水資源・環境研究
Online ISSN : 1883-9398
Print ISSN : 0913-8277
ISSN-L : 0913-8277
特集論説
水融通の制度的特質に関する一考察 — 1994年の讃岐平野を事例として
篭橋 一輝
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 28 巻 1 号 p. 31-37

詳細
抄録
 本稿は、1994年に発生した異常渇水に対する適応策として、讃岐平野で実施された水融通に注目し、その内容の紹介・整理を行うとともに、P. ダスグプタの持続可能な経済発展論の枠組みに依拠しながら、水融通の制度的特質を提示する。讃岐平野の水融通は水資源の再配分論と関連するものの、各利水主体の福祉に不可逆的な損失が発生するのを回避することを強く志向していたことや、人工資本や人的資本、知識ストックを総合的に活用することによって渇水への適応が図られていた点で違いがある。ダスグプタの枠組みを援用して水融通の制度的特質を検討した結果、用水間/水系間の水融通は自然資本の代替を促進する制度変化として考えることができる一方、水系内の水融通は自然資本と他の資本資産の代替を促進する制度変化として解釈できることが明らかとなった。今後、讃岐平野の水融通が持つ制度的な普遍性と特殊性を丹念に明らかにしていくことが必要である。
著者関連情報
© 水資源・環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top