2023 年 66 巻 1 号 p. 1-5
通常,黒毛和種繁殖雌牛の分娩は牛舎で行われている.一方,放牧地分娩は省力的ではあるものの,一般的な手法として認識されていない.そこで本研究は,黒毛和種繁殖雌牛において,放牧地分娩が牛舎分娩の代替技術となり得るかについて検証することを目的とした.黒毛和種繁殖雌牛を放牧地で分娩させた放牧区と牛舎で分娩させた牛舎区に区分し,産子の死産率および分娩後の受胎率を比較した.両区ともに妊娠期間の延長が確認されたが,分娩状況は概ね正常であった.死産率は放牧区4.8%,牛舎区7.0%であったが,両区の間に有意差は認められなかった.分娩後の受胎率は放牧区60.8%,牛舎区63.2%であったが,両区の間に有意差は認められなかった.以上の結果から,放牧区と牛舎区の間に分娩状況および繁殖成績の差は認められなかった.したがって,黒毛和種繁殖雌牛の放牧地での分娩は牛舎での分娩の代替技術となり得ることが示唆された.