2020 年 63 巻 2 号 p. 87-92
沖縄地域のジャイアントスターグラス(GS)とトランスバーラディジットグラス(TR)の黒毛和種繁殖牛の輪換放牧地において,¹⁵N同位体窒素(¹⁵N)を用いて施肥由来窒素の利用効率を測定し,化成肥料投入の集約的放牧管理下の施肥効率について検討した.放牧牛による採食部位の乾物収量,全窒素含量ならびに¹⁵N回収率に有意な草種間差はなく,採食部位の施肥由来窒素の利用効率は,4回の輪換放牧管理でGS草地が33.8%, TR草地が31.8%となった.両草地における部位別の¹⁵N回収率から,退牧後に追肥した施肥由来窒素の5.1%が根と刈株に吸収・蓄積され,10.7%が根圏土壌中に蓄積され,32.8%が採食部位に吸収・利用されていた.両草地の植物体―根圏土壌圏内における¹⁵N回収率は48.6%となり,施肥由来窒素の51.4%が放牧地圏外に流亡・脱窒していることが示唆された.