2014 年 57 巻 1 号 p. 37-47
チベット高原高山放牧草地でのクチグロナキウサギ(Ochotona curzoniae)の生息密度と植生との関係を明らかにするために,巣穴開口部密度が0 または寡少から高までの変異を示す2011 年は4 プロット(I 〜IV,各50 m × 50 m),2012 年は10 プロット(1 〜10,各20 m × 20 m)を抽出し,開口部密度と植生の調査を行った.高利用開口部密度は2011 年では4 個〜305 個/2,500 m2/ 日,2012 年では5 個〜63 個/400 m2/ 日であった.両年とも植被率および草高が高いプロットにおいて開口部密度は低い値を示した.また一般化線型モデル解析により,高利用開口部密度は植被率が高く出現植物種数が多く草高が低いほど高いことが示された.種多様度に関する指標が低いと高利用開口部密度も低く,本動物種は家畜に採食され草高が低い場所から,植被率の高い所を選択している可能性が示された.