2025 年 68 巻 2 号 p. 75-85
発酵処理をした完全混合飼料(発酵TMR)の利用が推進されているが,肉牛向けの場合は好気的変敗によるウシの嗜好性の低下が懸念されている.本研究では,発酵TMR開封後の好気的変敗による“においの変化”がウシの嗜好性に及ぼす影響を評価すること,においセンサー(E-nose)による飼料米,醤油粕あるいはビール粕を主原料とする発酵TMRの客観的な品質判別技術の基礎的検討を目的とした.黒毛和種育成牛を対象とし,発酵 TMRを1月(平均気温6℃)に開封した対照区と,開封13 日目の変敗区の嗜好性試験の結果,予想に反して変敗区の摂取量が対照区と比べ有意に高い値を示した.一般的な飼料品質評価による変敗の進行程度は初期段階と判定されたが,嗅覚官能評価では両区の間に明確な違いを感知した. ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)分析の結果,変敗処理による酢酸放散量の低減が嗜好性の向上に影響したと推察された.発酵TMRの試料ガスをE-noseで分析したところ,対照区と変敗区のにおいの質は判別可能であった.E-noseを活用した,簡便かつ客観的な発酵TMRの品質判別システムを構築できる可能性が示された.
日本暖地畜産学会報 68(2):75-85,2025