壌中で旺盛に生長した.再分化植物体および栄養苗から生長させた植物体について形態を調査したところ,組織培養による形態的な変異は認められず,両者間に統計的な有意差(5%水準)はなかった.また,フローサイトメーターによる倍数性の調査では,再分化植物体における染色体数の倍加は認められなかった.以上のことから,本研究で改良した培養法により,わい性ネピアグラスの高品質な苗生産技術を確立できたものと判断した.